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多摩市行財政診断白書 第2部各論編 第2章 市民サービスの再構築(3)

最終更新日:平成20年3月31日

2. 3 サービス水準のあり方

ポイント

  •  市が提供する市民サービスは多岐にわたっていますが、特に福祉サービスについては、セーフティネットに関わる分野でもあり、多種多様なサービスが展開されています。
  •  一方、少子高齢化の急速な進展をふまえ、限られた財源で増大するサービス需要に対応していくためには、今後セーフティネットのあり方を含めた広範な議論が必要になってくると考えられます。
  •  特に近年の多摩市の民生費の伸びには著しいものがあり、内容について検証する必要があると考えられます。
  •  そこで、福祉分野、特に高齢者と障がい者を対象に提供されている市のサービスを中心に、「サービス水準」の実態について検証しました。
  •  その結果、多摩市は他市より手広く、かつ国や都の基準より高い水準でサービスを提供している状況が見受けられました。
  •  厳しい財政状況においては、このままのサービスを続けていくことは困難であり、効果性・効率性の面から再検証する必要があると考えられます。
  •  特に高齢者福祉サービスについては、高齢者数の急速な増加により、10年後には約2倍、20億円増の財政支出となることが予測されます。ニーズも多様化しており、高齢者を一律に「社会的弱者」と位置づける従来型のサービスを見直して、より効果的なサービスを重点的に配備すると同時に、新たな支え合いの仕組みをつくる必要があります。
  •  障がい者福祉サービスについても、手帳所持者というだけで一律に提供されているサービス等について、再検証が必要と考えられます。

1. 13年度決算額からみた福祉サービス水準比較

 年間一人あたりの経費(金額)は障がい者福祉サービスが高い

図表1 13年度決算からみた福祉分野のサービス水準比較(類似都市比較)
科目単位金額順位(10市中)
老人福祉費 高齢者一人あたり 106,043円 8
社会福祉費 障がい者一人あたり 587,812円 4
児童福祉費 児童一人あたり 212,953円 3

(注)生活保護費については、国の基準に基づいて一律の水準で支給されていることから、除外している。
(注)すべて普通建設事業費を除いている。
(注)社会福祉費の対象額からは繰出金(国民健康保険特別会計への繰出)を除いている。

 他市との比較では、老人福祉費の金額は低く、社会福祉費・児童福祉費は平均以上

13年度一人あたり福祉サービス決算額

 13年度の福祉サービスの一人あたり決算額をみると、社会福祉費が高くなっています。類似都市で比較すると、老人福祉費は低く、社会福祉費・児童福祉費は平均以上となっています。

2. 実施サービスの数からみた福祉サービス水準比較
 多摩市の特殊な人口構成により、今後急増が予測される老人福祉費(高齢者福祉サービス)と、一人あたりの金額が高くなっている社会福祉費(障がい者福祉サービス)について、内容を詳しくみていきます。

 サービスの実施数から多摩市の水準をみると、高齢者サービス、障がい者サービスともに26市中上位となっており、高い水準であることがわかります。

 高齢者サービスは26市中第3位、障がい者サービス実施数は26市中第2位

図表3 実施数からみたサービス水準比較(48事業中)
 主な高齢者サービス実施数主な障がい者サービス実施数
多摩市 40事業(3位) 40事業(2位)
近隣6市平均 35.8事業 38.3事業
類似都市平均 36.5事業 36.4事業
26市平均 33.4事業 35.2事業
平成14年4月1日現在

図表4

3. 費用シミュレーション
 平成13年度のサービス水準で費用の伸びを推計すると、高齢者数や障がい者数の増加により、高齢者福祉費用は約2倍、20億円の支出増、障がい者福祉費用は約1.5倍、11億円の支出増が見込まれます。

 高齢者福祉費用は10年間で20億円、障がい者福祉費用は11億円増加見込み

図表6

(注)老人福祉費推計方法…13年度高齢者一人あたり老人福祉費(106,043円)×65歳以上人口(多摩市将来人口推計をもとに推計)
(注)社会福祉費推計方法…13年度障がい者一人あたり社会福祉費(587,812円)×障がい者数(「統計たま」身体障がい者手帳及び愛の手帳*交付数の推移から推計)

 このままでは財政が破綻する!

