所信表明(令和4年6月)

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ページ番号1004472  更新日 2023年3月16日

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令和4年第2回多摩市議会定例会市長所信表明(阿部市長)

写真:阿部市長
※写真撮影のためマスクを外しています。

本文書は筆記録ではありませんので、当日、市長が述べた文言と若干の相違点があります。

令和4年第2回多摩市議会定例会の開催にあたり、私の市政運営に対する所信を申し述べて、主権者である市民の皆さま、市議会の皆さまのご理解とご協力を賜りたくよろしくお願い申し上げます。

第1 はじめに

改めて申し上げるまでもありませんが、市長選挙は4年に一度執行され、市民・有権者に訴えられる選挙運動期間は通常1週間とされています。私は、今回の選挙で多くの市民のご支持をいただき、再び、市長として市政運営の重責を担わせていただくこととなりました。
新型コロナウイルス感染症との闘いも3年目に突入しています。現在は、60歳以上の高齢者や基礎疾患のある人を対象とする4回目のワクチン接種、そして低所得の子育て世帯への給付金、住民税非課税世帯等に対する臨時特別給付金の準備に入っています。今議会でも予算として提案する運びとなりました。
この数年間、私たちの意識や社会の在り様も大きく変わりました。人と人との接触を遮断すること、マスク越しでしか窺えない人々の表情、目に見えない同調圧力の中での心理的負担、外出自粛がもたらす健康二次被害、その一方でニューノーマル(新しい日常・創造)の時代に向け、テレワークやオンラインの普及によるビジネス現場や学校等の学びの場の変化、地域コミュニティや行政をはじめ、そのあり方もコロナ禍で大きく変化してきています。このコロナ禍において、医療、介護、福祉などの現場で社会を支えるエッセンシャルワーカーの重要性についても再認識させられました。
本市では、これまでの「健幸まちづくり」の一環として「多摩市版地域医療連携構想」の策定等に取り組み、支援者間の連携体制を創ってきたこともあり、多摩地域最速の新型コロナウイルス対応など、その成果は形として現れたものと思います。ワクチン接種率が東京都内でトップを走り続けていることは、医療従事者の方々の協力はもちろんのこと、市民の皆さんの感染防止に寄せる高い意識の表れと誇りに思っています。もちろん、子どもたちへのワクチン接種、TPOによるマスクの着脱など、今後もニューノーマルを意識した取組みを進めていかなければなりません。
また、ロシアによるウクライナ侵攻は、さらに激しさを増しており、一日も早いウクライナでの平和が実現できることを願うばかりです。市としてもウクライナからの避難者への支援をはじめ、できることを全力で行っていきます。そして、戦争の長期化や円安による輸入品の物価上昇など、市民の暮らしへの影響が日々大きくなっており、これに対する対応も考えなければなりません。
冒頭、申し上げた今回の選挙を通して感じたことを率直に申し上げます。公開討論会のような候補者同士が意見を戦わす場面がなく、一方的な情報を発信されても反論する場もないことから、正確な情報を市民の皆さんにお伝えする機会が必要ではないかとの認識を新たにしました。18歳からの選挙権行使、シティズンシップ教育を考えれば、有権者である大人として、何らかの工夫が必要と考えています。
私は、3期12年、市民、議会の皆さんとともに議論を重ね、歩んできた経験と実績をもとに、3月の第1回定例会で申し述べた令和4年度施政方針の内容を踏まえ、初心を忘れずに、市民主権のまちづくりに取り組み、4期目の市長としてリーダーシップを発揮し、市民の負託に応えてまいります。

第2 四期目に臨むにあたって

基本的な考え方、姿勢

改めて、新たに4期目の市政運営に臨むにあたり、私の基本的な考え方、姿勢については、初めて市長に就任した12年前と変わっていません。

第1 社会で弱い立場にある存在にしっかりと目を向けること
第2 公正で自由な社会の実現に貢献すること
第3 持続可能である市政運営のモデルを模索すること

1期から3期にわたる12年間、この3点については、常に中心に据えてさまざまな政策、施策に取り組んできました。4期目となるこの4年間においても、改めて初心に立ち返り、しっかりと貫いていきます。

