平成30年度施政方針(平成30年3月阿部市長)

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ページ番号1004530  更新日 2023年3月16日

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(注)本文書は筆記録ではございませんので、当日、市長が述べた文言と若干の相違点があります。

平成30年度の市政運営について、所信を申し述べ、主権者である市民の皆さん並びに市議会の皆さんのご理解とご協力を賜りたいと存じます。

第一 はじめに

「おじさんのノートを最後まで読んでくれれば、きっと君は、自分を取り戻せる。あらたな一歩を踏み出すことができる。僕たち人間は、自分で自分を決定する力をもっているのだから」吉野源三郎が著した「君たちはどう生きるか」の一節です。昭和12年に発行されたこの書は、80年の歳月を経て平成29年に漫画として蘇り、なんと100万部も超えて読まれているそうです。
今、世界では国連が全会一致で採択した「持続可能な開発目標(SDGs〈エスディジーズ〉)」が一つの大きな指標となっています。国際オリンピック委員会は「東京でのオリンピック・パラリンピックを本格的なSDGs五輪としたい」としています。SDGsの開発目標は2030年を達成期限とし、貧困の撲滅、格差の解消、環境保護など17分野の指標を定めています。
そのような時代だからこそ「君たちはどう生きるか」は、世代と世紀を超え、新鮮な響きをもって、私たちに人間としての生き方を考える機会を与えてくれるのかもしれません。
私は、次代を担う若い皆さんの英知を活かし、未来への夢を実現できる「持続可能なまち・多摩」の牽引役を担わなければと強い決意を持っています。
本市の「人口の将来推計」では、2060年に人口が現在の32%減少し、高齢化率は約43%、2.3人に一人が高齢者になります。また、約30年後の2045年には、日本人の平均寿命は100歳を超えるとも言われていることから、まさに未知の領域に向かっています。
一方で、本市は、男性・女性とも健康寿命が都内で一番になるなど元気なまちです。要介護認定率も都内26市では、最も低い状況をキープするなど元気高齢者の多いまちです。さらに、人口は、ここ数年増加傾向にあり、もはや15万人に迫る状況です。とは言え、かつて経験したことのない、人口減少社会、超高齢社会は確実にやって来ます。旧来の常識に捉われず、先手を打っておかなければ、未来への夢が萎みかねません。そのために、本市は今、行政・市民一丸となって、少子高齢化であっても、市民の誰もが健康で幸せなまちの実現に向けて、「健幸まちづくり」に挑戦しています。
さらに、市民の皆さんとの間で心血を注いできたのが、対話と合意形成の仕組みづくりです。「多摩市公共施設の見直し方針と行動プログラム」は「安全に使い続ける」、「施設全体のダイエット」、「時代のニーズに合わせた施設への機能転換」の3つの目的を掲げ、地域施設の存廃については、市民の皆さんとの対話を重ねた上で責任を持って結論を見出す姿勢を大切にしてきました。
「パルテノン多摩」の大規模改修並びに「図書館本館再整備」については、議会においても特別委員会によるさまざまな議論が交わされ、また、議会自ら市民意見を聴取する取り組みなど、これまでにない対応が図られ、一定の結論を導き出していただいたものと受け止めています。
「大規模改修という一つの結論を前提に進めてきたのではないか」、「説得型の説明会ではなかったのか」など、私どもの説明に臨む姿勢についていただいた指摘は真摯に受け止めてまいります。
私は、行政課題に取り組むに際しては、本市の未来をしっかりと見据えながら、まずは意見の違いが当然あることを認識し、合意形成を丁寧に進め、そのプロセスについても、一層の創意工夫が求められていると考えます。議会、市民の皆さんとお互いに知恵を出し合いながら、共に困難な課題に答えを出していく所存です。

