平成27年度施政方針(平成27年3月阿部市長)

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ページ番号1004533  更新日 2023年3月16日

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(注)本文書は筆記録ではございませんので、当日、市長が述べた文言と若干の相違点があります。

平成27年度の市政運営について、所信を申し述べ、主権者である市民の皆さん、市議会の皆さんのご理解とご協力をいただきたくお願い申し上げます。

第1 はじめに

私は、第1期目の市長就任以来、「みんなが笑顔 いのちにぎわうまち 多摩」の実現に向けて、市民の皆さんが住んでいることを誇りに思えるまちにするため、常に全力投球で、市政運営に邁進してまいりました。
市政世論調査における、住みよさの総合評価結果では、多摩市を「住みよい」または、「どちらかといえば住みよい」とする肯定的な評価が90%を超え、たいへん高い評価をいただいているところです。
また、定住意向についても、80%を超える皆さんが、これからも、引き続き多摩市に住み続けたいとの意向をお持ちです。本市が持つこの緑豊かな自然環境が市民の皆さんの生活に潤いを与えるとともに、高い住環境が備わっていることの証と考えています。
私は、市民の皆さんからいただいている、この高い評価に甘んじることなく、引き続き、まちの魅力を高め、「暮らしたい、暮らしてみたい多摩市」のまちづくりを着実に進めるため、粉骨砕身の努力をしてまいる所存です。
私の2期目の任期も、もうすぐ1年が経とうとしています。昨年4月の選挙では多くの市民の皆さんから御支援を賜り、再度、多摩市長として市政の重責を担っていくこととなりました。一層の決意と情熱をもって、リーダーシップを発揮し、市政運営に邁進していかねばならないと改めて重く受け止めているところです。
さて、日本はかつて経験したことのない人口減少社会の中にあり、特に本市では、高齢化がきわめて急ピッチで進んでいます。私は、多摩市版地域包括ケアシステムの取り組み等を通じて、誰もが人生の最期まで幸せに生きられる健幸都市(スマートウェルネスシテイ)のまちづくりを進めていきます。学校教育においては、「2050年の大人づくり」をスローガンに、すべての小・中学校が持続発展教育・ESDを進めています。また、地域においては、地域の皆さんとともに、より良い子育て環境の実現を目指します。
将来の予測がきわめて難しい時代ではありますが、目指す姿をしっかりと共有し、市民、NPO、団体、事業者、大学、そして行政など多様な主体がそれぞれの強みを最大限に発揮し、市民の皆さんとともに力を合わせながら、本市の将来都市像「みんなが笑顔 いのちにぎわうまち 多摩」の実現に努めていきます。

1 市政運営の基本姿勢

平成27年度は、多摩市第五次総合計画第2期基本計画のスタートの年であり、加えて、今後の人口減少社会の到来も見据えて、まちづくりの新たな方向性に舵を切る、本市にとって極めて重要な時期であると認識しています。
議会の議決をいただいて決定した総合計画基本構想の、「将来都市像」と「目指すまちの姿の実現」に向けて、「市民主体のまちづくりの推進」、「持続可能な質の高い行財政運営の推進」を基本姿勢に、さらにしっかりと歩みを進めてまいります。
また、未曾有の大災害となった東日本大震災からまもなく4年が経とうとしていますが、昨年の日本は、自然災害による甚大な被害と感染症に振り回された1年でした。昨年2月の関東甲信地方の大雪、8月の広島の土砂災害、9月には、岐阜県と長野県にまたがる御嶽山が噴火、幅広い地域で交通網を混乱させた10月の台風など、気象や火山災害がこれほど多く発生した年は記憶にありません。さらに、エボラ出血熱、デング熱、鳥インフルエンザウィルスの発生など、深刻な感染症が数多く発生し、憂慮すべき状況にあります。
加えて、首都直下型の大地震が、今後30年以内に70%以上の確率で発生すると言われています。大地震は必ず起こるとの前提で、市民一人ひとりが防災意識を高く持ち、地域防災力を強化することが必要です。
私は、一自治体を預かる首長として、14万7千市民の生命と財産を守る立場にあります。様ざまな課題に対し、迅速に、的確に、また、これまでに経験したことのないような厳しい状況下におかれても、積極・果敢に対応することで危機を乗り越えていく覚悟です。

