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令和2年度 市長コラム「多摩の風」

[2020年9月5日]

ID:10820

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多摩の風91 「#あちこちのすずさん」

 アニメ「この世界の片隅に」は、戦争中の庶民の何気ない暮らしを描いた映画です。主人公のすずさんは、18歳で結婚し広島から呉市に。
 戦後75年を迎えた今年の夏に、NHKや各地の新聞社が「#あちこちのすずさん」という特集を行いました。
 私の義母には10歳くらい離れた兄がいました。結婚し岩手を離れ大阪で新生活。子どもも誕生。昭和20年2月、その家庭に1枚の赤紙が。兄は出征兵士として中国・満州へ。その後、8月15日、日本は無条件降伏。戦争は終わります。しかし、待てど暮らせど兄は帰還しません。ソ連は旧満州国境を越えなだれ込み、旧満州・千島・樺太などで従軍していた約57万5千人もの日本兵を捕虜としてシベリアなどに強制抑留。10年以上にわたって極寒の地で強制労働。約5万5千人もの命が奪われ、遺骨さえ故国に戻らない人々が大勢いました。兄もその一人に。
 15年程前、遺骨が帰還したとの報が入り、義母はその後、毎年のように千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、花を手向けてきました。末っ子だった義母は兄に殊の外、可愛がられ育ったようです。
 8月23日にシベリア抑留者の追悼式が千鳥ヶ淵戦没者墓苑で行われ、初めての試みとして犠牲者の名前が3日間にわたりオンラインで読み上げられました。
 身近なすずさんの想い、伝えていきませんか。
(多摩市長 阿部裕行)

多摩の風90 「暑中お見舞い申し上げます」

 いよいよ夏本番。いかがお過ごしでしょうか。全国的に飛び火している新型コロナウイルス感染症の実態はどうなのか、専門家の先生もいろいろのようです。
 東京型、埼玉型と変異し、感染力は強いものの弱毒化したとの説もあります。一方でいつ猛毒化するのかも分からないと。何しろ未知のウイルスですから。
 GoToトラベルキャンペーンはもっと落ち着いた時期にとの声。私も同感です。ただ、若者や高齢者の団体旅行は遠慮してとのフレーズは気になります。
 残念ながら本市でも修学旅行の実施は厳しい状況です。政府として感染症対策やPCR検査などを組み合わせて万全の配慮で臨めないものか。あまりに悔しい。もっと英知を絞れないでしょうか。観光や飲食店など地域経済への支援という視点だけでなく、子どもたちの成長や夢実現という眼差(まなざ)しで考えられないかと。
 遠出が難しい状況の中でジャブジャブ池など市内の公園も大事にご利用ください。市民の命と暮らしを守るのが地方政府の仕事です。
 正しく恐れるためには、分析できる情報も必要。東京都へは感染者数の公表は人権に配慮しつつ対策をとれる内容をと要望しています。PCR検査の拡充や複合災害への備えも必須です。
 水分補給など熱中症には十分お気を付けください。くれぐれもご自愛のほどを。
(多摩市長 阿部裕行)

多摩の風89 「多摩市気候非常事態宣言」、「障がい者差別解消条例」、市議会で可決

 6月開催の多摩市議会定例会で、約18億円の新型コロナウイルス感染症対策補正予算と併せ、大変重要な二つの議案を全会一致で可決いただきました。
 一つは都内自治体では初めてとなる「多摩市気候非常事態宣言」。世界では千を超える政府機関・自治体が、国内でも昨年9月に壱岐市が宣言しています。多摩市の特徴は市と市議会が一緒に宣言したことで、地球の気候危機を市民全員と共有し、その原因であるCO2を2050年までに排出実質ゼロを目指すことと併せ、使い捨てプラスチックの削減、生物多様性の保全を盛り込んだ視点です。
 もう一つは「多摩市障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例」。検討市民委員会を立ち上げ1年にわたり議論しまとめました。長い間、差別と闘い、当たり前に暮らしていくことを願う障がい当事者の皆さんの思いが詰まった条例です。一語一語、丁寧に作り上げてきました。
 新型コロナウイルス感染症と向き合う時代だからこそ、この宣言と条例が持つ意味はさらにその重みを増していると感じています。
 何よりもかけがえのない地球のために。そしてあらゆる差別と偏見をこの世からなくすために。誰一人取り残さない社会を目指して。
 (多摩市長 阿部裕行)