これまでの成果

これらに関連し、実際に取り組んできたことについていくつか申し述べます。

第1に関わるところでは、高齢者、障がい者、子ども、女性、性的マイノリティ、生活困窮者など、社会的弱者といわれる人たちをはじめ、誰一人取り残さない地域社会を築くために取り組んできました。
例えば、令和2年7月に施行した「多摩市障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例」は、その策定段階で、障がい当事者の方々と多くの対話・熟議を重ね、ようやく生まれた条例です。
本年2月にスタートしたパートナーシップ制度は、性的指向・性自認に関する市民の理解を深めるとともに、困りごとを抱える当事者等に寄り添い、具体的な取組みを進めるものです。
本年4月には「多摩市子ども・若者の権利を保障し支援と活躍を推進する条例」を施行し、子ども・若者の権利の保障、切れ目のない支援を受けられる環境の整備、意見表明・まちづくり参画機会の保障などを、条例の中に盛り込みました。
また、さまざまな理由で生活困窮となっている皆さんの相談窓口である「しごと・くらしサポートステーション」は、民間事業者のもつノウハウを活かし、困りごとに関する一次相談窓口として定着しています。今議会に補正予算を計上していますが、より利便性の高い場所に移転するとともに、生活保護受給者の金銭管理支援も開始するなど、生活保護と生活困窮者自立支援の窓口を密接に連携させ、誰一人取り残さない生活困窮者支援を目指していきます。
また、第3に掲げた、多摩市が持続可能な都市であり続けるために、主に以下の3つに取り組んできました。
1つは、未来を担う子どもたちのための子育て・保育、教育環境の整備です。
待機児童対策として、認可保育所や認定こども園などの施設整備を進め、この12年間で千人以上の定員を増やしました。こうした定員枠の拡大と、近年の少子化の進行から、待機児童数は減少し、空き定員が生じるまでになりました。量から質の時代への転換を見据え、市内保育・教育施設の保育士や幼稚園教諭の処遇改善を図ることで、職場環境が向上し、新たな人材の確保につながるなど、提供される保育・教育サービスの質の向上につながる循環を進めています。
また、核家族化、共働き世帯の増加により、家族構成の変化や地域のつながりの希薄化が進み、家族だけでの子育てが難しくなっており、児童虐待の未然防止の観点からも、子ども家庭支援センターと母子保健の連携を強化してきました。
市内10か所に整備した地域子育て支援拠点も、多くの利用があり、子育ての孤立を防ぐために効果的に機能しています。本年3月27日にパルテノン多摩にオープンした「こどもひろばOLIVE」も全市的な拠点であり、広く好評を得ています。
教育環境は、ソフト、ハードの両面から整備を進めてきました。
すべての小中学校でESD(持続可能な開発のための教育)に取り組み、子どもみらい会議の場で全校共有してきました。英語教育では、「日本一英語を話せる児童・生徒の育成」を掲げ、大きな成果をあげています。本年度までに小中学校全校にコミュニティ・スクール、地域学校協働本部を導入し、学校、家庭と地域の協働のしくみづくりにも取り組んでいます。国のGIGAスクール構想を受けて導入した、1人1台のタブレット端末を活用し、これからの時代に求められるネットリテラシーや情報モラルを含む情報活用能力を育成しています。校舎の大規模改修やトイレの洋式化も計画的に実施してきました。
本市には、このように優れた子育て・保育、教育環境があることをもっと外に発信していかなければなりません。
2つ目は、まちの魅力を発信し、市民が誇りを持てる取組みです。
平成30年4月に策定した「多摩市シティセールス戦略」に基づき、「多摩市の魅力的な情報」をさまざまな媒体を通じて発信してきました。
しかしながら、市民の皆さんが高い満足水準にあるのに比べると、市外には、本市の「住みやすさ」などの魅力が十分に伝わっていないという調査結果から、昨年8月に戦略を更新し、11月には、本市の理念を表すブランドビジョン「くらしに、いつも NEWを。」を発表しました。