(1)市民主体のまちづくりの推進 市民自治の土台づくり

本市は、自治基本条例を持つまちであり、市民活動が盛んなまちです。多くの市民の皆さんがまちづくりに関わることのできる環境が整っています。多様な世代の方が持つ、広い知識や豊かな経験をまちづくりに活かすことができる仕組みを構築し、市民参加・市民参画と協働のまちづくりを一層推進するため、その前提となる市政情報の提供方法の改善、市民目線に立った情報発信の工夫を行います。
私は、市長就任以来、市民の皆さんとの対話を第一に市政運営を行ってきました。特に行財政改革や、公共施設の見直しにあたっては、市長である私自らが先頭に立ち、市内各地で説明会を行っております。計画の進行については丁寧な対話と適宜適切な更新を行ってまいります。
また、若者、勤労者、学生、自営業の皆さんなど、様ざまな立場にある市民の皆さんとの対話を通し、沢山のご提案、ご意見をいただいてきました。
課題を乗りこえていくためには、市民の皆さんの理解と協力が不可欠です。率直な対話を通した課題の共有化がまさに自治の創造に向けた歩みにつながります。これからも市民の皆さんとの丁寧な対話を重ねていく所存です。

(2)持続可能な質の高い行財政運営の推進

先行きの見通せない、変化の激しい社会状況の中で、自治体には限られた財源で質の高い行政サービスを提供することが求められています。
このため、社会状況の変化に迅速・的確に対応する強い組織づくりと、それを支える創造力豊かで行動力に富んだ職員の育成を図ることを目指し、現在の人財育成基本方針の見直しを行います。
また、今後の財政の見通しでは、人口減少・超高齢社会の進展などによる税収の減少や社会保障関連経費の増加に伴い、引き続き、厳しい財政状況が想定されることに加えて、多摩ニュータウンの建設にあわせて整備した公共施設や都市基盤が一斉に更新時期を迎えることから、安全・安心に施設等をご利用いただくための取り組みを進める必要があります。
私たちは、良好な状態の財政構造を引き継いできた先達の努力を次につなげるためにも、将来の世代へ大きな負担を残すことは、避けなければなりません。引き続き、行財政改革に果敢に取り組んでいく決意です。

2 第2期基本計画のスタート

平成27年度は、第五次多摩市総合計画第2期基本計画のスタートの年です。この第2期基本計画では、第1期に取り組んだまちづくりの成果を発展的に引き継ぎ、新たな課題にチャレンジしながら、市民参画と協働による市民主体のまちづくりをより一層推進していく決意です。
今後4年間で重点的に取り組む横断的な政策の柱として、「健幸都市(スマートウェルネスシティ)・多摩の創造」、「市民がデザインするまち・多摩の創造」、「発信!未来へつなぐまち・多摩」の3つを設定しました。
これらの取り組みのキーワードは、「コミュニティの醸成」と「幸福感の創造」です。関連する分野を横断する各種事業については、市が積極的に取り組む事業と捉え、全庁一丸となって推進してまいります。

第2 多摩市を取り巻く状況と本市の課題

国の動き

昨年12月に行われた衆議院議員選挙では、首相自らが「アベノミクス解散」と命名していましたが、景気動向については首相ご自身が道半ばと言われています。政権交代からまだ2年間しか経っておらず、選挙の結果は、さらに頑張って欲しいという国民の期待値だったのではないでしょうか。低投票率は、争点が明確でなかったことと、多くの有権者が政治への期待から一歩距離をおいた結果と受け止めています。
一方、「平成27年度税制改正の大綱」では、課題であるデフレ脱却に向け、法人税の減税によって企業収益が上がることで、雇用者の賃上げや税収増につながるとしています。
しかしながら、足もとの景気が悪いままで、賃上げや設備投資が進むかどうかは不安定な状況にあり、国の動きが地域経済や消費者である市民に及ぼす影響は不透明な状況のままです。
また、かねてより私が申し上げてきた、地方自治体の重要な固有財源である法人市民税の一部国税化や、固定資産税(償却資産分)の軽減の動きに対する危機感は解消されていません。
今後も地方自治体の長として、東京都や市長会、市議会とも連携しながら、必要な要請を行ってまいります。
一方で昨年、永年の懸案であった都市計画税の使途について、公園や道路、橋りょうなどの都市施設の更新に活用していく途を全国の自治体に先駆けて切り拓くことができました。

