多摩市条例第34号 多摩市障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例 目次 前文 第1章 総則(第1条・第2条) 第2章 基本理念及び責務(第3条-第5条) 第3章 差別の解消(第6条-第13条) 第4章 共生社会の実現に向けた基本となる施策(第14条・第15条) 第5章 雑則(第16条) 附則 全ての人には、障害の有無にかかわらず、かけがえのない個人として尊重され、自分らしく生きる権利があります。しかし、障がい者は生活する上で多くの制限を受け、長きにわたって差別を受けてきました。障がい者はその差別と闘い続け、「障害者の権利に関する条約」や「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」など、障がい者の人権を守る枠組みが整えられ、ようやく障がい者の声が受け止められる社会になってきました。 私たちが住んでいる多摩市内にも、たくさんの障がい者が暮らしています。施設や病院、親元を離れ、障害があっても地域で自らが選択した生活をする人も増えてきました。多摩市は、障がいのある人と様々な意見を交わし、共に歩み、地域で安心して生活することができるよう取組を進めてきました。少しずつまちのバリアは解消されてきたものの、今なお差別はあり、障がい者は生きづらさや困難を感じる状況に置かれています。 その生きづらさや困難は、移動、買物、遊び、住まい、就労、医療、教育、災害、意思疎通などのあらゆる場面で、障がい者を想定していない設備や条件、障がい者への偏見などの社会のバリアが原因となって生じています。人には皆 異なる人格や個性があること、違いがあることを誠実に受け止め、多摩市、市民及び事業者が協力してこのような状況を変えていかなくてはいけません。 私たちは、誰もが健やかで幸せを実感できる健幸都市の実現のためにも、障がい者への差別をなくし、障害の有無によって分け隔てられることなく、誰もが暮らしやすい共生社会を目指し、この条例を制定します。 第1章 総則 (目的) 第1条 この条例は、障害を理由とする差別の解消について基本理念を定め、多摩市(以下「市」という。)、市民及び事業者の責務を明らかにするとともに、差別の解消に関する施策を総合的に推進することにより、全ての市民 が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重しながら共生し、安心して暮らすことのできる社会(以下「共生社会」という。)の実現に寄与することを目的とする。 (定義) 第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 ⑴ 障がい者 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害(人を直接的に形容するために用いる場合にあっては、障がい)」と総称する。)があり、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。 ⑵ 差別 不当な差別的取扱いをすること及び合理的配慮をしないことをいう。 ⑶ 不当な差別的取扱い 正当な理由なく、障害を理由とした区別、排除、制限その他障がいのない者と異なる取扱いをすることにより、当該取扱いを受けた者の権利又は利益を侵害することをいう。 ⑷ 合理的配慮 障がい者が障がいのない者と同等の機会及び待遇が確保され、又は権利を同等に行使できるよう、当該障がい者の意向を尊重した上で、性別、年齢、障害の状態その他個々の状況及び具体的場面に応じて行う必要かつ適切な現状の変更又は調整をいう。ただし、人的、物理的又は経済的その他の負担が過重であるものを除く。 ⑸ 社会的障壁 障がい者が日常生活又は社会生活を営む上で妨げとなるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。 ⑹ 市民 市の区域内(以下「市内」という。)に居住する者並びに市内で働く者及び学ぶ者をいう。 ⑺ 事業者 市内において、営利活動その他の事業を行う者(市を除く。)をいう。 第2章 基本理念及び責務 (基本理念) 第3条 差別の解消は、次に掲げる事項を基本理念として推進しなければならない。 ⑴ 全ての障がい者は、差別を受けることなく、地域で自立して生活するほか、どこで誰とどのように生活するかについての選択が尊重されるとともに、社会を構成する一員として経済、文化その他のあらゆる活動に参加する機会が確保されることにより、人として尊厳ある生活が保障されること。 ⑵ 差別の多くが障がい者に対する誤解、偏見、理解の不足等から生じていることを踏まえ、差別を解消するための取組は、障害及び障がい者に対する理解を啓発する取組と一体のものとして行われること。 ⑶ 市、市民及び事業者は、障がい者一人ひとりに異なる生きづらさ及び思いがあること並びに差別は虐待及びいじめにつながるおそれがあることを理解し、当然に合理的配慮を行うよう、それぞれの責務を果たすこと。 ⑷ 差別を解消するための取組は、障がい者及び障がいのない者が多様性を相互に認め、関わり合い、協力して行うとともに、これを将来の世代にも継承すること。 (市の責務) 第4条 市は、次章及び第4章に定める施策のほか、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、差別を解消し、及び共生社会を実現するために必要な施策を障がい者基本計画等に定め、関係法令との調和を図りながら総合的かつ計画的に実施するものとする。 2 市は、差別の解消における障害に対する理解の重要性を認識し、市民及び事業者に対して第14条に定める理解の促進、啓発その他の取組を実施するとともに、障がい者に対して自己の人権が保障されていること及び合理的配慮を求めることができることについての理解を深められるよう取り組むものとする。 3 市は、第8条から第12条までに定める差別に関する相談等の体制について周知し、障がい者及びその家族その他関係者が差別に関する相談等をしやすい配慮を行うとともに、相談等を受けた場合は、障がい者一人ひとりの背景、心情等の理解に努め、それぞれの状況に応じた対応をするものとする。 4 市は、前3項に定める責務に係る施策の策定及び実施に当たっては、障がい者その他の市民及び事業者に適切な情報を提供し、障がい者その他の市民及び事業者の意見を聴き、当該施策の策定及び実施に反映するよう努めるものとする。 5 市は、第1項から第3項までに定める責務に係る施策を実施するため、予算の範囲内において、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。 (市民及び事業者の責務) 第5条 市民及び事業者は、基本理念にのっとり、障害及び障がい者に対する理解を深めるとともに、前条第1項に定める施策に協力することによって差別の解消及び共生社会の実現に寄与するよう取り組むものとする。 2 市民及び事業者は、差別又はその疑いがある事案を発見したときは、市に情報を提供するものとする。 3 事業者は、その事業を行うに当たり、障がい者に対する支援を適切に行うため、従業者に対し、障害及び障がい者に対する理解を深める取組を行うよう努めるものとする。 第3章 差別の解消 (不当な差別的取扱いの禁止) 第6条 何人も、障がい者及びその家族に対し、不当な差別的取扱いをしてはならない。 (合理的配慮の提供) 第7条 市及び事業者は、その事務又は事業を行うに当たり、次に掲げる場合 において障がい者から社会的障壁の除去を求める意思の表明(本人による意思の表明が困難な場合においては、障がい者の家族、介助者等意思疎通を支援する者が本人を補佐して行う意思の表明を含む。)があったときは、当該社会的障壁の除去の実施について合理的配慮をしなければならない。 ⑴ 不特定多数の者が利用する施設又は公共交通サービスを提供する場合 ⑵ 商品を販売し、又はサービスを提供する場合 ⑶ 不動産に係る契約を行う場合 ⑷ 労働者の採用又は労働環境に係る措置を行う場合 ⑸ 就労に係る相談又は支援を行う場合 ⑹ 医療を給付し、又はリハビリテーションを提供する場合 ⑺ 福祉サービスを提供する場合 ⑻ 教育を行う場合 ⑼ 保育を行う場合 ⑽ 療育を行う場合 ⑾ 防災に関する事業を実施する場合又は災害が発生した場合 ⑿ 文化、スポーツ又は芸術に係る活動を行う場合 ⒀ 選挙等を行う場合 ⒁ 意思疎通を図る場合又は不特定多数の者に情報を提供する場合 ⒂ 前各号に掲げるもののほか、事務又は事業が社会的障壁となって、障がい者の日常生活又は社会生活に相当な制限を与えている場合 2 市及び事業者は、合理的配慮を行うに当たり、次に掲げる事項に留意するものとする。 ⑴ 障がい者が社会的障壁の除去を求めやすい環境を整備すること。 ⑵ 障がい者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、必要な合理的配慮が一人ひとり異なることを踏まえ、障がい者の求めを適切に理解し、対応すること。 ⑶ 合理的配慮の提供に関し過重な負担が生じる場合又は直ちに合理的配慮を提供することが困難な場合は、障がい者及び市又は事業者の双方による建設的な対話を行うことにより、その代替的な措置の実施その他の障がい者の理解を得られる対応をすること。 3 市は、合理的配慮の提供について障がい者及びその家族その他関係者の意見を聴き、必要な取組について調査及び研究を行うものとする。 4 市民は、第2項各号に掲げる事項を基本として、社会的障壁の除去の実施について合理的配慮を提供するよう努めるものとする。 5 市は、市民及び事業者による合理的配慮の提供を促進するため、合理的配慮の提供を支援する施策を講ずるものとする。  (相談等) 第8条 障がい者及びその家族その他関係者は、市に対し、差別に関する相談(以下「特定相談」という。)をすることができる。 2 市は、特定相談を受けたときは、事実の確認又は調査を速やかに行うとともに、必要に応じて、次に掲げる事項を行うものとする。  ⑴ 情報の提供に関する事項  ⑵ 対象事案に関係する者の間の調整に関する事項  ⑶ 関係行政機関等の紹介に関する事項 3 特定相談の対象事案に関係する者は、正当な理由がある場合を除き、市が行う前項に定める事項に協力しなければならない。 4 市は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)第51条の14第1項に規定する指定一般相談支援事業者又は同法第51条の17第1項第1号に規定する指定特定相談支援事業者に、第2項に定める事項の全部又は一部を委託することができる。 (助言又はあっせんの申立て) 第9条 障がい者は、自己に対する差別に該当すると思われる事案(以下「差別対象事案」という。)があるときは、多摩市長(以下「市長」という。)に対し、解決するために必要な助言又はあっせんを行うよう申立てをすることができる。 2 障がい者の家族、後見人その他障がい者を現に保護する者は、当該障がい者に代わり、前項の申立てをすることができる。ただし、当該障がい者の意に反することが明らかであると認められるときは、この限りでない。 3 第1項の申立ては、その差別対象事案が次の各号のいずれかに該当するときは、することができない。  ⑴ 行政不服審査法(平成26年法律第68号)その他の法令により審査請求その他の不服申立てをすることができるとき。  ⑵ 申立ての原因となる事実のあった日(継続する行為にあっては、その行 為の終了した日)から3年を経過しているとき(3年を経過するときまで に申立てをしなかったことにつきやむを得ない理由があるときを除く。)。  ⑶ 現に犯罪の捜査の対象となっているとき。  (事実の調査) 第10条 市長は、前条第1項の申立てがあったときは、差別対象事案の事実について必要な調査を行うことができる。この場合において、調査の対象となる者は、正当な理由がある場合を除き、調査に協力しなければならない。  (助言又はあっせん) 第11条 市長は、第9条第1項の申立てがあったときは、当該申立てに係る助言又はあっせんの要否及び内容について、多摩市障がい者差別解消支援地域協議会(以下「協議会」という。)の意見を求めるものとする。 2 協議会は、前項の助言又はあっせんの要否及び内容を判断するために必要があると認めるときは、差別対象事案に関係する者に対し、その出席を求めて説明若しくは意見を聴き、又は資料の提出を求めることができる。 3 市長は、第1項の協議会の意見を尊重し、差別対象事案に関係する者に対し、助言又はあっせんを行う。  (勧告及び公表) 第12条 市長は、前条第3項の助言又はあっせんを行った場合において、差別対象事案に関係する者(第9条第1項の申立てをした者を除く。)が正当な理由なく当該助言又はあっせんに従わないときは、当該助言又はあっせんに従うよう勧告することができる。 2 市長は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由なく当該勧告に従わないときは、その旨を公表することができる。 