今後は、市の取組みを発信することで、市の変化、市を取り巻く社会の変化、市民の皆さんの暮らし方が、この言葉の持つ想いと同じ方向へつながることを目指し、特に若い世代の来街や定住を促進させ、選ばれるまちへの転換を図っていきます。
これまで多くの歳月をかけ、機能の転換や見直しなどを図りながら進めてきた施設の改修、整備がここで花開きつつあります。
この4月には、「市民活動・交流センター」「多摩ふるさと資料館」がオープンし、来月にはパルテノン多摩がグランドオープンを迎えます。来年の夏には中央図書館が誕生し、さらにその先の多摩中央公園のリニューアルオープンへと続きます。
このような、施設や空間に命を吹き込み、輝かせていくのは「人」です。
利用する皆さん、運営に関わる皆さんと協働しながら、文化芸術の振興、生涯学習・社会教育を支え、市民の皆さんのこのまちへの愛着、シビックプライドの醸成につなげていきます。
最後に3つ目として、まちの賑わいを創出し、継続させる取組みです。
これまで、多摩ニュータウン内の未利用地への企業誘致を進めてきました。
現在の指定企業は9社にのぼり、ニュータウン内の未利用地は残り2か所となりました。指定企業からの推計納税額は、平成19年度からの累計で約81億円となっており、また、市内の就業人口が増加したことによる地元経済への波及効果も大きいものと考えています。指定企業の施設をワクチン接種会場としてお借りするなど、地元貢献もしていただいています。
また、第一次入居から50年を迎えた多摩ニュータウンの再生に向け、平成27年10月の多摩ニュータウン再生検討会議から「再生方針」の提言を受け、市として「多摩市ニュータウン再生方針」を策定、「多摩市ニュータウン再生推進会議」を設置し、ニュータウン再生全体の展開に向けた検討やプロジェクトを推進しています。
平成30年に「諏訪・永山まちづくり計画」を策定し、リーディングプロジェクトを中心に取り組んでいるほか、現在は「南多摩尾根幹線沿道土地利用方針」、「愛宕・貝取・豊ヶ丘地区等まちづくり計画」の策定に向け取り組んでいます。
さらに、市内主要3駅の周辺地区の活性化推進にも取り組んできました。
多摩センター駅周辺地区では、平成29年3月に「多摩センターのさらなる活性化に向けた取組み方針」を決定し、パルテノン多摩改修事業、中央図書館整備事業、多摩中央公園改修事業、都市再生整備計画事業の4事業を中心に、エリアを面として捉えて、公共施設のハード改修、整備が多摩センター地区のさらなる活性化につながるよう、改修後の多摩中央公園の管理運営とパルテノン多摩や中央図書館など公園内施設が一体となってさまざまな取組みを実施し、エリアの活性化を推進する母体組織として「多摩中央公園・多摩センター連携協議会」を発足させました。
永山駅周辺地区では、諏訪2丁目住宅の建替事業に合わせ、住宅市街地総合整備事業として周辺の公園、遊歩道、公共施設等のリニューアルを行い、現在は、諏訪4・5丁目の都営住宅の建替事業に合わせて、2期事業として周辺の公園、遊歩道の整備を行っています。
また、「永山駅周辺の再構築」については、コロナ禍により進捗させることができていませんでしたが、アフターコロナを踏まえた街づくりや賑わいの創出に向け、専門家も交えた勉強会の再開・継続に向けて地権者・事業者に働きかけていきます。
聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区では、聖蹟桜ヶ丘北地区土地区画整理事業による基盤整備と民間開発事業により、駅から河川空間に向けアクセスしやすい動線と多目的広場が整備されるのに合わせて、居心地の良い水辺空間づくりである「かわまちづくり」に取り組んできました。今年度は、一ノ宮公園拡張工事に取り組み、この空間が完成すると、府中側から京王線で多摩川を渡ってくる人にとって、「多摩市の新たな顔」となるはずです。
この新たに創出される空間も含めた街の賑わいや回遊性を向上させる取組みとして、せいせきみらいフェスティバルや聖蹟桜ヶ丘周辺まち歩き事業、ラスカル子ども映画祭の開催など、まちの魅力を高め、発信する事業に多くの主体と協働して取り組んできました。