第二 市政を振り返り

市長就任2期目の4年間を振り返ります。
「第2期基本計画」では、持続可能なまちづくりを推進するため、施策を横断する基本的な考え方として「3つの取り組みの方向性」を打ち出し、推し進めてきました。
特に、少子化、超高齢社会が進む時代だからこそ必要な「健幸都市スマートウェルネスシティ」の取り組みでは、政策監を推進役として、この2年の間で「健幸都市宣言」、「健幸Spot設置」、「多摩市発ライフウェルネス・テキスト」の制作及び書店での販売など、幾つもの試みが実現してきました。
その他にも、「第五次多摩市総合計画」の「6つの目指すまちの姿」の実現に向けた取り組みは、子育ての面では、子育て中の親子が集い、相互交流や子育ての不安、悩みを相談できる場である「地域子育て支援拠点」に子育てマネージャーを配置し、子育て支援の環境を充実しました。
子どもたちの教育環境では、持続発展教育・ESDを支えるために、全小中学校にタブレット型端末を配備し、子どもたちの生きる力を育み、個性を生かしながら確かな学力を身に付ける環境を整えました。
一昨年より始まりました高齢者支援の「永山モデル」は、目を見張る成果を上げつつあり、これまでにまいた種が確実に芽吹いていると感じています。
さらには、今まで企業等への継続した就労が難しかった、障がいのある方を本市の非常勤職員として一定期間雇用し、その業務経験を通じて一般企業等への就労に繋げる「障がい者チャレンジ雇用『ハートフルオフィス事業』」を開始し、企業等への就労に繋がりました。また、適切な支援や配慮があれば能力を大いに発揮頂けることが、市役所の中でも浸透してきたことなど、成果が表れ始めています。
市民主体のまちづくりに向け、担い手を育成する「わがまち学習講座」は、大学との連携・協力のもとに、まちの課題共有を図りました。さらに、若い世代が本市を盛り上げるためにアイディアを出し合う「多摩市若者会議」を立ち上げ、大学生を中心とした若い世代のエネルギーが結集した、活気ある議論の場が誕生しました。
こうした実績の他、私が大切にしている平和への想いでは、被爆地広島市から寄贈された被爆2世のアオギリを「非核平和都市宣言記念樹」として植樹するとともに、「子ども被爆地派遣」では、長崎への派遣も始めました。「平和の輪」は市内の小中学生に着実に広がっています。
世界平和に緊張感が増す中、改めて、戦争の悲惨さと平和の尊さをいかに後世に伝承していくか、多世代の方々が、この「子ども被爆地派遣」の報告会を通じて考えさせられたことと思います。
さて、今、駅を中心としたまちの姿が変わろうとしています。
聖蹟桜ヶ丘駅周辺では、長年の懸案であった、駅北地区の開発が始まります。多摩川のロケーションと相まって、さらに、まちの魅力が高まることが期待できます。
市民が主体となって始まった、花火のあがる「せいせきみらいフェスティバル」も4年目を迎え、多くの方に期待される地域のイベントとして定着してきています。
諏訪・永山地区では、「多摩ニュータウン再生」の取り組みが他の地区に先行して進んでいます。この取り組みは、単なる団地の建替えではなく、将来の都市構造の転換やミクストコミュニティなどを視野に入れたものです。
今後、愛宕地区での建替え予定の他、南多摩尾根幹線の整備も動きだしており、まちが徐々に生まれ変わり始めています。
さらに、本市の強みである、大学や企業との連携では、地域の課題解決に向けた連携をはじめ、シティセールスの取り組みでも連携が深化しています。
多摩センター駅周辺では、本市のポテンシャルの高さが、企業誘致の面にも表われています。多摩センター地区を中心に、大手企業をはじめとした、さまざまな企業が本市に関心を持っていただき、進出してきます。
さらには、本市と都心を結ぶ交通アクセスが、時間、サービスなど大きな変化を遂げようとしています。
今後も、駅周辺の整備等を進め、人が集い、活気と賑わいのあるまちを目指します。
地域防災では、3.11以降、自主防災組織の合同訓練等への取り組みが広がり、地域が主体となって、自分たちのまちを守る、互助の精神は確実に進み、地域の皆さんの防災意識の高さが伺えます。
みどりのルネッサンスの取り組みでは、市民が、みどりに関わる具体的な展開方法等を報告書としてまとめ、市民協働による持続可能なみどりを育む道筋をつけました。
市民、環境団体の皆さん、事業者等、多くの方々の参画と協力により、「生物多様性ガイドライン」も策定できました。
財政面では、公債費負担比率、地方債現在高、基金残高は、この4年間でさらに健全な財政運営を継続しており、全国でも優れた財政状況を実現しています。
この他、衆議院議員選挙の選挙区の分割など、国の不合理な制度の見直し等に対しては、物申す市長として、機を逸することなく国へ直談判いたしました。また、都市計画税の使途については、本市が先導し、長年にわたり国や東京都に働きかけた結果が実を結び、その使途が、都市計画施設の新規整備のみならず、更新にも適用されることになったところです。
市内部に目を向けると、行政サービスの提供を担う職員の能力向上を掲げた「人財育成基本方針」を改訂し、職員力を高め、より強い組織づくりを進めました。
さらには、私が市民の皆さんとともに進めたいと大切に考えている施策を実現するため「健幸まちづくり政策監」、「シティセールス政策監」、「平和・人権課」、「子ども若者育成係」等の組織を設けるとともに、市長部局と教育委員会との連携を高める職員配置を行い、本市ならではの取り組みを前進させました。
この4年間を振り返ると、かつて経験したことのない、少子化、高齢化、公共施設の老朽化の課題は、とても大きな壁であり、悩みぬき試行錯誤の4年間でした。特に、公共施設の老朽化の課題では、市民の皆さんとの合意形成に多くの時間を充て、丁寧な説明と対話を進めてまいりました。
私は、誠実、謙虚、有言実行の強い意志を持って、何事にも真正面から取り組んだことで、公約として掲げました項目については、ほぼ達成しています。また、達成に至っていないものについても一定の方向性を示すことができたと考えています。
大事にしてきた、市民の皆さんとの「対話」では、叱咤激励をいただき、それを糧に、将来都市像「みんなが 笑顔 いのちにぎわうまち 多摩」の実現に向け、常に事業の見直しや更新を図り、全身全霊で取り組んできました。
まちには笑顔があふれ、活力に満ち、いつまでも元気な多摩市がはるかな未来まで続くよう、引き続き市民の皆さんとともに進めてまいります。

