所信表明(令和8年6月)
令和8年第2回多摩市議会定例会市長所信表明(阿部市長)
本文書は筆記録ではありませんので、当日、市長が述べた文言と若干の相違点があります。
令和8(2026)年第2回多摩市議会定例会の開催にあたり、私の市政運営に対する所信を申し述べ、主権者である市民の皆さんと市議会の皆さんのご理解とご協力を賜りたいと存じます。
第1 はじめに
この4月に行われた多摩市長選挙で多くの市民の皆さんからの信任をいただき、引き続き市長としての重責を担わせていただくこととなりました。
私は、市民の皆さんからこれまでの市政運営などの実績を率直に評価いただいたものと受け止めていますが、二元代表制のもと、その都度、選挙の洗礼を受け、常に初心に戻った緊張感を持ち、選挙で掲げた公約等の実現に向け、粉骨砕身、全力で走り抜く決意です。
1 基本的な考え方・姿勢
新たに市政運営に臨むに当たり、私の基本的な考え方、姿勢については初めて市長として就任した当時と変わっていません。
第一 社会で弱い立場にある存在にしっかりと目を向けること
第二 公正で自由な社会の実現に貢献すること
第三 持続可能である市政運営のモデルを模索すること
5期目に臨むに当たっても、改めて初心に立ち返り、しっかりと貫いていきます。
2 緊迫する世界情勢と日本
私の現在の一番の懸念は、米国トランプ大統領とイスラエルのネタニヤフ首相が引き起こしたイランの政権転覆を目指した宣戦布告なき戦争の結末です。ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ、レバノンへの攻撃についても停戦への道のりは全く見えていません。
施政方針演説でも申し上げましたが、一部の指導者による軍事力や暴力で主権国家として存在している国の首脳を殺害あるいは拉致し、政権転覆を謀ろうとする行為は、専制君主・帝国主義的手法であり、二度にわたる世界大戦の反省から生まれた多国間主義に基づく国際協調を前提とする近代社会の世界観とは全く相容れるものではありません。
米国、イスラエル両政権によるイラン攻撃は国際社会に大きな亀裂を生み、戦争の長期化は、中東情勢を不安定化させ、国際社会はエネルギー危機に翻弄されています。核超大国による原油、レアアースなどの資源争奪戦は更に複雑化・激化し、緊張度を増していますが、結果として、ウクライナ侵攻による経済制裁は事実上崩壊し、ロシアは危機を脱し、ホルムズ海峡通過問題では米国は中国の力を借りざるを得ない状況に追い込まれています。
日本をはじめ、原油、液化天然ガス等の資源を輸入に頼っているアジア・太平洋の多くの国々は、パキスタン政府をはじめ仲介の労をとっている国々に頼るほかない事態となっています。
そもそもイスラエルは、核兵器不拡散条約(NPT)を批准していませんし、核開発を巡る国際的な査察も受けていません。イランは条約に加盟していますが、イスラエルは一貫して非加盟のままです。イスラエルは、この間、中東での軍事的優位性を維持するため、同国が敵対的国家とみなした国が原子力発電でのウラン濃縮など核開発への片鱗につながる行為はことごとく軍事的に破壊してきました。
一方で、我が国は、先の大戦の深い反省の上に「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会の努力に貢献する」ことを謳った平和憲法を持つ国として、また中東各国、イランとも長く友好関係を築いてきた国として、改めて国際協調を前提とした平和外交に徹し、停戦に向けリーダーシップを発揮すべきと強く訴えます。
イランでの戦争が早期に収束しない限り、世界はエネルギー危機、経済・物流危機に陥ることは必至です。特にあらゆる原材料等を輸入に頼っている我が国として円安傾向とのダブルパンチで市民の暮らしが厳しい事態に追い込まれないようアンテナを高く掲げ、全方位で対応していかなければなりません。