社会保障と税の一体改革

昨年の世相を表す「今年の漢字」に「税」が選ばれました。昨年は消費増税に始まり、消費増税に終わった一年であったような気がします。社会保障と税の一体改革の一環として、増大する社会保障経費の財源とするため、昨年4月に消費税率が引き上げられました。消費税の引き上げは、国民が生涯にわたり、安心して暮らしていくための財源であると認識しています。
しかしながら、消費税率の更なる引き上げは、平成29年4月へ先送りとなったことから、その間の財源について、国にしっかりと確保していただくことが必要です。国の制度改正が先行し、肝心な財源が配分されないまま地方自治体が翻弄されることは、市民への責任を果たすためにも避けなければなりません。市民が安心して暮らせる社会を維持するには、社会保障制度の改革が急務です。国に対しては、そのための財源確保を強く求めてまいります。

東京都の動き

東京都は、昨年12月に「東京都長期ビジョン」を策定し、東京の将来を見据えたグランドデザインを描きました。この長期ビジョンは、「成熟の中で成長を続ける」社会システムを構築するための都政の大方針となるもので、多摩ニュータウンの再生に向け、都営住宅の建て替えや、南多摩尾根幹線道路の整備について、着手することが盛り込まれています。都営住宅の建て替えでは、先行して、諏訪団地の建て替えが動き出し、平成32年度までには、その一部が竣工するとしています。
また、南多摩尾根幹線道路は、「早期に広域的な道路ネットワークを形成することにより、多摩ニュータウンの魅力を向上させる。」としています。本市も時機を逸することなく、東京都と連携し、多摩ニュータウン再生に向けた取り組みを加速させていきます。

超高齢社会への対応

本年1月現在の本市の高齢化率は、25.44%と市民の約4人に一人が65歳以上となっています。高齢化率は、今後も毎年約1ポイントずつ上昇していく見込みです。団塊の世代が一斉に後期高齢者になる平成37年、いわゆる「2025年問題」と言われるように、高齢化率の上昇とあわせて後期高齢者の割合も上昇し、さらに超高齢社会が進展することが見込まれています。
しかし、これをマイナス要因として捉えるのではなく、むしろ本市の場合は、要介護認定率が都内26市の中でも低いことや、健康寿命が都内26市でトップクラスという「元気高齢者」の多い自治体であることが大きな強みであると考えます。
今後、広い知識と豊かな経験を持った元気な高齢者がまちづくりをともに進めるパートナーとなり、地域を支えていただくことで、豊かな市民サービスの展開が期待できます。
一方で、いざ介護が必要となった時に備え、高齢者、さらには、障がい者が可能な限り住み慣れた地域で、医療・介護・福祉サービスの適切な提供を受けることができ、自分らしい暮らしを続けることができるよう「多摩市版地域包括ケアシステム」の構築を進めていくことが重要です。現在、医師会をはじめとした、様ざまな関係機関との情報共有や意見交換を行っています。本市の地域包括ケアの仕組みが全国のモデルとなるよう仕組みを構築し、その情報を発信してまいります。

人口減少社会の到来

日本の人口は、平成20(2008)年をピークに減少に転じ、これから本格的な人口減少社会に突入します。平成20年に1億2,806万人であった人口は、今世紀末の2100年には4,959万人と、わずか100年足らずで、現在の約40%、明治時代の水準まで急減すると推計されています。私たちは「人口減少」という、これまで経験したことのない問題に立ち向かわなければなりません。
昨年の流行語大賞にノミネートもされた「消滅可能性都市」。昨年5月に民間の有識者で構成する「日本創成会議」が、「2040年には全国自治体のうち半数近くの896自治体で若年女性が半減し、消滅する可能性がある。」というショッキングなデータを示し、「少子化問題に全力で取り組まないと大変な事態に見舞われる。」との警鐘が鳴らされました。国からも昨年末に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が示されています。
本市では、一昨年、諏訪2丁目住宅の建替え等により、転入者人口が東京23区・政令指定都市を除く全国の自治体で第3位となりました。国全体が人口減少時代へと突入する中、本市でも人口減少を見据えたまちづくりを進めていく必要がありますが、ただ単に傍観しているのではなく、まちの魅力を高める取り組みを進めることにより、今般の総合計画基本計画の改定においては、人口の推移を横ばい、ないしは、微減にとどめることを目指していきます。

