平成31年度施政方針(平成31年2月阿部市長)

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ページ番号1004529  更新日 2023年3月16日

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(注)本文書は筆記録ではございませんので、当日、市長が述べた文言と若干の相違点があります。

2019(平成31)年度の市政運営について、所信を申し述べ、主権者である市民の皆さん並びに市議会の皆さんのご理解とご協力を賜りたいと存じます。

第1 はじめに

健幸まちづくりの一つの成果を紹介します。
昨年、農家有志の皆さんによる新しいブランド野菜の定着促進を目指し、「多摩市ミニトマト(ソバージュ)部会」が立ち上がり、「健幸トマト」と名づけて販売されました。大学の農学部との農学連携、福祉作業所の皆さんとの農福連携、学校給食との連携など、その輪は大きく広がりつつあります。
現在、策定を進める第五次多摩市総合計画第3期基本計画の大きな柱は「健幸まちづくりのさらなる推進」です。「健幸トマト」の取組みは、多様な主体によって実践された点でも、さらなる推進を目指す「健幸まちづくり」を象徴していると言えます。

さて、皆さんご記憶のとおり、昨年の夏の猛暑は、気象庁が「命の危険がある暑さ。一つの災害と認識している」と発表したほどでした。多摩市の夏野菜も異常な暑さとの闘いとなり、日焼けなど、生育面での影響もあったとのことです。
地球温暖化は、動物や植物をはじめ生態系そのものにも大きな影響を及ぼしつつあります。気象庁によれば日本の年平均気温は100年あたりで1.21℃の割合で上昇しており、今後さらなる上昇が見込まれています。農業への影響は、リンゴ、ブドウなど果実が高温により日焼けし、出荷できなくなるだけでなく、2060年にはリンゴの栽培そのものが、東北地方中部の平野部から北海道は全域へ、栽培適応地域が大きく変化するという厳しい予測が示されています。
2018年6月には「気候変動適応法」が成立し、自治体として、温室効果ガスの排出削減対策、気候変動の影響による被害の回避・軽減対策が求められています。
まず、人の命にかかわる分野を最優先としながら、未来の子どもたちのためにも、SDGs(〈エスディジーズ〉、持続可能な開発目標)に対応し、地球環境への取組みを積極的に進めていく所存です。

第2 多摩市を取り巻く状況と課題

1 国政の状況

安倍首相は、先の施政方針演説で、「平成の、その先の時代に向かって」というフレーズを合計7回使用し、平成に次ぐ新たな時代の国のあり方について、道筋を付けていく意欲を示しました。5月1日には天皇の退位による皇位継承があり、6月にはG20の国内初開催、7月には参議院選挙、10月には消費税率10%への引上げ。国民の耳目を集める事柄が続く1年となります。
我が国の持続的な成長にとっての最大の課題に「少子高齢化」を挙げ、幼児教育の無償化、1億総活躍社会の実現、全世代型社会保障制度改革などに取り組んでいくとしています。
その課題認識と解決に向けた方向性は理解できるものの、幼児教育・保育の無償化は、私を含め全国の首長から苦言を呈せざるを得ないものでした。
地方創生についても、「地方がそれぞれの特色を生かし、自らのアイデアで、自らの未来を切り拓くのが、安倍内閣の地方創生です」と語っていますが、ふるさと納税の返礼品に対する総務省の対応、今回の消費税率引上げに伴う地域経済の振興策についても、地方の特色、アイデアをどこまで出せるのかについては疑問を抱かざるを得ません。
また、憲法をめぐる議論については、国民的な議論をさらに深めるとともに、特に、安全保障をめぐる取扱いについては、引き続き慎重な取組みが必要であると考えます。

2 都政の状況

東京2020オリンピック・パラリンピック大会が目前に迫る一方、2025年問題、気候変動対策など、首都東京として向き合うべきさまざまな課題がある中では、小池都知事には、五輪後も見据え、長期展望に立った都政運営に取り組んでいただきたいと考えています。
さきの「多摩の振興プラン」では、多摩地域共通の課題として、交通の充実、高齢化への備えを掲げていますので、各市町村と連携しながら、都としての解決に向けた積極的な取組みを期待しています。
本市としても、都と連携しながら待機児童対策に引き続き取り組むとともに、都が進める働き方改革についても、今後、都の施策との連携を深めていきたいと考えています。
また、南多摩尾根幹線全線4車線化、都営住宅の建替えなど、多摩ニュータウンの再生につながる事業についても、積極的に協力し、ともに進めていく所存です。
あわせて、未だに解消されていない、区部と市町村部との格差是正については、引き続き、あらゆる機会を通じて意見を伝えていく考えです。