既に東京都市長会では、中東情勢の長期化に対応し、市場経済の動向、入札等の現状把握のため緊急アンケートを実施するなど、26市の情報共有を密にしており、市長会として国や東京都に対して緊急要請を行っていきます。本市としても更なる適宜適切な対応を取っていきます。
第2 今後4年間の挑戦
私は、今回の選挙で「命を守り、地域を守り、仕事を守る」ことを4年間の基本目標として掲げました。地球沸騰化、震災・暴風雨などの災害、中東情勢や物価高騰など、昨今の社会情勢は私たちの生活に大きな影響を与えています。こうした中、市民の皆さん一人ひとりの命を守り、誰もが地域で安心して暮らし、働き続けられる環境を守り、かつ創造していくことが特に重要と考えています。
現在、市の最上位計画である「第六次多摩市総合計画」基本計画の改定を進めています。将来都市像として定めた「つながり 支え 認め合い いきいきと かがやけるまち 多摩」の実現に向け、今後4年間、市民の皆さんをはじめ、議会の皆さんと共に、この難局を乗り越え、「命を守り、地域を守り、仕事を守る」ため、大胆に挑戦を進めてまいります。また、ニュータウン再生の取組や、聖蹟桜ヶ丘・多摩センターを中心として、駅周辺地域の活性化をはじめ、新たな需要に応える取組を展開している国・東京都ともしっかりと連携し着実に取組を進めてまいります。
1 「命」を守る
(1) 気候危機・防災対策の推進
気候危機は、もはや「地球温暖化」の段階ではなく「地球沸騰化」の時代に突入しています。3年連続で「観測史上最も暑い夏」を記録するなど異常気象が常態化し、生態系への影響も深刻化しています。私は市民の皆さんの「命」を守ることを最優先に取り組みます。
本市では、総合計画において「環境との共生」を重点テーマの一つに位置付け、取組を推進してきました。2030年のカーボンハーフ及びSDGsの達成、2050年までのCO2排出量実質ゼロに向け、一段と取組を加速します。
具体的には、気候変動の原因を抑える「緩和策」として、市域全体の省エネ推進・再エネ導入の最大化に取り組みます。令和6(2024)年度に都内で初めて国の「重点対策加速化事業」に選定された自治体として、公共施設への太陽光発電設備の設置、市民や事業者の皆さんを対象とした創エネルギー・省エネルギー機器の導入補助等を推進します。また、資源循環社会の構築に向け、引き続き、市民や事業者の皆さんとも連携して使い捨てプラスチック削減の推進等に取り組みます。
また、「多摩市気候市民会議」、「(仮称)生物多様性フェスティバル」、「TAMAサスティナブル・アワード」による表彰の取組や小中学校への環境出前授業等を通じ、サステナブルな行動につなげるための啓発や人材育成、様々な主体との連携・協働を進めます。
今年4月に、気象庁は最高気温が40℃以上の日の名称を「酷暑日」としました。酷暑が日常化する中、学校・家庭・地域で「命」を守ることを第一に、空調・断熱施策や熱中症対策を進めます。
今年度は、総合体育館の第2スポーツホールと市立小学校の体育館へ空調設備の設置等により熱中症リスクの低減を図ります。また、「熱中症特別警戒アラート」の発令に伴い、外出時に暑さを避けるための一時的な休息場所として一昨年から指定してきた「クーリングシェルター」の拡充を進めます。
令和7(2025)年度には、東京都に先駆けて市独自に低所得世帯等へのエアコン購入費助成を実施しました。今後も、熱中症を予防するための周知啓発とともに、国や東京都とも連携の上、酷暑対策を推進します。
「気候危機対策」と併せて、激甚化する災害から市民の「命」を守るため、「防災対策」を推進します。今年3月で東日本大震災の発生から15年を迎えました。この間も大規模な地震が頻発し、首都直下地震や富士山の大噴火への備えが急務です。