都市基盤や公共施設の老朽化への対応

市域の約6割を占める多摩ニュータウンは、初期入居から40年余が経過し、都市基盤や公共施設の更新時期を一斉に迎えることが喫緊の課題となっています。道路などの都市基盤や各公共施設は、市民の暮らしを支え、公共サービスの拠点ともなる大切な財産です。
しかし、時間の経過とともに、特に公共施設については、求められる機能や、設置当初の目的、役割に変化が生じ、老朽化も急速に進んでいます。本市の都市基盤や公共施設は、他市と比較して質・量ともに高い水準にあることや、人口急増に対応するために集中的な整備を行ってきた経過もあることから、維持管理や改修に要する経費が大きな財政負担となっています。
そのため、道路、橋りょう、下水道などの都市基盤については、維持・更新計画や長寿命化計画などを、建築物については、「ストックマネジメント計画」及び「公共施設の見直し方針と行動プログラム」を策定し、市民の財産を大切に長く使用するという視点に立ち、安全性と利用者満足を確保しながら、最も費用対効果の高い維持管理と再編を進めています。
今後はさらに、都市基盤、公共施設の全体の状況を総合的に把握し、将来の見通しを分析した上で、「公共施設等総合管理計画」を策定し、都市計画税の活用を図りつつ、都市基盤と公共施設の総合的管理を進めてまいります。また、庁舎のあり方についても、検討してまいります。

第3 市政運営における基本的な考え方

1 3つの取り組みの方向性

第五次総合計画第2期基本計画の推進にあたっては、取り組みの方向性として位置づけた3つの柱の考え方について、各々の施策に横断的に取り入れながら、総合的に施策の推進を図っていきます。
1つ目の柱「健幸都市(スマートウェルネスシティ)・多摩の創造」は、身体面の健康だけでなく、それぞれに生きがいを感じ、安全で安心して暮らすことができ、子育て中であっても、障害があっても、子どもから高齢者まで、だれもが幸せを実感できるまちのことです。地域子育て支援拠点の整備や、地域が主体的に行う健康づくりへの支援、多摩市版地域包括ケアシステムの検討などを進めます。
2つ目の柱「市民がデザインするまち・多摩の創造」では、自治基本条例を有する本市としての、これまでの蓄積をしっかりと継承しながら、わかりやすく積極的な情報提供や丁寧な対話、協働をさらに推し進め、多様な主体が支え合う持続可能で質の高いまちづくりに向けて、活動のネットワークづくりや地域防災力の強化などに取り組みます。
3つ目の柱「発信!未来へつなぐまち・多摩」では、古くからの歴史を残し成熟した既存地域とニュータウン地域とが融合した「なつかしくて、あたらしいまち」である本市の魅力を更に高めて情報発信します。多摩ニュータウン再生や聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区の面的整備、様ざまなキャラクターなど地域資源を活用した新たなまちの魅力発信、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックに向けた取り組みなど、民間企業や関係機関とも連携しながら取り組みを進めます。

2 計画を推進するために

総合計画を着実に進めていくためには、それを裏付ける財源が必要です。現在、各自治体とも財政状況は常に厳しく、また、本市の場合は、地方交付税の不交付団体であるが故に、国の制度改正等が市財政に直接影響することに留意する必要があります。
市民の暮らしを守り、新たな行政需要にも対応するためには、行政サービス全般について、引き続きしっかり見直しを行い、国等の制度改正に伴う財政負担にも確実に対応し、税財源や人的資源などを必要なところへ重点的に振り向けていくことが重要です。
本市においては、いわゆる団塊の世代の方々が一時に退職され、国の倍のスピードで高齢化が進むことなどから、社会保障費が増大する一方で、税収が伸びない状況にあります。この厳しい行財政状況に対応していくための方策として、平成24年度から「新生TAMA行財政刷新プログラム」をスタートさせ、行財政改革と公共施設の縮減問題に取り組み、持続可能な未来を目指して、積極的に行財政改革を行っています。基本計画を下支えするための改革に引き続き取り組みながら、第五次多摩市総合計画に掲げた将来都市像の実現に向け、時代のニーズに即した、まちづくりを積極的に推進します。