第三 多摩市を取り巻く状況と課題

1 国政、都政の状況

安倍首相は、先の施政方針演説で、「少子高齢化という『国難』に対し、あらゆる方々にチャンスを創ることで克服できる」と述べられました。
働き方改革、人づくり革命、地方創生などの具体的な取り組みと、すべての人々の可能性を存分に開花できる、「新しい時代」、「新たな国創り」を進める方向性と課題解決に向けた危機感は共有するものですが、進め方については、より一層の工夫が必要です。
一方、地方消費税については「都市に偏りがちな配分を、人口を重視した配分に見直す」と述べられています。本来の制度の趣旨を歪め、都市部の税収を狙い撃ちにするような国の動きに対し、引き続き、他の自治体と連携し反論してまいります。
憲法については「各政党が具体的な案を国会に持ち寄り、憲法審査会において議論を深め、前に進めていくことを期待している」と、議論を促す発言がありました。戦後の日本社会の平和を築いてきた憲法をめぐる議論は、深い議論と未来を見据えた熟議が大切と考えます。
一方、都政は、小池都知事が先の総選挙後、改めて、東京の改革を加速すると積極的な発言がありました。
情報公開の徹底、大胆な待機児童対策、都市間競争を勝ち抜く成長戦略の展開、東京2020オリンピック・パラリンピックを契機としたさらなる成熟都市への取り組みをはじめ、都民ファーストを基本に「東京大改革」を推し進める、その方向性や考え方に改めて期待します。また、市町村が実施する各種施策等に要する経費の財源補充の仕組みである「市町村総合交付金」予算の増額については評価するところです。しかしながら、本市が課題と考える、行政サービスにおける区部と市町村部の格差については、あらゆる機会を通じて、意見を申し上げていく考えです。