台風や集中豪雨等による風水害も多く発生しています。令和元(2019)年の台風19号では多摩川が氾濫危険水位まで増水するなどの被害も発生しました。治水対策・防災対策を更に強化し「災害時に強いまち・防災都市多摩」の実現を目指します。
市役所本庁舎建替えに向けた基本設計が本年度から始まりました。災害時の防災指令拠点として、より市民の皆さんの安心・安全を守ることができる新庁舎の整備を進めます。
また、昨年8月に新たな被害想定を踏まえ更新した「多摩市地域防災計画」に基づき、多摩市災害対策本部の資機材の老朽化対策、ドローン利活用の環境整備、要配慮者対策の強化等を進めます。災害時に大きな課題となるトイレについては、一昨年、お試し用の携帯用トイレの全戸配布により、携帯トイレの有効性と備蓄の重要性を啓発しました。更なるトイレ環境整備の補完策として「自走式水洗トイレカー」の導入を検討します。
地域防災力の要である消防団は、設備の老朽化や団員不足などの課題に直面しています。全10個分団のポンプ車の更新を進めるとともに、若い世代の入団促進に向けた周知啓発等を積極的に進めます。
また、自主防災組織の支援に加え、遊びや楽しみの要素を入れた「防災キャンプ」の実施、日常生活の中で進めるフェーズフリー防災の周知等を通じ、防災に関心があるが行動を起こしていない、いわゆる「防災ライト層」の方々への働きかけを行い、より多くの方の防災意識の向上や行動変容につなげていきます。
(2) 地域医療・健幸まちづくりの推進
市民の皆さんの「命」を守るためには、しっかりとした地域医療体制を築いていくことが重要です。今年1月、東京都に間に入っていただきながら、本市及び学校法人日本医科大学の両者で会談を行い、永山駅周辺での日本医科大学多摩永山病院の建替えに向けた協議を再開しました。
同病院は、約140万人が居住する多摩市・八王子市・町田市・日野市・稲城市の南多摩保健医療圏において、救命救急を担う三次救急医療機関等として、市民の命と健康を守り続けている、地域に必要不可欠な存在となっています。引き続き、東京都の協力をいただきながら、協議を丁寧に進め、建替えに向けた道筋を描いていきます。
身近な地域で安心して医療を受けられる体制を確保することも喫緊の課題です。多摩市医師会等と連携し、住み慣れた地域で安心して医療を受けられるよう、医療提供体制の確保を図ります。また、医療・介護・福祉の連携を深め、単身高齢者を中心とする「孤立・孤独対策」を通じ、地域で安心して暮らせるまちづくりを推進します。
今年度は、「多摩市版地域包括ケアシステム」の更なる推進に向け、地域の窓口である地域包括支援センターの人員を拡充し、「高齢者見守り相談窓口」による高齢者支援・地域の見守り機能を強化します。また、年末年始の診療体制について、「医療との連携」により他院からの応援医師や看護師の派遣が機動的に行えるよう、新たな診療体制の仕組みを整備します。
さらに、新たな感染症対策として「多摩市新型インフルエンザ等対策行動計画」の見直しを進めます。新型コロナウイルス感染症との闘いで積み重ねた知見や経験を踏まえ、幅広い感染症による危機対応に備えます。今後、南多摩保健所をはじめとする関係機関と一体的に対策を講じる体制づくりを進めるとともに、感染症対策に必要な物資の確保を進めます。
市民一人ひとりの状況に応じた支援も強化します。ご高齢の方の「聞こえ」をサポートするため、介護予防リーダーと連携し、加齢性難聴のリスクを啓発するとともに、補聴器の補助の導入に向けた検討を進めます。また、医療的ケアが必要なお子さんとその家族が、保健・医療・福祉等の連携した支援が受けられるよう医療的ケア児等コーディネーターを配置します。
誰もが安心して移動できるまちに向け、自宅近くからスーパー等への身近な移動を支援する内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」による「自動走行モビリティ」の実証実験など、多様な移動手段の確保に取り組みます。