第4 目指すまちの姿の実現に向けて

平成27年度予算は、第五次総合計画第1期基本計画4年間の取り組みを礎として、第2期の新たな計画のスタートを切る年度にあたるものとして編成しました。誰もが生涯にわたり幸福感をもって暮らすことのできる「健幸都市・多摩の創造」に向けた取り組みをはじめ、基本構想に定めた「目指すまちの姿」の実現に向け、各施策に取り組んでまいります。

1 子育て・子育ちをみんなで支え、子どもたちの明るい声がひびくまち

子育て・子育ち支援についてです。
平成27年度から「子ども・子育て支援新制度」がスタートします。新制度では、質の高い幼児期の教育・保育の総合的な提供、地域の子育て支援の量の拡充や質の向上を進めます。この新たな制度のもと、待機児童対策として、待機児童の中心を占める3歳未満児に対応するため、認可保育所の定員拡大に加え、地域における多様な保育ニーズにきめ細かく対応することを目的とした、地域型保育事業を活用し、利便性の高い駅周辺での小規模保育事業に取り組みます。
子育て家庭への支援として、一ノ宮、永山、唐木田の3児童館と多摩保育園、子育て総合センターの5箇所を地域子育て支援拠点施設として、常設の子育てひろばを開設するとともに、利用者支援専門職員を配置し、乳幼児とその保護者が相互に交流できるようにすることをはじめ、身近な地域で子育ての相談・情報提供を行い、在宅育児家庭の孤立を防ぎ、安心して出産・育児ができる環境を提供します。
また、多様な保育サービスの基盤整備を進めるため、多摩センター地区で病児・病後児保育を開始します。病児保育は市内で初めてとなります。
学童保育については、引き続き委託化を進めるとともに、西落合小学校敷地内に学童クラブを整備し、待機児童対策を図ります。

教育についてです。
少子化、高齢化、国際化、情報化など、子どもたちや教育を取り巻く環境は急激に変化しています。変化の激しい社会のこれからを担う子どもたちに必要とされる力は、「生きる力」です。
持続発展教育・ESDの推進では、地域、大学、NPO、企業等との連携を強化しながら、国際理解教育、環境教育、食育、キャリア教育等と関連付け、持続可能な社会の担い手を育てる教育を全小・中学校で総合的に展開します。
子どもたちの教育環境の整備では、老朽化した教育用パソコンの入れ替えにあたり、平成25年度から試行で導入を行ったタブレット型端末の整備を小学校8校、中学校4校で展開します。
また、一校あたりの配備台数は、国基準の42台の配備をするとともに、ICT機器を効果的に活用し、児童・生徒の生きる力を醸成する、楽しくわかりやすい授業の提供やグローバルな人材育成のため、WEB会議システムを利用した海外の学校との交流等の学習活動を推進します。
学びの環境整備としては、経年劣化した校舎の改修工事を計画的に進めるため、諏訪中学校の大規模改修工事に着手するとともに、南鶴牧小学校、北諏訪小学校、連光寺小学校の実施設計を進めます。多摩第二小学校は、引き続き、校舎の建替工事を進め、平成28年度中には、新たな校舎で授業を開始する予定です。
家庭の問題や、生活指導上の課題に対しては、昨今、深刻なケースや多くの相談が生じていることから、スクールソーシャルワーカーを1名増員し、体制の充実・強化を図ってまいります。

2 みんなが明るく、安心して、いきいきと暮らしているまち

健康・医療についてです。
本市では、昨年の10月に新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく「多摩市新型インフルエンザ等対策行動計画」を策定しました。本行動計画は、これらの感染症が発生した際に、感染拡大を可能な限り抑制し、市民の生命及び健康を守り、市民生活及び経済活動に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的としています。昨年12月には、日野市、稲城市と相互に幅広い連携・協力を行う協定を結びました。
計画の実効性を確保するため、新型インフルエンザ発生時に感染リスクを負う医療従事者が服用する抗インフルエンザ薬の備蓄を図ります。

