多摩市行財政診断白書 第1部 総論編 第1章 危機にある多摩市の財政状況(3)
最終更新日:平成20年3月31日
1. 3 歳出
歳出を分析するのには、目的別と性質別という2つの観点からの見方があります。目的別というのは、その歳出経費が何のために使われたのか、その使いみちで分類するもので、議会費、総務費、民生費、衛生費、労働費、農林業費、商工費、土木費、消防費、教育費、公債費などに分類されます。予算書もこの分類にそって編集されています。性質別というのは、その支出の性質、つまりどのような内容に使われたかによって分類するもので、人件費、扶助費、公債費、物件費、維持補修費、補助費等、積立金、投資及び出資貸付金、繰出金、普通建設事業などに分類されます。
1. 目的別経費の推移
- 総務費:市役所の庁舎の管理やOA化などの経費や、交通対策、パルテノン多摩やコミュニティセンター、地域の福祉館、女性センター等に係る経費など
- 民生費:保育園や児童館、生活保護や障がい者、高齢者などの福祉に関する経費
- 衛生費:ごみやし尿の処理や健康関係に関する経費
- 土木費:都市計画や道路や橋、公園等に関する経費
- 消防費:防災・消防関係の経費
- 教育費幼稚園、学校教育、生涯教育(図書館や公民館、スポーツ振興、文化財保護など)に関する経費
- 公債費:借金の返済に要するお金


多摩市の現況は、これまで教育にお金をかけてきています。児童生徒数が10年前と比べて43%も減少していますが、施設の管理等にかかる経費等は、学校施設が減らない限りは削減できません。児童生徒数に合わせて簡単に学校数を調整できず、しかも、ニュータウン内の学校には空きがあり、既存地区の学校は不足しているという状況が発生しています。また、生涯学習関連の経費や、教育改革のもとに、新たな教育への対応が必要なことから、依然として教育費の比重は大きく、また近年は、福祉にお金の配分が急激に多くなっていることがわかります。総額が減少している中では、あれもこれも行政サービスでカバーすることはできなくなっています。限られた財源を行政として重点的にどんなことに投入すべきなのか、また、そのサービス提供の方法はどうするのか、施策の選択や手法の抜本的見直しが迫られているといえます。
2. 性質別経費の推移
どんな内容の支出に使ったかで歳出を分類したものが、性質別経費です。
- (義務的経費)人件費:職員の給与や委員等の報酬等
- (義務的経費)公債費:借金の返済に要するお金
- (義務的経費)扶助費:社会保障制度の一環として生活困窮者、身体障がい者等に対してその生活を維持するために支出される経費
- 物件費:非生産的な物財調達のための経費で、臨時職員の賃金や旅費、消耗品などの需用費、原材料費、使用料や委託費など
- 維持補修費:施設や道路などの維持管理経費
- 補助費等:補助金や交付金、一部事務組合への支出など
- 繰出金:国民健康保険や介護保険、下水道などの特別会計への補てんの支出
- 投資的経費:施設の建設や道路の新設など、長期間にわたってその効果が持続する経費

上の3つの経費を「義務的経費」といい、この経費の率が高いほど財政状況が硬直化しているといえます。歳出総額が少なくなっているのに、義務的経費が多くなっており、恵まれた公共施設の維持補修等にお金がまわらないのが、近年の多摩市の状況です。しかし、類似都市(IV―5)と比較すると、義務的経費の中の人件費と公債費の率はまだ低く、その分を物件費と補助費が多く占めているのが多摩市の傾向です。