4.サービス水準の検証
(1) 実施サービスの数とコスト一覧
 高齢者福祉サービスと障がい者福祉サービスの主なものについて、14年度の他市の実施率と13年度の決算額、利用実績から多摩市のサービス水準を検証しました。

 多摩市は、他市の実施率が低い事業を多く実施している

 高齢者福祉サービスでは、実施している40事業のうち、3割にあたる12事業が、他市の実施率が6割以下のものとなっており、多摩市の高齢者福祉サービスが比較的充実していることがわかります。

(2) 上乗せ・横出し・市単独事業の分類からみたサービス水準
 市が行っているサービスの中には、市が国や都の補助金を受けながら、国や都の基準に基づいて実施しているもの、より条件を手厚くして実施しているもの、国や都の補助金を受けずに市が独自で実施しているものがあります。
 サービス水準の高さをはかるひとつのめやすとして、国や都の基準に市がいわゆる「上乗せ・横出し」を行っているものや、市が補助金を受けずに実施するいわゆる「市単独事業」に着目し、検証してみました。

「上乗せ・横出し」とは
 ここでは、「上乗せ・横出し」について、以下のように定義しています。

事業全体の費用の構成の内訳をみてみると、図のようになります。
 1. 国や都の基準どおりに実施している事業
  市の負担は定められた割合分のみ(法定負担)
 2.「上乗せ」 国や都の基準に金額を上乗せして実施している事業
  市の負担は定められた割合分+上乗せを行ったことによる負担
 3.「横出し」 国や都の基準より対象者を広げて実施している事業
  市の負担は横出しを行ったことによる負担
 4.「市単独」 国や都の補助金を受けずに市が独自で実施している事業
  市の負担は事業費全額

上乗せ横出し

1. 13年度決算額における上乗せ・横出し・市単独事業の占める割合

 障がい者福祉・児童福祉分野において、上乗せ・横出し・市単独事業の金額が大きい

図表10 上乗せ・横出し・市単独事業の占める金額

 高齢者福祉・障がい者福祉分野において、上乗せ・横出し・市単独事業に係る経費の割合が大きい

 事業別にみると、高齢者福祉サービスでは、老人医療事業に関する経費が突出していますが、市の負担額はすべて法定負担です。
 上乗せ・横出し・市単独事業による市の負担額が大きいのは老人福祉センター事業、シルバー人材センター助成事業、長寿祝金、おむつ支給等事業などとなっています。

図表12 高齢者福祉サービスにおける上乗せ・横出し・市単独事業の占める金額(事業別)
図表12 高齢者福祉サービスにおける上乗せ・横出し・市単独事業の占める金額(事業別)

 障がい者福祉サービスでは、心身障がい者福祉手当支給事業の経費が突出しており、上乗せ・横出し・市単独事業による市の負担額も大きくなっています。
 その他、特定疾病者福祉手当支給事業、心身障がい者タクシー利用料金助成等、市単独事業による市の負担額が大きいサービスが多くあります。

図表13 障がい者福祉サービスにおける上乗せ・横出し・市単独事業の占める金額(事業別)
図表13 障がい者福祉サービスにおける上乗せ・横出し・市単独事業の占める金額(事業別)

2.上乗せ・横出し・市単独事業からみたサービス水準チェック
 福祉サービスの中には、国や都の補助金を受けて実施しているものがたくさんあります。こういった補助事業は、「国や都が実施を推奨している」と考えられることから、その基準以上に上乗せ・横出しをしているかどうか、また、他市の実施率や実施内容と比較することで、多摩市のサービスの水準をチェックしてみました。
 特にサービス水準が高い事業は、その目的や効果について再検証する必要があると考えられます。

図表15 多摩市のサービス水準チェック結果表
水準サービス名
高齢者サービス 障がい者サービス
A 在宅ねたきり高齢者等家庭援護事業(観劇等助成) 点字図書等購入費助成
おむつ支給等事業
B   障がい者送迎バス運行事業(貸出)
C 長寿祝金 心身障がい者タクシー利用料金助成
身体障がい者電話使用料助成
特定疾病者福祉手当
聴覚障がい者用電話ファクシミリ使用料等助成
在宅障がい者デイサービス
補装具自己負担金助成
D    
E ホームヘルパー養成講習助成
緊急通報システム(民間対応型)
 