3 少子化による人口減少・高齢化の進行

日本の総人口は、10年前の2008年の1億2,808万人をピークに減少し始め、人口減少のスピードは加速しています。
昨年度の社会保障・人口問題研究所の推計によると、日本の人口は2040年には、1億1,092万人になるという推計が出ており、毎年90万人程度減少すると見込まれています。
多摩市の人口については、2000年ころから概ね横ばいから微増傾向で推移しています。また、その内訳をみると、65歳以上の人口増加により、生産年齢人口は徐々に減ってきているものの、年少人口は大きくは変化していませんでした。
しかし、ゼロ歳児の人口に着目して調べたところ、これまで毎年約1,000人から1,100人で推移してきたものが、今年は、約900人となり、前年に比べ1割減という非常に衝撃的な数値となりました。
厚生労働省の人口動態統計によると、2018年生まれの子どもの数は過去最少の92万1,000人と、3年連続で出生数が100万人を下回る見通しとなっていますが、本市においてもこうした数値が生じた背景をしっかりと分析し、対策につなげていくことの必要性を強く認識しています。

第3 市政運営における基本的な考え方

1 市政運営の基本姿勢

(1)市民主体のまちづくりの推進

昨年は、さまざまな場面で市民の皆さんとワークショップを行いました。パルテノン多摩の大規模改修、図書館本館再整備、多摩中央公園の改修、旧北貝取小跡地の活用検討、永山駅周辺の再構築、受動喫煙防止条例の制定、そして、第五次多摩市総合計画第3期基本計画の策定など。
自治基本条例を定める自治体として、行政としての方向性の検討にあたり、審議会、パブリックコメント、意見交換会などを通して、市民の皆さんの意見をいただいてきました。今回、これをさらに一歩進める形で、さまざまな世代・立場の市民の皆さんの参画を得た市民ワークショップを通じて、市民同士、市民と行政での対話を通じて、合意を形成していく手法を活発に進めてきました。「対話型」「合意形成型」の取組みと言えると思います。
また、昨年実施した「SIMたま2030」では、若い世代を中心に無作為抽出で参加を呼びかけ、たまみらい市という仮想の都市の予算編成をゲーム感覚で体験していただきました。計4回の開催で、約140名という多くの市民の参加があり、参加者からは、これを機会に市政に興味を持つことができたなどの意見を多数いただき、大きな反響を呼んでいます。
地域防災、コミュニティ、子育て、教育、環境など、さまざまな分野でまちづくりを担っていただいている市民の皆さんが数多くいらっしゃることは本市の強みです。市民ワークショップへの参画などを通じて、新たに市政に関心を持ち、自分たちの住むまち・地域をよくしていきたいとの思いをもつ、若い世代・現役世代の市民の皆さんも巻き込んでいけるよう、多摩市若者会議でのプロジェクトとも呼応しながら、市民同士の対話・市民と行政との対話の場をつくり、地域のもつさまざまな課題を共有しながら、その解決に結び付けていくしくみづくりに取り組んでいきたいと考えています。
来年度には、その一歩として、市民と行政との協働での「財政白書づくり」に取り組むとともに、地域と行政の顔の見える関係づくりを一歩前に進めるため、職員の地域担当制の検討を進めていきます。
このようなしくみづくりの先に、多様な主体がまちぐるみで健幸まちづくりを実践する「健幸都市」を実現していきたいと考えています。

(2)持続可能な質の高い行財政運営の推進

新たな基本計画をスタートし、「目指すまちの姿」の実現に向け、各分野の政策・施策を推進していくためには、税収等の見通しを明らかにしながら、将来につながる、持続可能な行財政運営が必要です。引き続き、ソフト・ハードの両面にわたる行財政改革、人財育成を含む内部改革に取り組むことで、健全財政を維持し、市民主体のまちづくりを支えていきます。
行財政改革は、単に何かを切り詰めるものではなく、時代の変化に対応した見直しの先に、新たな付加価値やサービスを生み出すことと考えています。
ソフト面では、行財政運営手法の転換、すなわち「しくみの転換」に引き続き取り組んでいきます。
民間企業のアイデアやノウハウを計画の立案段階からとり入れ、市民サービスの向上と効率的な事業運営を図ることや、AI、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)など、最新のICT技術を導入することによる、市民サービスの向上や事務の効率化に取り組んでいきます。
ハード面では、都市基盤を含む公共施設等のマネジメントに総合的に取り組みます。
「公共施設等総合管理計画」と、その下位計画である「公共施設の見直し方針と行動プログラム」、「第二次ストックマネジメント計画」を連動させ、時代のニーズに対応した公共建築物の機能転換、総量縮減を図っていきます。
内部改革の推進についてです。
現在、多摩市役所そのものも、職員の世代交代の時期にあたり、毎年、多くの職員が入れ替わっています。
市民に信頼され、期待や要望に応えられる市政運営のためには、一人ひとりの職員が、常に、市民の目線に立ちながら、公務員としての立場で物事を見て、判断し、透明性を保ちながらも、柔軟な対応をしていくことが求められます。その基礎となる知識や技術の習得はもちろんのこと、コンプライアンス研修を充実させることで、法令や庁内ルールの遵守を常に意識して業務にあたることを徹底していきます。
また、BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)の手法を用いた業務フローの作成・分析などを通して、各業務の「見える化」「効率化」「最適化」とともに、事務の誤りを未然に防ぐしくみづくりに積極的に取り組んでいきます。