3. 義務的経費
義務的経費が歳出総額に占める率が高いほど、財政が硬直化しており、様々な市の実情にあった施策が財政面から展開できなくなるといえます。


多摩市の義務的経費の推移をみてみると、図表24のとおり、平成12年度を例外にして(介護保険の導入に伴い、扶助費の一部が介護保険会計に移行した)、ほぼ右肩あがりの傾向を示しますが、特に人件費と扶助費の割合が高くなっていることに留意する必要があります。では、具体的に義務的経費の詳細について見てみましょう。
(1)人件費
本市の歳出に占める人件費の割合の推移は、図表25のとおりです。この人件費には、職員給与のほか、市長ほか三役、議員、各種審議会委員の報酬、嘱託職員の報酬などが含まれます。なお、臨時職員の賃金は物件費に分類されるため、人件費には含まれていません。
多摩市は、財政規模の縮小とあいまって職員の平均年齢の高年齢化により、近年、人件費の割合が上昇してきており、13年度決算では、21.2%を占めています。多摩ニュータウンの大量入居と、それに伴う全国有数の急激な人口増(昭和46年度32,068人から昭和50年度62,815人と、わずか5年で約2倍の増加)により、拡大する行政需要に応え、大量の職員を採用したことから、その職員層が、現在、高齢化しており、人件費が上昇傾向を示しています。
多摩市の職員給与については、都と同一の基準を採用しています。従来から、多摩市の場合、少ない職員数での行政運営を行ってきたため、職員一人あたりの人口は、148人で、他市平均131人に比べ職員一人あたりの人口が多く、職員数が少ないことがいえます。塵芥収集事業、保育園、幼稚園等については、他の自治体に比べ、早い時期から民間活力の導入を図ってきています。


また、13年度決算で、26市の市民一人あたりの人件費の状況を見ると、図表27のとおりです。多摩市の人件費は、市民一人あたりにすると、67,724円、うち職員給与は49,713円となります。なお、近年、市民サービスの拡充に伴い、児童館・学童クラブや図書館、公民館等の施設で、職員定数外の嘱託職員や臨時職員等を活用していますが、人件費には、嘱託職員の報酬は含まれますが、臨時職員賃金については、物件費としてカウントされているため含まれていません。しかし、恒常的な存在の臨時職員もあるため、嘱託職員や臨時職員も含め、人的なサービスに係る経費をトータルに捉えて人件費の部分を見る必要があります。

今後の少子高齢化の進展を考えると、限られた財源で市民サービスを充実したものにするためには、市民、民間、行政の役割を踏まえ、行政が直接サービスすべきものは何か、行政の守備範囲の明確化、再整理が必要になってきます。
(2)扶助費
平成13年度の扶助費の決算額は、61億6,776万3千円で、歳出総額に占める割合の推移を表したものが図表28です。


扶助費そのものが伸びていくのは、人口が増加すれば必然ですが、歳出総額に占める割合が平成8年度以降、上昇の一途をたどっているのに、留意が必要です。平成11年度には12%を超え、平成13年度は13%台に突入して急速な上昇傾向にあります。なお、平成12年度は、介護保険制度がスタートし、それまで一般会計に含まれていた老人福祉関係の扶助費が介護保険特別会計に移行したため、老人福祉費関係の扶助費の額が減少していますが、歳出総額に占める扶助費全体の割合は、他の扶助費が伸びているため、微減にとどまっています。
介護保険導入後の老人福祉部分に対する実質的な市の一般財源の負担(特別会計を含めた市の負担)は、図表30のとおりで、導入年度の12年度は減少しましたが、高齢者数の増加もあいまって、13年度は伸びています。

扶助費の増加要因としては、生活保護費が社会経済環境の変化等で伸び続けていること(保護人員に着目すれば、平成8年度の480人が平成13年度では919人と、わずか5年間で約2倍の伸び)、乳幼児医療費助成の対象年齢が拡充してきていることがあげられます。特に、平成15年度には、児童扶養手当が平年度化すること、支援費制度の導入*により、委託費等から扶助費に移行する経費があることなど、今後も扶助費はそれぞれ億単位の経費の増大が予定され、ますます高い割合を示すものと予測されます。
なお、13年度決算で、26市の総計の状況をみると、扶助費の歳出総額に占める割合は15.0%に対し、多摩市は13.8%で、上昇傾向にあるとはいえ、平均より扶助費の圧迫度は低くなっています。しかし、今後の急速な高齢化という多摩市の特殊事情を考慮すると、この割合の上昇は不可避です。高齢者層の増加、少子化対策の充実、不透明な経済状況等は、扶助費の対象増大の要因となります。特に、多摩市の場合、人口構成の特徴から、急速に高齢化が進展することが予測されます(図表31・32)。
そのため、現在の高齢者施策のあり方の枠組みについて、行政の役割を踏まえた再構築が求められます。つまり、より広い対象のセーフティネット構築のために、一定の対象者に手厚いこれまでのセーフティネットの基準の見直しが必要になってくるものと考えられます。