2 少子社会、超高齢社会への挑戦

今後、日本の人口は確実に減少していきます。しかも急激に減っていく類例のない事態は、長い歴史の中でも極めて特異であり、これまで経験したことのない社会に挑戦することになります。
今こそ、地域の結びつきを高め、高齢社会にあっても、豊かさを実感できるまちのあり様を新しくデザインする好機と考えます。幸い、本市は、健康な高齢者が多くいらっしゃる高い潜在力を持つ元気なまちです。また、まちを愛する市民をはじめ、地縁組織、NPO、大学、企業、ボランティアなど多くの地域資源に恵まれています。地域の支え合いを支援するとともに連携をさらに強め、「健幸都市スマートウェルネスシティ」を進める大きな原動力とし、少子化、高齢化を乗り越える道筋を描いていく考えです。

3 未来への投資

次代を担う子どもたちや若者の可能性を広げるための教育や支援を展開し、少子化、高齢化による生産年齢人口の減少を克服し、まちの活力を維持していくための取り組みを進めます。
「多摩市若者会議」から、本市を元気にしていく若者らしい提案をいただきました。若者たちが夢を語り、それが夢で終わらず、実現できるまちであることは、若者たちを惹きつけ、まちの価値をさらに高めます。若者たちが若者らしく生きられることや、若者の声が市政に反映するまちづくりを進めます。
一方、貧困と格差、引きこもり、ニートなど、子ども、若者が、生きにくさを感じている現状にしっかり目を向け、我われ大人世代の責務を果たし、行き詰まりを感じている状況から、将来の視界が開けるよう支援します。
また、妊娠から出産、成長期、教育、医療など、子育て世代のライフステージに応じた、きめ細やかな支援を引き続き展開し、子育て期の経済的な負担や心理的な不安を軽減することで、子育てが楽しいと思える環境を整備します。地域に若い世帯が増え、子どもたちの元気な声が聞こえることは、何ごとにも代えがたい未来への活力や大きな喜びを地域全体にもたらすことと思います。
本市の優れた住環境との調和を市内外に発信するシティセールスを展開し、若い世代の定住促進につなげていく、未来を見据えた投資を行ってまいります。

4 住み続けたいまちを目指して

3年後の平成33年(2021年)には、市制50年を迎えます。
ふるさと多摩は、万葉集にも歌われ、郷愁を誘う歴史とロマンにあふれた場所でした。かつて野山をうさぎが駆け巡り、四季折々の草花がまちを彩り、そこに住む人々のかけがえのない、ふるさとがありました。
時を経て、戦後の高度経済成長による東京都区部の深刻な住宅難などに対応する必要から、居住環境の良好な宅地・住宅を大量に供給することを目的として多摩ニュータウンが構想され、新たなまちとして大きく変わりました。
今、私たちのまちは、「選ばれるまち」の条件を備えた、自然と利便性が調和した強みのあるまちになりました。この強みを活かすため、これまでの取り組みに磨きをかけていきます。
本市の「シンボル」施設である「パルテノン多摩」は、大規模改修を契機に、時代の要請に応えられる、新しい時代の複合文化施設として、文化芸術の振興やふるさと意識の醸成、多摩センター地区のまちの賑わいに寄与する施設に生まれ変わります。劣化した施設の機能回復だけでなく、文化芸術などを通じた市民の出会いや交流の「場」の実現に向けて、市民の皆さんとともにつくりあげていきます。
一方、図書館本館再構築は、市民の皆さんの意見を踏まえて策定した基本構想を土台に、多摩中央公園の緑にとけ込んだ、本市らしい「知の地域創造の拠点」をイメージし、引き続き、市民の皆さんのアイディアをいただきながら、具体化に向けて進めます。
どちらの施設も、市民の皆さん、議会の皆さんとの合意形成のプロセスを大切に進め、相互の連携、そして、多摩中央公園の改修との相乗効果により、多摩センター地区のまちの賑わいにつなげていきます。
「多様性=ダイバーシティ」の面では、女性や子どもたちをはじめ、セクシャルマイノリティの皆さん、外国籍の方、あらゆる人々が個人として、人として尊重され、自由に意見表明ができるまちをこれからも目指します。育ち、学び、働くなど差別なく障がい者もいきいきと地域で暮らせるまちづくり、シルバーエイジの皆さんが地域で活躍できる場づくりもしかりです。がんや難病、認知症など病と向き合う人とそのご家族や、認知症など高齢の方、少数者の生きる権利が守られ、自由で平等、そして平和な社会を目指し、多様な人々が共存しあう、お互いの違いを認め合う、本当の意味での住みやすさを追求していきます。
住み続けたいまち。子育てしたいまち。老いを迎えても幸せを実感できるまち。いつまでも自分らしく、いきいきと暮らしていける多摩市を全国に発信し、市民の皆さんの「まちを愛する心=シビックプライド」を大切にしたまちづくりを進めます。