本市では、私が市長に就任してから10年以上もの間、「健幸まちづくり」を推進してきました。高齢化率が約3割となる中でも、本市の65歳健康寿命(要支援1)は、令和6(2024)年も男女ともに都内1位を獲得するなど都内トップクラスを維持しています。
今後とも、市民の皆さんが「自然に歩き、人とつながる」健幸な習慣を日常に取り入れることで、病気やフレイル予防だけでなく、コミュニティ機能を強化し、緊急時も支え合える「命」を守るまちづくりを推進します。
昨年10月にリリースしたアプリを活用した健幸ポイント事業「TAMAるんるん♪」は順調に登録者数を伸ばしており、令和8(2026)年4月末時点で2,500人を超えています。より多くの方に気軽に楽しくご利用いただけるよう、「健幸!ワーク宣言企業」の取組とも連携しながら、ポイント付与対象のイベント等の充実に取り組みます。
また、令和7(2025)年4月には「みんなの笑顔が広がる歯と口の健康を推進する条例」を施行しました。26市初の「妊婦・パートナー歯科健診」の実施をはじめ、条例の理念を踏まえ、歯と口の健康づくりに関する取組を推進し、引き続き市民の皆さんの健幸的な暮らしの実現を支えます。
(3) ジェンダー平等・誰一人取り残さないまちづくりの推進
誰もが自然体で生きられる社会の基盤として、ジェンダー平等・誰一人取り残さないまちづくりを推進します。
これまで、「子ども・若者の権利を保障し支援と活躍を推進する条例」、「女と男の平等参画を推進する条例」、パートナーシップ制度、「障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例」「手話言語条例」等を整備し、権利や参画機会の保障、相談支援の充実等の取組を推進してきました。
今後、これらの条例や制度に根ざした具体的な取組を進め、子ども、ひとり親、障がいのある方、困難を抱える女性、性的指向・性自認に関する悩みや課題を抱えている当事者など、誰もが安心して住めるまちづくりを推進します。
本市では、コロナ禍以降、外国人人口が増加傾向にあり、令和8(2026)年1月時点で4,000人を超えています。国籍も多様化し、在留資格別では「永住者」が最も多く、長期滞在が見込まれる外国人住民も増加しています。
令和7(2025)年3月に策定した「多文化共生推進基本方針」に基づき、国籍などの異なる市民が互いに違いを認め合い、地域社会の一員として共に安心して暮らせるよう、日本語を学べる場の充実など多文化共生のまちづくりを進めます。
昨年5月に、アイスランドの首都レイキャビク市のヘイダ市長が本市を訪れ、対談する機会がありました。アイスランドは、世界経済フォーラムが毎年公表するジェンダー・ギャップ指数が16年連続1位となるなど「世界で最もジェンダー平等に近い国」です。
本年は、アイスランドのレイキャビク市と姉妹都市の提携の締結に向け踏み出す年となります。今後、様々な交流事業を通じて先進事例を学び、ジェンダー平等の実現と女性活躍推進に向けた取組を進めます。そして、差別のない、誰もが自分らしくいられることが「当たり前」となる社会をつくります。
2 「地域」を守る
(1) 「こどもまんなか」を更に推進
本市では、0歳から39歳までの人口が直近3年間で約1,600人転入超過するとともに、昨年末に発表されたビジネス誌の「子育てしやすい」自治体ランキングで東京圏5位にランクインするなど「子育て世代に選ばれるまち」となっています。
今後とも魅力的な「地域」であり続けるためにも、「こどもまんなか」を更に推進し、妊娠から出産、乳幼児、子ども・若者そして保護者を孤立させないまち、子育て世代に選ばれるまち「子育てするなら多摩市」を目指します。
具体的には、全国に先駆けて令和6(2024)年度から開始し、令和7(2025)年度に実施施設を拡充した幼稚園・保育園等での「こども誰でも通園事業」を更に推進します。