総合計画の改定

多摩市は、昨年11月1日、市制施行50周年を迎えました。この4年間は、次の50年に向けて新たなスタートを切る節目となります。
第五次総合計画をスタートさせた平成22年度当時とは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大もあり、社会情勢、地方自治体を取り巻く環境は大きく変化しています。
地球規模の課題である気候変動問題への対策、本市でも進行している少子化、高齢化へ対応していくための健幸都市、地域共生社会の実現など、本市を取り巻く多くの課題に長期的に取り組むための基本的なビジョン、目指すべき将来の本市の姿、これを達成するために推進する政策・施策の基本的な方向性などを改めて見直していく必要があります。
そこで本年度から、総合計画の改定に着手し、SDGsの目標年度である2030年度を見据え、新たな基本構想(長期ビジョン)をつくり、そのもとに基本計画(前期計画)を策定します。
今回の総合計画の改定にあたっては、ニューノーマルの時代を見据えるとともに、計画期間をあまり長期化せず、刻々と変わる時代や社会情勢に対応可能なつくりにしていきたいと考えています。
新型コロナウイルス感染症の影響や少子化による人口減少、高齢化の進行等により、税収についても現行水準を維持していくことが厳しくなる状況が想定される中で、今後の動向を慎重に見通しながら、丁寧かつ迅速・果敢な財政運営を進めていきます。
併せて、行財政運営手法のさらなる転換、公共施設等のマネジメント、内部改革の推進などに引き続き取り組み、持続可能な行財政運営を今後も進めていく考えです。

今後4年間の市政運営の方向性

3月の第1回多摩市議会定例会において、令和4年度の施政方針を申し述べ、その中で、『私は、本市のこれからの50年のスタートにあたり、主に3点「気候変動問題への対策」、「ダイバーシティ&インクルージョン」、そして、「デジタルを活用した行政サービスの向上」について取り組みます。』と述べました。
これからの50年に向けた市政運営を見据えていくと、さらに進行していく少子化がもたらす人口減少社会、後期高齢者の割合が増加する超高齢社会の中で、行政のあり方、市民の役割などを改めて見直していく必要があると考えています。
さらに、新型コロナウイルス感染症など、予期せぬ事態へ柔軟に対応していかなければならないニューノーマル時代を見据え、さまざまな分野で新たな手法への転換を図っていくといった視点ももつ必要があります。
したがって、将来の地域社会を見据えて、これまで推進してきた「健幸まちづくりをさらに前進させていくこと」、さらに、いつ収束するか先の見えない、「新型コロナウイルス感染症に関連するさまざまな対策」の2点を、施政方針で述べた3点に加えて、これからの4年間、重点的に取り組んでいきたいと考えています。特に、気候変動問題への対策、健幸まちづくりの前進は、次の総合計画の中でも、目指すべき本市の姿に大きく関わるものであり、最優先で取り組んでいきます。
これまでの市民の皆さんとの対話と熟議により積み重ねてきたものをより発展させ、具体的な実践へとつないでいく4年間にしていく所存です。