第四 目指すまちの姿の実現に向けて

平成30年度予算案は、第五次多摩市総合計画第2期基本計画の4年目として、本市の諸課題に着実に取り組み、総仕上げの年の予算として編成しました。そのため、4月に市長選挙がありますが、これまでの市政運営を停滞させないためにも、年間総合予算として編成し、併せて、その執行体制についても組織改正を4月に行います。
誰もが生涯にわたり幸福感をもって暮らすことのできる「健幸都市・多摩の創造」に向けた取り組みをはじめ、基本構想に定めた「目指すまちの姿」の実現に向け、各施策に取り組んでまいります。
また、行財政改革の分野でも、事業の立案にあたって、民間企業のノウハウやアイディアを取り入れる仕組みを導入するなど、新たな手法をとり入れることにより、市民サービスの向上や効率的な事業運営を図る、いわゆる「しくみの転換」に引き続き取り組んでいきます。
議会からいただいた「平成28年度決算審査施策評価」につきましては、議会の意見として受け止め、さらに対話を深めながら市政に活かしてまいります。

1 子育て・子育ちをみんなで支え、子どもたちの明るい声がひびくまち

待機児童解消は、本市の喫緊の課題です。全国的に保育園の緊急整備が進んでいることから、保育人材の確保や離職の防止が急務となっています。事業者が保育従事者の住居等の宿舎を借り上げる場合に生じる負担軽減を図るため、東京都の補助制度を活用し、保育人材の確保を支援します。
また、子どもの貧困対策の一環として、経済的な理由で学習塾などに通えない、中学生や高校生を対象に実施している「ひとり親家庭等学習支援事業」は、これまでの実績から、募集人員を増やすほか、実施回数、実施場所の拡大を図り、子どもの自立や進路へのサポートを図ります。
さらに、義務教育就学児医療費助成制度の所得制限撤廃に向けた準備を進め、子育て世代の経済的支援を行います。
今や、私たちの生活に深く浸透しているSNSは、いつでも、どこでもつながり、コミュニケーションを容易にはかることができる反面、過度な「つながり」などから、思わぬトラブルになるケースがあります。本市では、平成27年度に小中学校を対象に「多摩市インターネットの利用に関するアンケート」を行い、その翌年度には、調査内容をもとに、リーフレットを作成し、小・中学生や保護者に対する啓発を行いました。その後の効果測定を行うため、再度、アンケート調査を行い状況の把握に努めます。
貧困や引きこもり等、自身では解決できない問題に対しては、社会の理解と多様な支援が必要です。本市でもそうした実態が少なからずあると推測されますが、実態がつかめていない現状があります。引きこもりやニート等、社会生活を営む上でさまざまな困難を抱える若者やその保護者に対する相談業務の充実や、子どもの貧困に関する認識を高めるため市民向けの講演会を行い、理解の促進を図るとともに、支援につながる糸口になるよう、各種支援施策や相談窓口の周知強化を図ります。
学童クラブは、児童の安全確保の観点から、順次学校内への移設を進めています。連光寺学童クラブを連光寺小学校内に移すための建設工事を進め、平成31年4月の開所に向け準備を進めます。
また、待機児童対策として、北諏訪小学童クラブ第二及び東落合小学童クラブを開所します。
教育の面では、昨年、ベネッセコーポレーションとまちづくりに関する協定を結び、「日本一英語の話すことのできる児童・生徒の育成」を目指し、海外とのオンライン英会話を試行実施しました。この取り組みをさらに拡大し、オンライン英会話を中学校2年生、3年生で実施し、「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」の英語4技能を測るためのテスト「GTEC(ジーテック)」を中学校3年生の全生徒に実施します。グローバル化に対応した教育環境づくりは、先駆的な取り組みとして、本市のシティセールスにも寄与するものと考えます。
