多摩市行財政診断白書 第2部各論編 第1章 公共施設のあり方(2)
最終更新日:平成20年3月31日
1. 2 維持管理の現状とコストシミュレーション(公共建築物)
ポイント
背景
- 2年後の平成17年には、築後30年を迎え大規模改修が必要な学校施設の塊 + 築後15年を過ぎ、1回目の修繕時期を迎えるコミセン等の地域施設や大型施設 + 老朽化・耐震性の不足等の理由から更新(改築)しなければならない学校施設が集中する。
- 総トータル延面積386,000平方メートルの膨大な施設の維持管理がある(東京ドーム約8個分)
手法1
計画的保全(予防保全)
長期修繕計画、施設のグレードに合わせた改修・改築計画等に基づく施設管理。
必要経費=20年間で460億円
年間23億円(全施設ではない)
予測事態1
理想的だが、厳しい財政状況の中、現在の施設数を維持したままでは実現は困難。
30年前の建物はバリアフリー化や設備の陳腐化等へのレベルアップが必要になる。
手法2
事後保全
建物が壊れてから、修繕を行う。現場の切実な要望があってから、予算化し維持補修を行う。
必要経費=年間2~3億円(平成12~14年実績)
予測事態2
故障等により、市民に迷惑をかける。将来にも大きな負債を残すことになる。耐用年数まで使えず、建替えを余儀なくされる。後で大きな出費を伴う。
重要ポイント
- まず公共建築物の縮減(数の削減)が不可欠。
- その上で既存公共建築物の長寿命化・延命化による有効活用が必要。
1. 多摩市の公共建築物の現状
(1)公共建築物の現状
多摩市の公共建築物は、平成14年度末時点で延面積が386,000平方メートルと東京ドームに換算するとおおよそ8個分に相当する膨大な量に達しています。
状況は、昭和50年から60年にかけて学校建設を中心とした大きな学校施設の塊(学校ストック)と昭和62年のパルテノン多摩の建設から平成2年度前後のコミュニティセンターや総合福祉センター等の建設ストック、平成12年の温水プールの建設と続いています。建築物の維持管理費が急激に増加するといわれる建設後30年以上を経過した公共建築物は、現時点では全体の一割程度ですが、今から2年後の平成17年には前記の学校建設を中心とした大きなストックの塊が建設後30年を迎えます。併せて、平成2年度前後に建設された施設についても、築後15年に達し、最初の修繕の時期を迎えます。
なお、平成14年度末時点の改修済みの面積は全体面積の約20%で79,000平方メートル、未改修面積が約80%の307,000平方メートルとなっています。(図表1)
また、用途別の面積状況をみると小学校、中学校、学校跡地利用施設で20万平方メートルを超えています。(図表2)

図表1 建設年次別の改修面積推移

図表2 公共建築物の用途別面積状況
(2)公共建築物の保全状況
多摩市では、これまで公共建築物については、将来の維持管理に向けて、ランニングコストの低減につながる施設計画への取組みや修繕等きめ細かく実施してきました。
但し、その時代のニーズに応えるために必要性が高い新規施設の整備や施設のレベルアップに力点が置かれてきました。
施設の保全手法については、厳しい財政状況の下、不具合を未然に防止する「予防保全」よりも、施設に不具合が生じてから対策を施す「事後保全」で行われている状況といえます。長期修繕計画を策定した施設もありますが、実施時期が来ても予算化が困難です。学校に関しては、学校統廃合の際、新設校の施設整備や耐震補強工事を優先したため、その他の学校の大規模改修事業は大きく遅れています。
図表3は、過去3年間に市で行った公共工事の状況ですが、施設機能を維持するための維持保全レベルの改修工事についても年々予算が削減されています。なお、平成12年の機能レベルアップ新設・改修工事費には温水プールの整備費が大きく計上されています。


2. 公共建築物のコストシミュレーション
1 全公共建築物の計画的保全コストシミュレーション
次のような条件を設定した上で、シミュレーションを実施し、修繕および改築等に要する将来費用を推計しました。
(1) 建物データ(建設年度、延面積等) 確認申請書、財産台帳、学校施設台帳を使用。
(2) 長期修繕計画策定済施設はその所要額を計上。
(3) 長期修繕計画策定がされていない施設は建物グレードを想定し計上。
(4) 大規模改修実施時期30年を想定。
(5) 耐震診断・補強工事は耐震補強が必要となる学校校舎、体育館に係る費用を計上。
(6) 新築・増築・改築工事は、建物の耐用年数設定を財務省省令・補助基準を参考に設定。
RC:60年(学校等)S造:40年(学校体育館)S造:30年(消防団器具置場、学童クラブ)
木造:24年(集会所)
(7) 未入力の大規模予定事業-庁舎改築・給食センター改築については、未計上。