また、教育委員会や関係者と連携・協力の上、学童クラブの校内化と、市内全小学校における放課後子ども教室の週5日実施を進めます。さらに、学校での始業前の安全・安心な居場所づくりとして「朝の見守り」活動の実現に向け、検討を開始します。
また、国や東京都、UR都市機構等との連携により既存ストックを活用し、周辺相場よりも低廉な価格の若者・子育て世代向け住宅「アフォーダブル住宅」の供給が市内で進むよう取り組みます。
増加傾向にある不登校や学校へ行きづらい子どもたちを応援するため、令和5(2023)年度に仮想空間を活用した「多摩市フレキシスクールOnline」を導入し、令和6(2024)年度にはチャレンジクラス「あたごSpace」を東愛宕中学校内に開設しました。
こうした不登校の子どもたちの居場所として、来年度には、諏訪複合教育施設に「学びの多様化学校」を開設予定です。さらに、同施設ではひまわり教室午後クラスの新設など専門療育の拡充を図るための「発達支援センター」を同時に開設し、福祉と教育部門が一体となって、子どもたち一人ひとりに寄り添った支援をより一層充実します。
また、子どもたちに安全で「おいしい学校給食」を安定して提供するため、学校給食センターの建替整備に取り組みます。建替えについては、今年3月に策定した「多摩市学校給食センター建替整備基本計画」に基づき、従来通り直営を堅持しながら、民間事業者が持つ経験やノウハウを活かすためPFI事業として実施し、令和14(2032)年度2学期からの給食の提供開始を目指します。
学校給食では、アイスランドの伝統料理にちなんだ給食や地元産野菜を活用した給食の提供等を行ってきました。今後とも、多摩市でしか食べられない「おいしい給食」を子どもたちに提供していきます。
昨年度から、休日における中学校部活動の地域展開を開始しました。市内スポーツ団体・文化芸術団体にご協力いただきながら、子どもたちのスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会を継続・確保するとともに、教員の働き方改革を踏まえ、家庭・地域の力を結集し、より持続可能な部活動運営を実現します。今後も、子どもたちが地域とのつながりを深め、更に子どもたちを主役とした地域づくりに取り組みます。
また、今後も深刻化する少子化の進行を見据え、学校と地域のあり方を意識しながら、子どもたちにとって望ましい教育環境を維持していくための新しい学校づくりに向けた基本方針、基本計画づくりに取り組みます。
世界情勢が緊迫化し、戦争や核兵器の脅威が現実のものとなる中、「戦争の悲惨さと平和の尊さ」を次世代へ確実に伝えていくことの重要性が増しています。引き続き、「子ども被爆地派遣事業」や「平和展」を通じて戦争の惨禍や被爆の実相に触れる機会を提供し、平和を大切にするまちづくりを進めます。
(2) 市民自治によるまちづくりの推進
本市では、これまで様々な分野において、無作為抽出による呼びかけを通じた市民ワークショップの開催等を積み重ねてきました。将来的な人口減少も見据えて市政運営を行っていく上では、これまで以上に多様な意見を反映していくことが重要です。
市民の暮らしに最も近い基礎自治体として、これからも市民の声や力を最大限活かした市民主権のまちを目指すとともに、「多摩市子どもみらい会議」等を通じ、次代を担う子どもたちからの提案・意見表明も市政に反映していきます。
一方、地域や学校を基盤として活動してきた方々からは、高齢化の進行、働き方の変化、価値観の多様化等による「担い手不足」の声もいただいています。「協創」の実現に向けモデルエリアでエリアミーティングを重ねる中、中間支援団体による伴走支援や地域協創市民活動事業補助金(ツナたま補助金)による経済的な支援等を通じ、新たな活動に踏み出す若い世代の方々も見られます。新たな地域人材の掘り起こしと既存の組織・枠組みとの間で、どのような連携・協力体制が構築できるか検討を進めます。