1 気候変動問題への対策 環境共生型都市を目指し、喫緊かつ最優先で取り組むべき課題

令和2年6月、2050年までにCO2排出実質ゼロを目指し、市議会とともに、「気候非常事態宣言」を行いました。これはスタートラインについたにすぎません。
本年度から、多摩ニュータウン環境組合と連携した取組みとして、多摩清掃工場の発電余剰電力を活用した「電力地産地消事業」を始めました。この事業によって、市が直接管理する公共施設において、使用する電力のCO2排出実質ゼロを達成しました。これで、スタートを切ることができました。
気候非常事態宣言の3つの柱は、CO2の削減、使い捨てプラスチックの削減推進、生物多様性の基盤となる水とみどりの保全です。
公共施設や住宅への太陽光発電の設置をさらに進めていくとともに、本市は集合住宅が多いことから、改めて団地やマンションなどに再生可能エネルギーを導入するための検討を進め、企業などと連携しながら、地域全体での脱炭素化を目指していきます。
ペットボトルをはじめとする使い捨てプラスチックを削減していくために、一人ひとりができることから始めて、それを隣の人に広めていく、このような市民の意識改革につながる施策を推進していきます。また、市内河川の調査を継続し、海洋汚染の原因となっているマイクロプラスチック問題にも取り組んでいきます。
連光寺・若葉台里山保全区域でこれから進めていく農業公園づくりを通して、水とみどりの保全の実践を積み重ねていきます。
気候変動問題への対策は、全地球の国境を越えたグローバルな最重要課題として、私たち一人ひとりが意識を変え、行動変容を起こさなければなりません。
今年度から、小学校全校でプール指導を屋内民間プール等に切り替えたことも、子どもたちの健康への配慮はもちろんのこと、気候変動への適応の一つと考えています。子どもたちの未来を守るためにも、この問題に最優先で取り組み、本市が「環境共生型都市」となることを目指していきます。

2 健幸まちづくりのさらなる前進 健幸都市の実現を目指して

「健幸まちづくり」については、第2期・第3期の基本計画において、「取組みの方向性」、「基盤となる考え方」に位置付け、全庁をあげ、また、まちぐるみで取組みを進めてきました。
健幸まちづくりは、将来にわたって持続可能な多摩市をつくっていくための基本政策であると考えています。
まちの中に健康づくり、興味・関心に沿った活動ができる場や機会を多くつくり、独り暮らしであっても安心して暮らせるしくみをつくり、このような場や機会、しくみの一翼を市民の皆さんに担っていただくことで、誰もが健康で幸せな日々を過ごせるまち(健幸都市)をつくっていくことができます。
健幸都市を実現していくために、健幸まちづくりをさらに前進させます。
コロナ禍による外出自粛などにより、運動不足や人とのかかわりの減少の影響とみられる「健康二次被害」が確認されており、高齢者の皆さんの元気な生活を支えていくため、感染予防対策を講じた上での健康づくりの活動が不可欠です。地域介護予防教室やサロン等が市民の皆さんの手で再開されており、TAMAフレイル予防プロジェクト(TFPP)も、市民の皆さんと協働して引き続き実施していきます。今後も、介護予防リーダーなどの市民の皆さんと一緒に、さまざまな場への参加を促して、地域ぐるみでフレイル予防策を図っていきます。
また、健康づくり推進員やスポーツ推進委員の皆さんとともに、ウォーキングやヨガ・ストレッチなどのスポーツを通じて健康維持を図るための取組みも、引き続き進めていきます。
さらに、健康維持の基本である「歯と口腔の健幸づくり」についても、条例化の検討を進めていきます。
仕事や子育てに忙しい「現役世代」にも、健康と幸せを獲得できるようサポートが必要と考えています。市内在勤者の健幸な働き方を支援するため、市内各企業のトップが、自身と社員の健幸な働き方を推進する取組みについて宣言する「健幸!ワーク宣言」を実施し、7月には「健幸!ワーク宣言式」を行うことで、現役世代にも、心身の健康の維持・向上と幸せを感じてもらえるきっかけをつくり、「健幸」への意識を浸透させていきます。
長期化するコロナ禍の影響で、経済的な困窮を含め、さまざまな困りごとを抱える市民が増加しています。地域のつながりと専門職のネットワークで、何らかの困難に直面する市民を支援する「多摩市版地域包括ケアシステム」の構築を推進するとともに、「(仮称)地域協創」のしくみづくりを引き続き進め、コミュニティの力を醸成し、人と人とがつながりあい、支えあう地域社会(地域共生社会)の実現を目指します。