また、情報教育の推進とその環境整備として、全小中学校への配備を完了した、タブレット型端末は、機器の更新時期を迎えるため、順次更新します。校務支援システムは、セキュリティを強化するため強靭化を進め、多忙な学校現場の負担軽減と安全面の対策を図ります。
学校教員の勤務負担は社会問題となっています。その負担軽減と中学校の部活動の充実を図るため、「部活動指導員」を置きます。「部活動指導員」は、部活動の顧問として技術的な指導を行うほか、対外試合などの引率が行える等、教員のサポートが可能となります。
学校の施設面では、西落合小学校の大規模改修工事を、平成30年度、31年度の2箇年事業として行います。
また、児童・生徒の基礎的・基本的学力や学習習慣の定着を図る取り組みの一つとして、地域の方々にご協力いただき、タブレット端末を活用し、授業時間以外での学習支援である「地域未来塾」を本格実施します。
関戸公民館は、開館20年を迎える時期が迫っています。これまで、多くの市民の皆さんにご利用いただき、これからもご愛用いただける環境を整備するため、改修工事に向けた準備に入ります。

2 みんなが明るく、安心して、いきいきと暮らしているまち

健康づくりについては、身体面の健康だけでなく、心理面での幸せの獲得も視野に入れて、40歳に向けた健幸啓発情報誌の送付や、高齢者をメインターゲットとしたライフウェルネス検定の実施など、世代別にターゲットを定めた情報発信に取り組むとともに、各種ウォーキングイベントの展開、遊歩道へのベンチの設置など健幸づくりに取り組みやすい環境の整備を進めてきました。引き続き、生活のさまざまな場面での健幸啓発や、健幸を獲得しやすい環境づくりを全庁挙げて進めてまいります。
高齢者福祉では、いつまでも住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができる地域包括ケアシステムの構築に向けて取り組んでいます。高齢者の身近な相談窓口である地域包括支援センターの再配置を進めるとともに、現在、「生活支援コーディネーター(支え合い推進員)」を配置し、住民同士が支え合い、自分らしく活躍できる活動や地域に必要な生活支援サービスづくりを推進する「生活支援体制整備事業」を進めています。さらに、生活支援コーディネーターの増配置を行うとともに、地域のニーズや課題を解決するため、市民や関係団体等と話し合いの機会をもち、閉じこもりを予防するための居場所づくりや、出歩きを促進するための支援をモデル事業として展開し、地域による支え合いの仕組みを進めていきます。
今年度に試行的に開始した「フレイル予防」を目的とした測定会を、「TAMAフレイル予防プロジェクト(TFPP)」として全市展開を図り、日常のちょっとした不具合に早めに気づき、行動変容につながるための機会を広げていきます。実施にあたっては、市民、大学とともに市民総出で介護予防に取り組み、健幸まちづくりを更に推進していきます。
昨年度から「失語症会話パートナー派遣事業」の実施に向け、国のモデル事業の活用もしながら支援者養成に着手してきましたが、その成果などを踏まえ、派遣事業の実施を進めます。
昨年、議会において「骨髄移植ドナー支援制度策定に関する陳情」が、全会一致で採択されました。「骨髄・末梢血幹細胞移植」の提供者に対する助成制度を設け、骨髄・末梢血幹細胞移植の推進とドナー希望登録者の増加に向けた取り組みを進めます。
受動喫煙の防止については、平成29年第1回多摩市議会定例会においての決議や、国や東京都における受動喫煙防止対策の強化に向けた取り組みの動向を踏まえ、本市においても、条例制定に向けて取り組むなど、受動喫煙の防止に向けた対策を進めます。
糖尿病重症化予防事業は、これまでの取り組みをさらに発展させ、医師会、薬剤師会、民間事業者との連携のもと、糖尿病性腎症のリスクの高い国民健康保険被保険者に対する新たな仕組みによる支援をはじめます。