(3)公債費
公債費は、投資的経費等に充当するための起債(市の借金)の償還費です。平成8度以降、市民要望に応え、コミュニティセンター、総合福祉センター、ベルブ永山、ヴィータ・コミューネ等を計画的に整備してきており、これらの施設は市民の交流の場として親しまれ、うるおいのあるまちづくりに大きな役割を果たしています。この施設建設に充当した市債のほか、特別減税に伴う財源補てんのための市債償還もあり、近年の公債費の割合は8%から9%台の水準で推移しています。後年度の負担を軽減するために、財政状況の許す範囲で、高利率の起債を繰上償還したり、低利率へ借り換えたりの工夫もしており、廃校施設の残額を繰上償還している年度もあるため、平成8年度以降は、その分公債費が高くなっています。


公債費の負担の度合いを表すのに、「公債費比率」や「公債費負担比率」という指標が使われます。「公債費比率」は、経常一般財源の総額に占める、公債費の一般財源所要額の比率を示します。「公債費負担比率」は、公債費に充当された一般財源の、一般財源総額に占める割合を示します。多摩市の平成13年度決算上の公債費比率は7.4%、公債費負担比率は9.3%であり、26市の平均はそれぞれ10.0%、10.7%となっており、他市に比べれば、多摩市の公債費の負担はそう重いとはいえません(図表34)。
しかし、実質的な借金である「債務負担行為翌年度以降支出予定額」(詳細は次項参照)の状況と合わせて考える必要があります。多摩市をはじめ、八王子市、稲城市は、多摩ニュータウン建設に伴う義務教育施設等の施設整備のために、この「債務負担行為翌年度以降支出予定額」が多くなっています。図表35は、26市各市の市民一人あたりの地方債残高、債務負担行為翌年度以降支出予定額を表したものですが、多摩市の実質的借金が大きいことがわかります。

4. 債務負担の支払い
多摩市の財政の特徴として、債務負担行為が多いことがあげられます。債務負担行為とは、土地の購入や整備した施設を分割で購入する場合や、リース契約や継続で行う大規模な建設事業などの複数年度にまたがる契約に伴い、後年度の負担の限度額をあらかじめ担保するもので、その負担予定額は、「債務負担行為翌年度以降支出予定額」という形で表されます。
多摩市の場合、普通建設事業に分類される債務負担の経費の数が非常に多くなっています。これは、多摩ニュータウン事業という大規模開発により、集中的に都市基盤整備をする必要があったことから、学校などの義務教育施設をはじめとする公共施設の建設の経費が膨大になり、地元自治体の負担を緩和するために、ニュータウン事業の施行者(都市整備公団・東京都・東京都住宅供給公社)が土地や施設を譲渡し、補助金や市債を充てた残りの一般財源で賄う分について、一定年度を据え置いて分割でその経費を支払うもので、家計でいえば住宅ローンのようなものです。
したがって、公債費残高にプラスして、このローンにあたる債務負担分を実質借金としてみる必要があります。平成13年度決算における地方債の残高と債務負担行為翌年度以降支出予定額の合計は、592億2,311万8千円で、市民一人あたりで26市分を比較したのが、前項の図表35です。
では、多摩市の公債費残高と施設や土地を分割で購入しているローンにあたる債務負担分についてトータルで見てみましょう(図表36)。市債残高と債務負担のローンにあたる経費の総額は、平成10年度以降、減少傾向にあります。これは、ニュータウン開発に伴う学校の施設整備に伴う債務負担分の残高が少なくなってきていることによりますが、その分、施設の老朽化に伴う改修等の必要性が増す時期を迎え、施設の改修に要する経費が増大します。

このローンにあたる債務負担分は、性質別経費では、普通建設事業に分類され、経常的な経費にはカウントされませんが、実質は公債費と同様、返済を約束した義務的な経費であり、多摩市の財政の硬直化を考えるうえでは、経常経費に上乗せして考えるべきです。
歳入が減少し、投資的経費が急激に減少している中では、このローンにあたる債務負担が従来にも増し、重くのしかかっています。ちなみに、平成13年度決算で、施設や土地の購入関係で、このような実質経常経費とみるべき債務負担に関する支払額は15億5,201万7千円です(図表37)。
なお、債務負担では、一般会計の予算上は数字として見えませんが、多摩市土地開発公社関連の実質的負債があります。平成14年3月31日現在の多摩市土地開発公社の所有している土地の市の買取価格は、38億5,688万1千円で、公社の銀行への負債は39億3,722万3千円です。この公社の保有地(いわゆる塩漬け用地)を一般会計で買い戻し、場合によっては売却も含め、計画的に対応を図る必要があります。