3 多様性を認め、受け入れ、活かすための取組み ダイバーシティ&インクルージョンを目指して

「多摩市障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例」、パートナーシップ制度、「多摩市子ども・若者の権利を保障し支援と活躍を推進する条例」など、これまで多くの対話や熟議を重ねて、条例、制度という「器」は完成しました。これらは手段であって、目的ではありません。
条例に掲げた、「障害理解の促進・啓発」「相談支援体制の確保」「子ども・若者の権利の保障」「切れ目のない支援を受けられる環境の整備」「意見表明・まちづくり参画機会の保障」、制度の趣旨である「性的指向・性自認に関する市民の理解を深める」「困りごとを抱える当事者等に寄り添う」などを達成するために、具体的な施策や事業を進めていくのが、この4年間です。
事業者による障がい者への合理的配慮を促進するため、今年度から、障がいのある方が外出しやすい環境を整えるための段差解消などに対する助成や、市役所窓口に、手話通訳や多言語通訳に対応した遠隔通訳システムを搭載したタブレットの設置などを行います。
併せて、手話を使用する方が、手話により自立した生活を営み、社会参加し、暮らしやすい地域をつくるために、手話言語条例の制定に向けた準備を進めていきます。
子ども・若者の意見表明やまちづくりへの参画については、市内の高校・大学と連携し、子ども・若者の率直な意見や考えを集め、当事者目線に立った制度構築に向け、その準備を進めます。
また、ひきこもりや、不登校、貧困、ヤングケアラー等、生きづらさを抱えた子ども・若者からの相談体制の充実や救済制度の創設についても、これからの4年間で取り組んでいきます。
これらを通じて、当事者の皆さんにとって住みやすいまちづくり、すべての人にとって、住みやすく暮らしやすい多摩市の実現を目指していきます。

4 多摩市版DXの推進 デジタルを活用した行政サービスの向上を目指して

DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、「進化したデジタル技術を浸透させることで、人々の生活をより良いものへと変革すること」であり、「デジタルでの変革」とも言われ、既存の価値観や枠組みを根底から覆すような革新的なイノベーションをもたらすことです。
本市としてのDXは、市民の利便性の向上を図る「くらしのDX」、デジタルで業務改革を図る「行政事務のDX」の2面で推進していく考えです。その土台には「ひとにやさしいデジタル化」の視点をもち、それぞれの取組みを計画的に実行していきます。
くらしのDXとしては、昨年度から始めた学童クラブの入所申請のオンライン化を保育所等の入所にも拡大するのをはじめ、さまざまな分野でオンライン申請を進めていきます。その上では、マイナンバーカードによる公的個人認証が必須となることから、マイナンバーカードの円滑な交付・更新に対応していくとともに、行政手続に伴うキャッシュレス決済の導入等についても推進していきます。
さらに、デジタルを活用した多摩市の魅力発信、GIGAスクール構想の推進、行政関係機関のデジタル化サポート等にも取り組んでいきます。
行政事務のDXとしては、国の動きに合わせて、住民基本台帳や福祉などの行政基幹系システムの標準化・共通化を推進するとともに、庁内会議のデジタル化・オンライン化、職員のテレワークの推進、高度判断業務へのAI活用、窓口業務やバックヤード業務の改革を、庁舎建替えの動きに合わせて進めていきます。
DXを推進していく上では、高齢者などへのデジタルデバイド対策、災害を想定したデジタル化への環境整備、オンライン化のための通信環境整備など、人にやさしいデジタル化、誰一人取り残さないデジタル化という視点を常に持ちながら取組みを進めていきます。

5 新型コロナウイルス感染症に立ち向かい、市民の命を守る

令和2年度当初から2年以上、コロナとの闘いが続いており、今後も、この闘いはしばらく続いてくことでしょう。
感染予防、感染拡大予防のための対策、在宅療養者への支援策、影響を大きく受けている市民や事業者への支援策、コロナによって大きく変化したニューノーマルに対応していくための取組みなど、令和4年度以降も新型コロナウイルス感染症に関連するさまざまな対策に取り組んでいきます。
新型コロナワクチン接種については、3回目接種において、5月10日現在、東京都内23区26市でトップの接種率を誇っており、これは市民の皆さんの高い意識の表れだと考えています。4回目接種については、6月22日からの開始を予定していますが、接種を希望する方が早期に接種することができるよう、多摩市医師会をはじめとする関係機関などと連携して、接種体制を確保していきます。
また、引き続き、保健所と緊密に連携を行い、在宅療養者に対する支援、情報提供など、孤立させないサポートを実施していきます。
新型コロナウイルス感染症の流行は、医療提供体制にも多大な影響を及ぼしています。感染症への対応の視点も含めて、日本医科大学多摩永山病院の移転、建替え事業の実現に向けて、本市としても支援し、現在のように、市民にとって身近なところに高度救命救急病院があるという、地域医療提供体制を今後も維持していくことを目指します。