3 みんなで楽しみながら地域づくりを進めるまち

先日、市内で9番目となる、和田・東寺方コミュニティセンター、愛称、「大栗川(おおぐりがわ)・かるがも館」が開館しました。館のコンセプトは「街のリビングルーム」です。だれもが気軽に立ち寄れ、人と人との交流や情報を発信する地域コミュニティの拠点施設として、運営協議会を始め地域の皆さんが活躍する舞台となることが期待されます。
富士見町との交流では、昨年30周年記念事業として実施した、ハロウィンin多摩センターやサンリオピューロランドへの招待が大変好評を得たことから、引き続き実施し、住民レベルでの交流を推進していきます。
スポーツは、心と体の健康に寄与するものです。年齢等に応じて気軽に継続的に行えるものから、競技スポーツまでさまざまです。本市は、早くから、施設整備を進め、市民がスポーツに触れ合える環境づくりに取り組んできました。東京2020オリンピック・パラリンピックを見据え、スポーツの定義やこれからの施策の方向性、施設整備の基本的な考え方などに関する「スポーツ推進計画」の策定に着手します。

4 働き、学び、遊び みんなが活気と魅力を感じるまち

都市農地は、農産物を供給するだけでなく、食育や環境保全、福祉との連携、防災など、多面的で重要な機能を有し、都市に潤いを与え、市民にとって失ってはならない重要な財産です。生産緑地をはじめ、都市農地に係る国の大きな制度改正の動向を踏まえ、本市の農業振興に関る今日的な諸課題に対応を図るため、「多摩市農業振興計画」の全面的な改定を行います。
多様化する旅行客のニーズを捉え、観光を目的とした来街者の増加を目指すため、産官学民による意見交換会を継続して行います。観光まちづくりの担い手、望ましい組織のあり方、運営主体などについて専門家の意見もいただきながら、課題の共有、議論の深化を図ります。
また今年は、多摩センターのハローキティストリート・しまじろう広場誕生5周年を記念する年に当たります。本市のまちの魅力、財産である、ハローキティストリート・しまじろう広場を広くPRし、市内外から誘客強化を図るイベントを実施するとともに、両キャラクターを活かした多摩センター地区の一体的な魅力発信の取り組みを進めていきます。

5 いつまでもみんなが住み続けられる安全で快適なまち

巧妙化かつ深刻化する振り込め詐欺などの特殊詐欺被害は、本市においても多くの被害が発生しています。被害を未然に防ぐため、警告メッセージと録音機能を備えた「自動通話録音機」の無償貸し出しを多摩中央警察署と協力し実施します。
地域防災の要である、消防団の器具置場については、これまで計画的に耐震化対策を講じてきましたが、引き続き器具置場の老朽化対策に取り組んでまいります。また、災害時に必要となるトイレについては、車いす対応型も含めた組み立て式トイレ等、より使いやすさを備えたものに更新します。
多摩センター駅周辺地区では、引き続き都市再生整備計画を推進し、ハローキティストリートでは、ストリートファニチャー(植栽一体型ベンチ)の整備を行います。また、多摩センター駅は、市外及び外国からの訪問客も多いことから、「多摩市公共サイン整備基本計画」に基づき、多言語表示による案内サイン計画を進めます。既に実施しているオープンカフェ事業と併せ、これからの訪問客の受け入れとまちの賑わいを後押しする取り組みを進めます。
「多摩市住替え・居住支援協議会」の場を活用して、相談事業による居住支援を促進するとともに、本市での住まい、住み替えについて興味を持っていただく学びの機会として、講座等を実施します。
街路樹は、良好な都市景観を形成するうえで大きな役割を担っていますが、一方で、大径化(だいけいか)した街路樹は、道路の安全な通行の妨げになることがあります。街路樹が要因となる諸課題を解決する「街路樹よくなるプラン」の改定を、市民意見を聴きながら進めます。
下水道事業では、持続可能な下水道事業の実現を目的に、明確な目標を定め、膨大な施設の状況を客観的に把握・評価し下水道施設を計画的かつ効率的に管理することを目的とした「下水道長寿命化計画」を策定します。
引き続き、ニュ―タウン再生の着実な取り組みや、道路、橋梁などの社会インフラの計画的更新等を実施していきます。