5. 物件費
物件費は、臨時職員の賃金や旅費、消耗品等の需用費、原材料費、使用料や委託料などの非生産的な物財調達のための経費を指します。多摩市の場合、他市に比べ物件費の割合が高いのが特徴で、平成13年度決算における物件費の構成比が22.5%を占めますが、26市の平均は15.0%となっており、突出して高い状況を示しています。市民一人あたりの物件費は71,894円で、26市では武蔵野市に次ぐ高い状況です。これは、多摩ニュータウン開発に伴い、高いレベルで各種施設が整備され、その維持管理のための経費などの負担が大きいことや、人件費抑制のため、積極的に委託を活用し事業を展開してきたためです。

物件費の内訳の推移をみても、経常的な委託費が圧倒的な割合を示しています(図表39)。公園や道路、公共施設のメンテナンスや管理などに係る経費、各種事業の業務委託などであり、維持管理する総量が多いことから、今後は、維持管理のレベルも含め、委託の内容を見直す必要があります。

6. 補助費等
補助費等には、幅広い経費が含まれます。具体的には、報償費、役務費、負担金・補助及び交付金、補償・補てん及び賠償金、償還金・利子及び割引料、寄附金、公課費などの経費です。26市の補助費等の状況をみると、図表40のとおりです。

多摩市の13年度決算における補助費等の歳出総額に占める割合は15.6%、市民一人あたりでは49,751円で、26市のトータル11.3%・市民一人あたり36,061円に比べて高水準にあります。
では、補助費等の内訳では何が多いのでしょうか。図表41をみると、一部事務組合に対する負担金の割合が平成5年度以降、急激に増加、また、経常的な補助金が一定の割合で推移していることがわかります。一部事務組合の負担金の主なものは、ごみの中間処理をお願いしている多摩ニュータウン環境組合と、ごみの最終処理をお願いしている広域処分組合への負担金で、平成6年度から9年度の大幅な増加の要因は、清掃工場二期施設建設関係です。現在は、清掃工場の運営に係る管理費分と清掃工場建設費の公債費償還分になっており、ごみ減量・資源化の推進でごみ搬入量が減少していることから管理費部分については減少しています。しかしながら、公債費の償還にあたる経費の支出が平成28年度まで続き、平成17年度から21年度までは年間9億円余りの公債費の負担が予定されていることから、今後も大きな負担となることが予測されます。

一方、補助金については、イベント等の実行委員会に交付される臨時の補助金と、様々な行政目的に応じた制度や団体育成の補助などの観点から交付される経常の補助金があり、この補助金が年度を問わず、補助費等の大きな割合を占めています。
13年度決算における26市の市民一人あたりの補助費等の内訳を見てみると、多摩市の場合は、補助金と一部事務組合の負担金とその他の割合が均衡しています。環境に配慮した高度な機能を持つ清掃工場や最終処分場の運営に対する一定の経費負担は、今後も必要不可欠なものといえます。一方、補助金の見直しについては「総論賛成、各論反対」で、関係者の合意を得ることが難しい面があります。しかし、全体の財政フレーム(財政計画上の枠組み)が伸びない中では、抜本的な見直しを図る必要があります。

7. 維持補修費
公共施設には、施設補修のための経費である維持補修費がつきものです。市が保有する施設の状態を正確に把握し、その保全を適切に行わなければ、結局はその施設の損耗を早めることになります。
ここ20年間の多摩市の維持補修費は、施設の数が増えており、老朽化した施設が増えているにもかかわらず、他の経費の伸びに比べそれほど伸びてはいません。今後、多摩ニュータウンの大量入居に伴って建設した義務教育施設等が一斉に老朽化することを考慮すると、施設の維持補修費については、必要不可欠な部分を見極め、長期にわたって計画的に補修する必要があります。しかし、近年の財政難の状況の中では、充分な手当てができず、既に長期修繕計画を策定しているものについても、修繕を実施できず、補修を先送りにしてきている実情があります。財政的にも合理性のある補修計画で、計画的に対応を図らないと、安全性にも問題が生じる恐れがあります。多摩市の市民ニーズ、財政規模、今後の補修に必要な経費等を総合的にとらえ、場合によっては、施設の統廃合や目的変更等も含め抜本的な取り組みが求められます。図表44は、13年度決算で、26市の維持補修費の状況を示したものですが、他の経費に比べ、多摩市の場合、維持補修費については、高水準とはいえない状況です。


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