第3 時代の変化を見据えた組織運営体制と人財育成

人口減少社会を支える組織体制

少子化、高齢化は着実に進行しています。
本市の人口は現在のところほぼ横ばいですが、全国的にはすで人口減少に入っています。今後、本市も緩やかに人口減少に転じていくことを見据えて、市の組織運営体制を見直していくことは重要な課題です。
人口をはじめ社会構造の変化とともに、行政ニーズが複雑化・多様化している中で、特定の部課だけで完結しない、部署横断的に対応すべき行政課題が増えており、公務員の定年延長、役職定年制の導入など、地方行政の人事制度も大きな変化が求められています。
次期の総合計画の改定にあたり、これらを踏まえながら、市として取り組むべき課題等を絞り込む、優先順位を明確にするなど、メリハリをつけるとともに、市の組織運営体制の検討を進め、柔軟で持続可能な体制の構築を図ります。

アフターコロナ時代の庁舎のあり方

令和11年度の本庁舎建替えを目指し、本庁舎に求められる機能や規模、場所のあり方等について、有識者や市民、議会の皆さんと一緒に、令和4年度中の本庁舎建替基本構想の策定に向けて取組みを進めています。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴って進展した行政のデジタル化により、市民サービスの手法や職員の働き方など、これまでの発想の大きな転換が必要となっています。将来、本庁舎に来なくても、市民にとって身近なところでサービスが受けられるような姿を展望しつつ、本庁舎に求められる機能から、規模や場所のあり方などを基本構想の中で取りまとめていきます。
その上で、次の令和5年度からの基本計画策定の着手までには、本庁舎の位置を決定していきたいと考えています。

未来を担う人財の育成

いつの時代も市政運営を支えるのは「人」です。
職員の世代交代が急速に進み、職務経験の浅い職員が増える中にあっても、正確・迅速・丁寧な行政サービスを継続し、複雑化・多様化する行政課題に柔軟性、スピード感を持って、確実に対応することができる人財を育成していきます。
多摩市人財育成基本方針に掲げる「高い目標を掲げ、ともに語りあい、行動し、達成する職員」、「一人ひとりがやりがいをもって、チーム多摩市として働く職場」を目指し、国や都等との人事交流を含め、さまざまな研修を通じた職員の知識やコンプライアンス意識の向上と徹底、職員の意見を業務改革や新たな行政サービスの構築につなげる職員提案制度、庁内報などの職員のコミュニケーションツール、職員相互の交流の機会の充実などを通じ、風通しが良く、活気に満ちた職場風土を醸成していきます。

第4 むすびに

ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、どのような理由があっても、国家が人殺しを正当化する戦争は絶対に許されることではありません。
新型コロナウイルス感染症が生み出した、人と人との接触を忌避する社会からは、ともに共生していく地域共生、多文化共生、自然との共生、多世代共生の未来は創造できません。人種、宗教、国家を超え、お互いに共生していく理想の社会を追求していくことこそ人類の命題と考えています。そして、チャレンジは小さくても、この多摩市から、人権、環境、平和を基軸とするコミュニティ自治を創造していきたいと考えています。
さまざまな困難を抱える市民が声を上げられる社会を実現していきましょう。ヤングケアラーはじめ一人で背負わず、地域や社会で支えあっていく社会を目指していきましょう。
気候危機の時代だからこそ、私は、熟議による民主主義を根底に据え、多くの市民の皆さんとともに合意できるプロセスを大切に、確かな一歩をともに力強く踏み出していきます。

最後に、市議会並びに市民の皆さまのご支援とご協力を重ねてお願い申し上げて、私の所信表明といたします。ご清聴ありがとうございました。

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