6 人・自然・地球 みんなで環境を大切にするまち

多くの市民の皆さんにご利用いただいている、多摩中央公園と多摩東公園の改修が動き出します。多摩中央公園は、パルテノン多摩の大規模改修や図書館本館の整備を含め、多摩センター地区に多くの人が集い、賑わいに寄与する改修を目指します。多摩東公園は、武道館・陸上競技場等と合わせて、老朽化対策、バリアフリー対策を基本とした改修工事に入ります。
みどりのルネッサンスは、市民の皆さんと行政が手を携え、通常の剪定、伐採ではない、みどりという豊かな自然環境の活用と、多様な機能、価値を持つ良質なみどりへの転換を目指した本市ならではの取り組みです。
これまで蓄積された市民との協働をベースにさらに取り組みを加速してまいります。
以上、第五次多摩市総合計画第2期基本計画の着実な前進とともに、人口減少と高齢化問題等、本市の地方創生の取り組みとして進める「多摩市まち・ひと・しごと創生総合戦略」も計画的に実行していく所存です。

第五 むすびに

スポーツの祭典として、また、平和の祭典として、大きな舞台ともなりました平昌オリンピックが閉会し、来月からはパラリンピックが始まります。そして、いよいよ、2年後には、東京オリンピック・パラリンピックを迎えることとなります。市民の皆さんとともに、ホスピタリティ精神でお迎えする準備も進めていかなければなりません。
地球に目を転じれば、やはり地球温暖化に伴う気象変化による局地的集中豪雨や海流の変化、海水温の上昇による環境面への影響は大変気になりますし、注視していかねばなりません。あらゆる災害といつ襲われてもおかしくない首都直下型地震への備えも必要です。
そして昨年、国連総会で可決された「核兵器禁止条約」を推進した功績によりノーベル平和賞を受賞したI CAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)も忘れてはなりません。「ノーモアヒロシマ」「ノーモアナガサキ」を叫び続けてきた「ヒバクシャ」の皆さんこそ受賞者であるとし、オスロの地に「ヒバクシャ」の訴えが響きました。「核なき社会」に向け「非核平和都市宣言」を行った本市も「平和首長会議」の一員として声をあげてまいります。
「君たちはどう生きるか」で「僕たちは、自分で自分を決定する力を持っている。だから誤りを犯すこともある。しかし、僕たちは、自分で自分を決定する力を持っている。だから誤りから立ち直ることもできるのだ」と吉野源三郎は呼びかけます。
つまり、現在の本市の諸課題を乗り越えていくためには、市民の負託を受けた市長として、私自身が課題と向き合い、市として進むべき方向が正しいかどうかを常に自問自答しながら前に進む必要があると考えています。
私は、自治基本条例の意義を改めてかみしめ、市民の皆さん、市民の代表である議会の皆さん、そして市職員とともに汗をかき、心と力を合わせながら、引き続き健幸都市・多摩への取り組みを全力で進めてまいる所存です。

皆さんのご理解とご協力を心からお願い申し上げ、私の施政方針とさせていただきます。

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