コストシミュレーションは、20年間で460億円の費用がかかる結果となりました。これを20年間で平準化すると23億円/年のコストが必要になります。
図表4の平成16~18年度の政策的経費(新築・増築・改築)は、唐木田、和田コミュニティセンターの建設工事、多摩第一小改築工事が計上されています。平成25~26年度には、昭和58~59年に建設された総合体育館や学校4校等が建設後30年を迎え、大規模改修工事が想定されます。平成29年度には健康センターやパルテノン多摩等がやはり建設後30年を迎え、おおよそ70億円からの大規模改修工事が想定されます。
多摩市が所有する公共建築物は、これまで多摩ニュータウンの開発初期から平成12年の温水プールまで386,000平方メートルという膨大な量が整備されてきました。今後、経年30年以上の老朽化した建築物が増加していきますが、良好な状態を保持するためには、維持管理・更新のために20年間で460億円という莫大な費用が必要とされ、厳しい財政状況が続く中、公共建築物の維持保全予算を確保することが困難な状況となっています。
一方、建築物の老朽化に対する維持保全を講じることはもちろんの事、耐震性能の強化やバリアフリーへの対応など、新たな機能の付加も求められています。
2 学校施設の計画的保全コストシミュレーション
特に学校については、次のような条件を設定した上で、別途コストシミュレーションを行いました。
(1) 大規模改修事業は、築後25年から30年を経過した時期で校舎・体育館・プールを同時改修の設定とした。工事費、設計委託料、工事監理委託料及び引越運搬委託料等を計上。
(2) 改築事業は、おおむね築後50年を経過した時期で、校舎・体育館・プールの全面改築とし、工事費、設計委託料、工事監理委託料、仮設校舎、建物解体費及び備品等を計上。
総事業費は約470億円のコストシュミレーションとなりました。
これを、1校あたりの平均工事費でみると、耐震改修に1億4千万円、大規模改修に6億6千万円、改築に36億円となります。

(3)コミュニティセンター計画的保全コストシミュレーション
唐木田・和田の新築を含め、今後20年間で32億円のコストシュミレーションとなりました。平成33~34年には、「ゆう桜ヶ丘」、「乞田・貝取ふれあい館」、「TOMHOUSE」が建設後30年を迎え大規模改修工事が想定されます。

(4)屋外体育施設の計画的保全コストシミュレーション
テニスコート、野球場、球技場、キャンプ場の屋外施設について次の条件でシミュレーションを行いました。
(1) テニスコートは、ハード・クレーコートから砂入り人工芝コートへ改修。
(2) 野球場については、一本杉野球場は外野防護壁の改修、他の野球場と球技場は5年毎に フェンス張替・グランド整備を想定。
経常的に毎年おおよそ1億円の維持管理コストが見込まれ、今後20年間で約26億円のコストシミュレーションになりました。

3. 公共建築物の長寿命化・延命化
その建築物の生涯にかかる費用計算をトータルで把握し、建設計画から維持管理、将来におけるリフレッシュ工事計画を財政的観点からも捉えようとするのが、ライフサイクルコストの考え方です。こうした考え方を踏まえ、次の条件でシミュレーションを行いました 。
(1) 学校18クラス規模4,000平方メートル、当初建設費25万円/平方メートル、大規模改修費10万円/平方メートルと仮定。
(2) 今後の物価変動は考慮しない。
(3) ケース1=建設後20年で1回大規模改修を行い、40年で改築する。
ケース2=建設後20年毎に大規模改修を2回行い、60年で改築する。
当初建設から100年経過したと想定してコスト比較を行ったところ、大規模改修を1回行い、40年で改築するケース1よりも、大規模改修を2回行い、60年間使用するケース2の方が26億円のコストが縮減される結果になりました。このように公共建築物の長寿命化・延命化は、施設の存続期間を明らかにした上で、適切な長期修繕計画等の計画的保全に基づく施設管理が必要といえます。

図表8
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企画政策部企画課
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