高齢者福祉についてです。
高齢者が住み慣れた地域で生活を継続できるよう、介護、医療、生活支援やその前提となる介護予防を充実します。新しい地域支援事業として、在宅医療・介護連携を推進し、地域の医療・福祉資源の把握及び活用を図るとともに、専門医による指導の下に、認知症の早期診断、出張サービスを含めた早期対応に向け、認知症初期集中支援チーム、認知症地域支援推進員、かかりつけ医及び専門医療機関のネットワークによる体制を整備します。
生活支援・介護予防の基盤整備に向けた取り組みでは、NPO、民間企業、ボランティアなどの関係主体による協議体を設置し、定期的な情報共有及び連携・協働による取り組みを推進します。

障がい者福祉についてです。
平成26年1月に「障害者の権利に関する条約」が批准されました。この条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定めています。また、条約の批准に向けた国内法の整備の一環として、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が制定され、平成28年4月から施行されることから、講演会の開催を通じて、理解促進・啓発を行うなど、障がいのある人もない人も互いに尊重し合う共生社会の実現に向けた取り組みを推進します。

地域福祉についてです。
平成27年4月からの「生活困窮者自立支援法」の施行により、今後は生活保護に至る前段階での相談や適切な就労支援を行うことが求められることから、生活困窮者に対し、自立に向けた相談・支援や住居確保給付金の支給を行い、自立支援対策の充実を図ります。
誰もが安心して暮らし続けられるまちづくりを目指し、身近な地域の中で日常生活の相談や支援が受けられる仕組みづくりを進めます。
また、昨年発覚し、公表した、生活保護業務の事務懈怠については、現在、全庁を挙げて、その信頼回復に努めているところです。今後二度とこのような事態が発生しないよう、再発防止に万全を期する所存です。
そのための取り組みの一環として、「多摩市生活保護費適正支給に向けた第三者検討委員会」から再発防止策の一つとして提案された、外部の専門家による本市の生活保護業務への指導・支援の仕組み(外部スーパービジョンシステム)を試行的に導入し、より適正な生活保護業務の執行を目指します。

3 みんなで楽しみながら地域づくりを進めるまち

市民活動と学び、コミュニティについてです。
より豊かに安全で暮らしやすい地域をつくっていくためには、市民が主体となった地域づくりを進めるとともに、地域を支える人材づくりや、様ざまな担い手による連携・協働の仕組みづくりが必要です。その一環として、市民の皆さんが、地域課題を自らの問題として共有し、互いに支え合いながら課題解決に取り組み、まちづくりを推進する、その担い手となる人材の発掘・養成を図るため、「わがまち学習講座事業」の充実を図ります。
また、地域コミュニティを育む拠点として、(仮称)和田・東寺方コミュニティセンターの建設準備を着実に進めていきます。
旧南豊ケ丘小学校の跡地は、日テレ・ベレーザをはじめとする選手たちが活動する場として生まれ変わるとともに、市民ワークショップの意見等も踏まえ、豊ヶ丘地域の皆さん、また、市民の皆さん全体のスポーツや健康を推進する施設として活用します。

平和についてです。
今年は、戦後70年の節目を迎えます。戦後世代が多くを占める現在において、戦争の悲惨さと平和を尊ぶ心を次の世代に継承することは、世界で初めて戦争で被爆し、多くの人命を一瞬に奪われた国である日本の使命であると考えます。このことから、広島市から寄贈される被爆アオギリを、多摩中央公園へ植樹し、悲惨な戦争がもたらしたものを忘れずに、全ての人々が平和を享受できる世界になることを祈念します。
また、引き続き、子ども広島派遣を実施します。今回は現地で広島や他府県の子どもたちとの交流を行うとともに、これまで実施していた子どもたちによる報告会では、その成果を踏まえ、内容を一歩進め、フォーラム形式で、次世代の若い人達が、平和のために何ができるかを発信していきます。