また、入庁1・2年目職員を対象とする研修制度である「協創サポーター制度」を通じ、地域の多様な活動を応援しつつ、地域のこと、自分のことを知り、自身の業務やより良い地域づくりに活かしていける職員の育成など、様々な取組を通じて、多世代にわたる参画、多分野における協働を創出し、市民自治によるまちづくりを更に推進します。
市民の皆さん、議会そして行政が、それぞれの立場からでき得る行動をとり、対応してきた旧統一教会による土地取得問題については、東京高等裁判所が改めて解散を命じたことから、清算手続が進められています。本市として、市民の皆さんの不安の解消に向けて、引き続き関係機関と連携の上、清算手続の動向を注視し、適切に対応してまいります。
3 「仕事」を守る
(1) 地元企業・都市農業・公共交通の推進
地元企業、都市農業、公共交通といった事業活動を支援することで、地元企業が潤い、農業が息づき、誰もが自由に移動できる環境を整え、私たちの暮らしの基盤である「仕事」を守ります。
いざ災害に直面した際、最も早く対応いただくのは地元企業の皆さんです。雇用情勢の変化を踏まえ、本年3月に一部改正を行った多摩市公契約条例に基づき、令和9(2027)年4月から条例対象の契約に係る年齢制限を撤廃します。また、物価高騰・労務単価の上昇に直面する中でも不安なく契約できるよう適正価格での契約発注の取組を進めます。
また、公共サービスの適切な維持に向け、地元事業者の力を最大限に生かし、そのノウハウ・創意工夫が生かせる発注の仕組みを検討します。
都市農業についても市内における重要な産業であり、次代へと引き継ぐレガシーです。市内農家への支援や後継者・担い手の確保に引き続き力を入れるとともに、農業ウォッチングラリー、販売促進のためのPR等を通じ、市内産野菜の認知度向上及び販路拡大に取り組みます。
「(仮称)連光寺六丁目農業公園」は、より気軽に農体験や収穫体験に参加でき、誰もが立ち寄れ、農に触れ身近に感じていただける場として運営し、収穫物の市内販売等も行います。
近年、様々な分野で人手不足が顕在化しています。人材確保と市内企業のPRに向けた合同企業説明会の開催等を通じ、事業者の皆さんを支援します。運転手不足が深刻化する公共交通バスについて、今年1月に、都内初の大型バス自動運転の実証運行を行いました。更に実証運行を進め、令和9(2027)年度において特定の条件下でシステムが全て運転する「レベル4」運行の実現を目指します。
また、かねてより私が実現を夢見ている「空飛ぶクルマ」も、もはや夢物語ではありません。昨年、東京都が決定した「空飛ぶクルマ実装プロジェクト」の実施事業者の中には市内事業者も含まれています。もちろん簡単な道のりではありませんが、実現に向け大きな一歩です。事業エリアには多摩川の上空など河川エリアも予定されており、本市として積極的に連携・協力していきます。
(2) 更なるまちの活性化
本市では、総合計画において「活力・にぎわいの創出」を重点テーマの一つに位置付け、取組を推進してきました。更なるまちの活性化を進め、働きやすく活気と魅力あふれるまちを目指します。
多摩ニュータウンの事業着手から約60年が経過し、私たちのまちは未来へ向けたリニューアルが必要な状況です。現在策定中の「多摩市立地適正化計画」では、聖蹟桜ヶ丘・多摩センター・永山駅を「都市拠点」、諏訪・永山の南多摩尾根幹線沿道を「広域型複合拠点」と位置付けており、周辺エリアの活性化とともに、ニュータウン再生、ウォーカブルなまちづくり、緑豊かな遊歩道や公園活用など次世代へつなぐまちづくりを進めていきます。