多摩の風88 「ステイセーフ」の時代

 「ワンワン」ともう吠えなくていい。「ステイホーム」って言われるとそう反応したくなる自分に苦笑い。
 もう一つ。打ち勝つのではなく、「Withコロナ」。新型コロナウイルス感染症の弱点を知り、共生しながらの新しい時代です。
 緊急事態宣言が解除されても、ウイルスが消滅した訳ではありません。
 感染症対策への市の取り組みや特別定額給付金、学校再開など、分かりやすく皆さんにお伝えしようと、4月初旬にYouTube「多摩市公式チャンネル」を開設し、毎週のように動画による市長メッセージをお届けしてきました。
 このチャンネルでは、児童館職員による親子で楽しめる遊びや料理教室、介護予防体操「元気アップトレーニング」、保健師たちによる子育てや家庭で悩む親たちへのメッセージ。
 さらには国士舘大学学生による自宅でできる体操教室、「せいせき鼓桜・太鼓連」や「多摩演劇フェスティバルたまには芝居」の皆さんからのメッセージなど。盛りだくさんの動画の数々で皆さまのご視聴をお待ちしています。これからもお楽しみください。
 全世界の人々が接種できるワクチン開発、安心して服薬できる医薬品などが普及するその日までお互い気を付けて暮らしていきましょう。「ステイホーム」から「ステイセーフ」へ。
 (多摩市長 阿部裕行)

多摩の風87 小説「ペスト」に学ぶ

 アルベール・カミュの「ペスト」が今、再び読み直されているそうです。ペストの蔓延(まんえん)で多くの命を失い、都市封鎖の中で不条理と向き合う人々を描いた作品です。作中には、恋人に会いに町から脱出するため、ペストでないと証明してほしいと医師に迫るシーンがあります。翻って「新型コロナウイルス感染症」でも、発熱している・せきが続く・味覚が分からないなどの症状があってもなかなか検査してもらえないとの声があります。多摩市内でもじわじわと感染が広がっています。かかりつけの医師などの判断で、PCR検査を受けられる仕組みをつくろうと、多摩市医師会などと連携し取り組んでいます。
 一方で「ペスト」でも描かれていますが、感染者を排除したり、分断する空気を感じます。私も含め、この感染症に誰が感染してもおかしくありません。自分の近くで感染者が発生しても、どうか温かく見守ってください。感染者や感染の場となった会社や事業所を責めても、何も解決しません。また、医療従事者の方々も感染リスクと向き合い診療活動を続けています。
 小説の中では、市民の有志が保健隊をつくり、絶望的な状況の中で「誠実」や「勤労」を大事に、希望を求め闘う描写があります。私たちも、正しく怖がり相互に助け合い連帯し、闘っていきましょう。
  (多摩市長 阿部裕行)

多摩の風86 「正当にこわがること」

 物理学者であり随筆家の寺田寅彦は「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだ」と述べています。
 自然災害への警句ですが、よくよく考えてみれば寺田寅彦は1918年~1919年にかけて、政治学者のマックス・ウェーバーをはじめ世界で5千万人もの人々の命を奪った「スペインかぜ」の猛威も目撃していたはずです。
 当時の新聞(東京日日)には「感冒流行に乗じ 口蓋(マスク)の馬鹿値上」との見出しが躍り、市内の状況とともに、家庭でできるマスクの作り方、小学校閉鎖など、現代とよく似た光景が報じられています。また、内務省衛生局は「流行性感冒予防心得」として次のように説きました。
〇病人または病人らしい者、咳する者に近寄ってはならぬ
〇たくさん人の集まっているところ(芝居、活動写真、電車など)に立ち入るな
〇人の集まっている場所では必ず呼吸保護器(マスク)をかけ、それでなくば鼻・口をハンカチ・手ぬぐいなどで軽く覆いなさい
〇病に罹った場合はすぐに休むこと、などなど
 100年前の話ですが、公衆衛生のイロハはあまり変わっていないようです。翻って現代。一日も早い終息を願い、「正当にこわがること」を心掛け、まずは手洗いから。
  (多摩市長 阿部裕行)

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