F    
G おむつ支給等事業
機能訓練
長寿を祝う会
在宅介護支援センター
老人クラブ助成
シルバー人材センター
助成老人福祉センター
高齢者集合住宅管理運営事業(シルバーピア)
緊急通報システム(消防庁方式)
身体障がい者運転免許取得事業
身体障がい者自動車改造費助成
在宅重度身体障がい者視覚ガイドヘルパー派遣
重度脳性麻痺者等介護人派遣
心身障がい者福祉手当障がい児通所訓練運営事業(ひまわり教室)
精神障がい者共同作業所補助
知的障がい者生活寮委託
H 保有電話 心身障がい者(児)一時保護
I 緊急通報システム(あんしんS) 出張理髪
重度身体障がい者ハンディキャブ運行事業
J 家具転倒防止器具給付
在宅ねたきり高齢者等家庭援護事業(リフレッシュ事業)
在宅ねたきり高齢者等家庭援護事業(家族介護者教室)
寝具乾燥
K 出張理髪
日常生活用具給付
住宅改造費助成
緊急通報システム(徘徊高齢者探索)
手話通訳者派遣
手話講習会
L 高齢者生活支援ヘルプ
寝具乾燥
老人保護措置費
老人医療
いきがいデイサービスセンター
福祉電話
ショートステイ
食事サービス
車いすタクシー運行事業
心身障がい者医療事務費
心身障がい者(児)通所訓練事業送迎委託
障がい者理解推進事業
特別障がい者手当
精神障がい者グループホーム補助
更生医療給付費
補装具給付費
進行性筋萎縮症者措置費
身体障がい者施設事務費
知的障がい者施設事務費
日常生活用具給付
住宅設備改善給付費
(注)他市の実施状況のデータ不足により判断しがたい事業については、除外した。

 

5. 高齢者施策、障がい者施策の方向性
 いくつかの視点でサービスの水準について検証してみましたが、多摩市が高齢者施策、障がい者施策において、他市より手広く、かつ国や都の基準より高い水準でサービスを実施していることが明らかになりました。しかし、厳しい財政状況においては、このままのサービスを維持していくことは困難です。限られた財源を有効に活用するためには、目的達成のために最も効果的・効率的な手法となっているかを再検証し、より効果的なサービスを重点的に配備すると同時に、新たな支え合いの仕組みをつくる必要があります。

(1) 高齢者施策
 ニーズの多様化等をふまえ、高齢者を「社会的弱者」と位置づけ、年齢のみを要件として一律に提供する従来型のサービスは、見直していく必要があると考えられます。
 例) 長寿祝金、長寿を祝う会

(2) 障がい者施策
 障がいの種類に関わりなく、手帳所持者というだけで一律に提供されているサービスは、目的や対象、効果等について再検証することが必要と考えられます。
 例) 心身障がい者ガソリン費助成、心身障がい者タクシー利用料金助成

(3) 高齢者施策・障がい者施策共通
 サービス対象者が固定化し、限定的に提供されているものや、一人あたりに給付される金額が高額になっているものが見受けられるので、サービスの利用状況等について、できるだけオープンにすることが望ましいと考えられます。
 例) 在宅訪問歯科診療、機能訓練事業、いきがいデイサービス、
在宅障がい者デイサービス、重度脳性麻痺者介護人派遣、重度心身障がい者(児)住宅設備改善費給付、入浴サービス
支援費事業※(ホームヘルプサービス、全身性障がい者介護人派遣、重度視覚障がい者ガイドヘルパー派遣、緊急一時保護など)
 (注)平成15年度から障がい者福祉サービスの多くは「支援費制度」へ移行しました。

 国や都の基準以上に上乗せ・横出しを行っていたり、市独自で実施している事業を中心に、サービスの目的や対象、効果等について再検証することが必要です。

 ニーズの多様化等をふまえ、利用者が選択でき、かつ競争によりサービスの質が向上する仕組みを意識的に組み込んでいく必要があります。
 例) 食事サービス、特命随意契約

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