聖蹟桜ヶ丘駅周辺では、「かわまちづくり」の取組が令和6(2024)年度「かわまち大賞」を受賞し、国土交通大臣から表彰を受けました。「せいせきカワマチ」を運営管理し、昨年度都市再生推進法人の指定を受けた一般社団法人聖蹟桜ヶ丘エリアマネジメントでは、このエリアの更なる価値向上に向け、官民連携の「エリアプラットフォーム準備会」を立ち上げ、地域でつくる「未来ビジョン」の策定を目指しており、市としてこれを支援します。今後とも、地域の事業者や商店と連携し、アニメなどの地域資源も活かしながら、更なる魅力向上を図ります。
多摩センター駅周辺は、ハローキティにあえる街 多摩センターの取組や、パルテノン多摩のリニューアルオープン、中央図書館の開館、Park-PFIによる多摩中央公園の整備等が進んでいます。今年度は、多摩センター駅北側の乞田川沿道エリアの活性化に向け、サンリオピューロランドとコラボレーションしたライトアップも実施します。地域の事業者との連携を強め、まち全体がテーマパークになるエンターテインメントな多摩センターを目指します。
永山駅周辺では、公的賃貸住宅の建替えが進行しています。昨年は、諏訪2丁目のUR賃貸住宅の新規入居が始まり、UR永山団地では旧東永山小学校跡地で建設工事が進んでいます。今後、UR諏訪団地の後工区の着手も予定され、若者世代の市内流入が期待されます。こうした動きを好機と捉え、本市としても、団地再生事業に協力して取り組みます。昨年実施したオープンハウスでいただいた意見等を踏まえ、「病院」を一つの都市機能として立地適正化計画の「誘導施設」に位置付けること等も検討し、引き続き、諏訪・永山地区のまちづくりを関係者と連携して進めていきます。
また、諏訪・永山の南多摩尾根幹線北側沿道では、本線4車線化や公的賃貸住宅建替えを契機に、広域アクセス性を活かしたまちづくりを進めます。にぎわい・やすらぎ・雇用を生み出す場として産業・業務、商業機能等の誘導とともに、子育て世代を中心とした新たな来街者や定住者を呼び込みます。こうした取組が地区全体の関係人口を増やし、多摩ニュータウン全体の活性化につながるよう、引き続き東京都やUR都市機構と連携して検討を深めます。
また、今年3月に策定した「多摩市観光まちづくり基本方針」に基づき、多摩市観光まちづくり交流協議会による「来訪・消費・再訪」を目的とした「アイスランド風まちバル」など更なる取組を推進します。
ホテルなどの宿泊施設の立地促進に向け、昨年度に「多摩市企業立地促進条例」の改正を行い、宿泊施設への優遇措置を拡充しており、宿泊施設の誘致に向けたPR等を行います。
スポーツを通じたまちづくりについて、東京ヴェルディとは平成24(2012)年に協定を交わし、子どもサッカー体験事業など様々な取組を実施してきました。J1リーグに再度復帰してから、多摩市ヴェルディ応援デーの集客をはじめ、市民を巻き込む力は圧倒的に高まっています。令和6(2024)年度からは、読売巨人軍・多摩センター地区連絡協議会との協働で、ジャイアンツ戦パブリックビューイングを開催し、多くのファンによりまちに熱気が生まれました。今後、連携を一層深め、更なるにぎわいづくりを進めます。スケートボード、ロードバイク等のスポーツ需要への対応も、市民の皆さんの声も伺いながら検討してまいります。
さらに、子ども・若者から高齢者・障がいのある方まで、誰もがアート・文化に育まれるまちに向け、令和7(2025)年度に策定した「みんなの文化芸術振興プラン」に基づく取組の推進とともに、市民、サンリオピューロランド、日本アニメーション、パルテノン多摩をはじめ、多くの関係者と共に、更なるまちの活性化に向けた取組を進めます。
4 DX・市役所改革の推進
新庁舎整備を見据え、DXの更なる推進に向けて、行政手続のオンライン化を最優先で進めます。行政手続の棚卸しや業務プロセスの見直しを行い、原則としてオンラインで完結できる環境を整備します。それにより、自宅や外出先、どこからでもスマートフォンを使って必要な手続きが行える「行かなくてよい市役所」や駅近機能を具現化し、住民利便性の向上と業務効率化を同時に進めます。