4 働き、学び、遊び みんなが活気と魅力を感じるまち

産業振興、雇用、観光についてです。
地域経済を取り巻く環境は、少子化・高齢化の進展、規制緩和、経済のグローバル化等により大きく変化し、駅周辺の拠点地区も他地域の都市との競争が激しくなっています。これらの影響を受け、事業者にとって厳しい経営環境が続いています。
本市は、住むだけにとどまらず、働き、学び、遊ぶという視点に立ち、商業・業務・文化などの機能を兼ね備えた多機能複合型都市を目指しています。
市内の二大拠点である聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区および多摩センター地区の活性化を進めるため、映画「耳をすませば」や「ハローキティ」などの地域資源を活用した取り組みを通して、新しいまちの魅力を創造し、その情報を広く国内外に発信していきます。
また、聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区の活性化のため、市、市民および関係機関等との協議・連携により、せいせき多摩川花火大会の新生復活やイベント等によるまちのにぎわい空間演出と誘客推進に取り組みます。
企業誘致については、引き続き、奨励制度を実施することで、多摩ニュータウン内に企業の立地を促進し、法人市民税、固定資産税などの税収確保、市内雇用の拡大を図ります。
都市の農業は、産地と消費者が近接しているという立地条件を活かし、新鮮で安全な農産物の供給に加え、防災機能、交流・レクリエーション、癒し、教育・学習・体験の場の提供、自然環境保全機能、ヒートアイランド現象の緩和など、多面的な機能があります。一方、農業者の高齢化や後継者等の担い手不足による農地面積の減少などの課題も抱えています。これら多面的機能を一層発揮するためにも、援農ボランティアなど農業者を支える仕組みづくりに取り組み、担い手となる農業者の減少に歯止めをかけます。

5 いつまでもみんなが住み続けられる安全で快適なまち

安全・安心についてです。
本市では、一昨年に「多摩市地域防災計画」の全面的な修正を行いました。この計画では、東日本大震災以降の計画停電、帰宅困難者への対応、被災地への職員派遣から得た教訓、女性や災害時要援護者等の視点を踏まえるとともに、東京都が公表した被害想定に基づく見直しを行いました。
高い確率で発生すると言われている首都直下型地震や、近年、頻繁に発生している風水害など、様ざまな災害に対応し、本市の被害を最小限に抑える必要があります。
このため、日ごろの予防対策、災害発生時の迅速な応急・復旧対策を講じ、被害想定に対応した食糧などの備蓄量を確保します。
また、東日本大震災時の教訓から、災害弱者への備えが重要です。言葉が通じない方などとの円滑なコミュニケーションを支援するための、コミュニケーションボードを避難所等に配備します。地域防災力の向上の面では、地域防災の最前線で活躍する消防団の活動を支援・充実する必要があります。消防団指揮車とポンプ車にAEDを配備し、災害時の人命救助体制の充実を図るほか、避難所での飲料水確保のための応急防災セット(スタンドパイプ)の配備、受令機のアナログからデジタル化へ機器の更新を行うなど、安全・安心のまちづくりを進めます。

都市づくりについてです。
多摩ニュータウンの初期入居地区である、諏訪・永山地区で都営住宅建て替えが動き出そうとしています。多摩ニュータウンでは、市民の高齢化に加え、住宅設備や高い水準で整備された都市基盤施設の老朽化が進みつつあります。こうした課題に対応するため、駅を中心とした多様な都市機能の集積や、立地に応じた多様な住機能の提供等、具体的な取り組みを盛り込んだ「多摩ニュータウン再生方針」を策定します。
聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区については、既成市街地における都市基盤整備を検討するため、面的整備事業の必要性及び実現性についての基礎的な調査を行います。
また、まちづくり、福祉、環境など関連する各政策分野との連携を図りながら、住宅施策を総合的かつ計画的に推進するための基本となる計画である、住宅マスタープランの改定を行います。
駅前駐輪場については、利用者負担やまちの環境美化の観点から、聖蹟桜ヶ丘駅3箇所、永山駅2箇所を有料化します。
下水道事業特別会計においては、平成29年4月からの公営企業会計制度の移行に向けて、資産台帳を整理するとともに、固定資産の評価結果を電算システムで管理するための整備を進めます。