3 市長は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ勧告を受けた者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。  (協議会) 第13条 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号)第17条第1項の規定に基づき、協議会を設置する。 2 協議会は、次に掲げる事項について協議を行う。 ⑴ 差別を解消するために必要な取組の検討及び提言に関する事項 ⑵ 第11条に定める助言又はあっせんに関する事項 ⑶ 差別を解消するために必要な施策の実施状況の確認及び見直しの提言に関する事項 ⑷ 前3号に掲げるもののほか、差別を解消するための取組を効果的かつ円滑に行うため必要な事項 3 協議会は、障がい者、福祉、医療、教育、就労その他の障がい者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事する者又は当該分野に識見を有する者その他市長が必要と認める者のうちから市長が委嘱する委員をもって組織する。 4 協議会の委員の任期は、2年とし、補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。ただし、再任を妨げない。 5 協議会の委員は、職務上知り得た秘密を漏らし、又は不当な目的に利用してはならない。その職を退いた後も同様とする。 6 前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営について必要な事項は、市長が別に定める。 第4章 共生社会の実現に向けた基本となる施策   (障害及び障がい者に対する理解の促進) 第14条 市は、共生社会の実現に向け、障害及び障がい者に対する理解を促進するため、障がい者その他の市民及び事業者の協力を得ながら、次に掲げる事項に取り組むものとする。 ⑴ 市民及び事業者が障害及び障がい者に対する理解を深められるよう、啓発その他必要な取組を行うこと。 ⑵ 障がい者に対する支援を適切に行うため、市の機関の全ての職員及び指定管理者(地方自治法(昭和22年法律第67号)第244条の2第3項の規定により市の公の施設の管理を行うものをいう。)の業務に従事する者が障害及び障がい者に対する理解を深められるよう、必要な研修及び啓発を行うこと。 ⑶ 障がい者及び障がいのない者がお互いの理解を深められるよう、幼少期からの交流の機会の拡大及び充実を図ること。 ⑷ 共に学び合い育ち合う教育の重要性を考慮し、児童及び生徒が障害及び障がい者に対する理解を深められるよう、必要な取組を実施すること。  (共生社会の実現に向けた取組) 第15条 市は、前条に定めるもののほか、共生社会の実現に向け、次に掲げる事項に取り組むものとする。 ⑴ 障害の有無にかかわらず、全ての市民が個々の状況に配慮した教育を受けられるよう必要な措置を講ずること。 ⑵ 障がい者の就労を促進するため、障がい者からの就労に関する相談を受け、必要な支援を行うこと。 ⑶ 事業者が障がい者の働きやすい環境を整えることができるよう、啓発及び情報の提供を行うこと。 ⑷ 手話、文字、点字、音声、分かりやすい表現等の障害の特性に応じた意思疎通の手段を普及し、並びに障がい者が容易に情報を取得し、及び意思疎通をすることができるよう、必要な支援を行うこと。 第5章 雑則  (委任) 第16条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。    附 則  (施行期日) 1 この条例は、令和2年7月1日から施行する。  (検討) 2 市は、この条例の施行後3年を目途として、障がい者に係る法制度の動向を勘案し、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 (非常勤特別職の職員の報酬及び費用弁償等に関する条例の一部改正) 3 非常勤特別職の職員の報酬及び費用弁償等に関する条例(昭和38年多摩市条例第19号)の一部を次のように改正する。   別表第1障害支援区分認定審査会の項の次に次のように加える。 障がい者差別 会長 日額 12,500円 解消支援地域 副会長 日額 11,800円 協議会 委員 日額 10,700円