市役所に来庁される方に対しては、今年4月から開始した「おくやみコーナー」をはじめとしたワンストップ窓口の検討など、待たない、迷わない、わかりやすい窓口の整備とともに、職員が専門的な相談や丁寧な対応に注力できる体制を構築します。
また、昨年度取りまとめた基本方針に基づくカスタマー・ハラスメント防止対策として、公共施設でのポスター等の掲示とともに、市役所の電話機へ通話録音システムの導入により、職員が安心して応対に専念できる環境を整え、より丁寧できめ細やかな行政サービスの提供につなげていきます。
公共施設については、資産(アセット)と捉え、多様な主体が、多様な目的等に「シェア」して使えるよう転換していくことや、民間施設との連携などを進め、長期的な視点に立った適正管理と有効活用を通じて、引き続き持続可能な行財政運営を実現していきます。
また、若い世代はSNS等のデジタルメディアでの情報取得が中心となっています。誰もが気軽に情報を得られ、活用できる環境づくりを進めるため、デジタル媒体を活用した情報発信の取組を推進します。
昨今の雇用の流動化は、本市で経験を積んだ職員の流出懸念の一方で、新たな人財の採用と活躍の機会ともなります。DXを通じた業務の効率化とあわせ、職員一人ひとりが、より意欲を持って、安心して働ける職場環境の向上を目指し、キャリアアップ支援の充実や柔軟な勤務体制の具体化を図ります。また、近隣自治体と連携した採用PRの実施や、採用プロセスの工夫により人財確保を図り、次の時代に向けた市民サービスの向上につなげていきます。
第3 むすびに
今回の選挙を通して、改めて候補者による公開討論会のような政策論争の場が必要だと痛感しました。有権者の皆さんがしっかりと判断する材料を確保するためには、それなりの時間と準備が必要です。4年前の選挙でも一方的な情報を発信されても反論する場もない、正確な情報をお伝えする機会が必要との思いがあったことを、当時の所信表明で申し上げました。
昨今、SNSにより情報を収集することは日常化しており、首長選挙等も有権者の皆さんが、十分に検討できる時間と立候補者による政策論争等を実施し、市民の皆さんが選挙に参加できる仕組みづくりが必要と改めて受け止めたところです。
何気ない日常の暮らしは、人と人との対話、尊厳、気遣いなど多文化、多様性のある社会が維持されていて初めて成り立つものです。私たちの不断の努力と積み重ねがなければ、民主主義や地域の小さな自治はあっという間に崩れてしまいます。
まちづくりの主役は市民との意識・感性を大切に育てていくことが、平和、人権、環境を基軸にしていく社会の醸成につながると改めて強く感じています。
また、今回の選挙で多くの皆さんから様々なご意見、ご提案をいただきました。バス便の減少への対策、日本医科大学多摩永山病院をはじめ、身近な医療対策、宿泊施設の市内誘致、トイレ改修基準の見直し、ベビーシッターや登校・通園など短い時間での家事・育児サポート、働き方・住まい方が大激変している現役世代への支援、SNSなど情報発信とメディアリテラシー、自治会・管理組合等での支え合い・見守り、公園や道路などの倒木防止・再植樹、PTA解散に伴う「子ども110番」存続、補聴器など聞こえへの支援、総合防災訓練と地域自主防災組織の訓練との連携など実に様々です。
私は、改めて市長に初めて当選した際に掲げた「市民主権」「ポジティブ多摩」「市役所改革」を目指すとの原点に立ち返り、市民の皆さんの声なき声にしっかりと耳を傾け、熟議による民主主義を根底に据え、この4年間、全力で市政運営にあたってまいります。
最後に、市議会並びに市民の皆さんのご支援とご協力を重ねてお願い申し上げて、私の所信表明とします。ご清聴ありがとうございました。
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