6 人・自然・地球 みんなで環境を大切にするまち

環境についてです。
地球温暖化対策では、省エネルギーと創エネルギーの取り組みを継続していくことにより低炭素・省エネルギー社会への転換を図ります。
省エネルギーの取り組みでは、楽しみながら無理のない省エネと地域経済の活性化にも寄与する「クールシェア事業」の取り組みや、街路灯のLED化を引き続き行い、節電の促進を図ります。
創エネルギーの取り組みでは、引き続き、多様な太陽光発電設備の設置手法に対し補助等を行うことにより再生可能エネルギーの導入促進を図ります。
みどりのルネッサンスでは、今年度までの3年間の取り組みについて、広く市民の皆さんへの周知や、運動を幅広く展開していくため、みどりのルネッサンスの行動開始のキックオフに向けたシンポジウムを開催します。さらに、継続的な取り組みとして、地元自治会や管理組合の方々などとの協働により、公園緑地の樹木点検やワークショップ等を実施し、樹木の剪定・伐採を行いながら、地域のみどりの質の向上を進めていきます。
豊かなみどりは本市の魅力のひとつですが、整備後の長い年月の経過から公園施設の老朽化が進み、計画的な更新が必要となっています。公園緑地の持つ様ざまな機能を今後も保つために、今後3年間で公園長寿命化計画を策定していきます。また、公園施設の現状を把握するため施設のデータを収集し、長寿命化対策の方向性を定める健全度調査に向けた予備調査を実施します。
多くの公園施設の更新には、大きな財政負担が必要となります。本市が永年国に働きかけを続けてきた「都市計画税の使途拡大」の要望が形になり、都市施設の更新に、都市計画税を活用する途が開かれました。永山北公園に引き続き、永山南公園の改修工事等に活用するとともに、今後、都市施設の更新財源としての検討を進めます。
ごみの減量化では、これまでそのほとんどが焼却処分されている草枝ごみの資源化を図り、環境負荷の少ない循環型社会の実現を目指します。多摩清掃工場に直接搬入される草枝ごみの処理手数料を免除対象から除外することで資源化へ誘導するとともに、エコプラザ多摩の一層の活用を図ります。また、発生場所での自区内処理を推進するため、枝をチップ化する「ガーデンシュレッダー」や、草や葉を腐葉土として活用できる「簡易たい肥器」の貸し出しなどを行い、「みどりのリサイクル」をさらに進めます。

第5 むすびに

以上、申し述べてきましたとおり、平成27年度は、第五次総合計画第2期基本計画のスタートの年です。
未来への希望がつながる種まきとして、しっかりと将来を見据え、今、手を打つべき課題には時期を逸することなく取り組み、持続可能な都市経営の確立と活力ある魅力的なまちづくりを実現することが肝要であり、私の使命でもあります。
今年は戦後70年の年でもあり、先に述べたように、戦争を知らない世代に戦争の悲惨さを受け継いでいく平和事業を行ってまいりますが、民族、宗教などを背景にしたものであっても、人道を無視し、人間の尊厳をないがしろにしたテロ行為は断じて許されるものではありません。そして、報復と憎しみの連鎖からは、何ものも生まれません。どのような理由にせよ、尊い命を犠牲にする紛争やテロそして戦争は絶対にあってはなりません。差別や格差、貧困社会を拡大させないことこそ最優先課題と考えます。また、民族や人権をあげつらうヘイトスピーチも看過できません。2020年に東京で迎えるオリンピック・パラリンピックがスポーツを通した真の平和の祭典として全世界の皆さんに安心して参加いただくためにも、このような想いを大切に多摩市としてあらゆる機会をとらえ国際交流を進め、歓迎の準備を市民の皆さんと共に進めてまいります。
諏訪中央病院の名誉院長であり医師の鎌田實さんは「1%誰かのために、生きると人生が変わる」と最近出版された「1%の力」で書かれています。私は、市長に就任してから、この間、様ざまな場面で「市民主権」の主人公は市民であると訴えてまいりました。一人ひとりの1%の力、私も大いに期待したいと考えています。鎌田さんは「みんなが1%、生き方を変えれば、僕たちの社会も変わっていく」と述べ「1%の力を信じよう」と呼びかけています。
今後も市民の皆さんの声に真摯に耳を傾けながら、「市民主体のまちづくりの推進」の実践、「持続可能な質の高い行財政運営」の構築を基本に、市政運営に邁進し、危機感や目指すべき方向を議員の皆さんとも共有しながら、市民一人ひとりが幸せを実感できる、「笑顔」があふれる多摩市、誰もが住んでいることを誇りに思える多摩市を、14万7千人の市民の皆さん、市議会の皆さんと共に手を携え、実現してまいります。「みんなが1%、生き方を変えるだけで個人も社会も幸福になる」ことを強く願い、私も行動していきます。

最後に重ねて、市議会並びに市民の皆さんのご理解とご協力を心からお願い申し上げます。

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