2 「健幸まちづくりのさらなる推進」

来年度は、第五次多摩市総合計画第3期基本計画をスタートさせる年です。
第3期基本計画では、第2期基本計画から取り組んでいる、健幸まちづくりをさらに推進していくことで、誰もが健康で幸せな生活を送ることができるまち「健幸都市(スマートウェルネスシティ)多摩」の実現に取り組みます。
多摩市が目指す健幸都市とは、「身体面での健康だけでなく、それぞれに生きがいを感じ、安全・安心に暮らすことができ、子育て中であっても、障害があっても、子どもから高齢者まで、誰もが幸せを実感できるまち」です。これまでの取組みとして、健幸まちづくり政策監を置き、健幸都市宣言や基本方針をまとめ、健幸的な生活の獲得支援、暮らしの安全・安心、世代の多様性を増やすことを柱に、さまざまな事業を展開してきました。
住民主体の介護予防の取組みとして、コミュニティセンターや集会所を利用した地域介護予防教室や、「近トレ」と呼ばれる「近所de元気アップトレーニング」の実施団体、参加する方が増えてきていることなども、健幸まちづくりの成果の一つと考えています。
第2期の4年間で大きな枠組みが構築でき、健幸まちづくりの方向性が明確になりました。
市民の皆さんに「健幸まちづくり」の考え方が浸透してきている手応えを感じる中、第3期基本計画の柱に「健幸」を立てることにしました。
第3期の4年間では、これまでの取組みを発展させていくとともに、各分野の個別施策を充実させ、地域や一人ひとりの市民にとっての取組みにつなげ、根付かせていくことを目標にしたいと考えています。
生涯を通じた取組みである健幸まちづくりをさらに進め、市民がそれぞれの「幸せ」を実感できるようになることが、このまちに住んでいることに愛着と誇りを持つことができる「シビックプライド」にもつながると考えています。

3つの重点課題

第3期基本計画では、健幸都市の実現に向け、さきの「多摩市健幸まちづくり基本方針」の課題認識もふまえ、次の3つの課題に重点的に取り組んでいく考えです。

(1)超高齢社会への挑戦

多摩市の特徴として元気な高齢者が非常に多くいらっしゃいます。このような方々がいつまでも元気で、学びや運動、音楽などの趣味を楽しむとともに、これまで培ってきた経験を活かし、子育てや日常生活のお手伝いなど、地域で支援を必要とする方々の支え手になっていただくことで、いつまでも現役で、生きる喜びを感じながら活躍できる場を充実していきたいと考えています。
また、フレイル予防をはじめとした健康づくりや身近な居場所づくり、安心して暮らし続けられる住まいや移動支援、地域の保健・医療・介護連携体制の充実など、健幸を支える環境整備に取り組みます。

(2)若者世代・子育て世代が幸せに暮らせるまちの基盤づくり

少子化による人口減少は、本市としても避けて通ることのできない喫緊の課題であると考えています。
子育て環境の整備や教育環境の充実を図り、若者世代・子育て世代にとって魅力あるまちづくりをソフト・ハードの両面から進めることで、人口流入や定住促進を図っていきます。
多摩市には、子育て・教育にとっての非常に恵まれた環境があり、行政・地域でのさまざまな支援策・支援体制が充実していることなどを、本市の魅力として、戦略的な広報活動を通して外部発信していきます。
併せて、支援を必要とする子どもたち・若者たちへも目を向け、必要な支援体制を構築していきます。

(3)市民・地域と行政との新たな協働のしくみづくり

今では普通に使われるようになった「市民協働」。
本市では、30年以上前の第三次総合計画から時代の先を見据え、この視点に立ったまちづくりを進めてきました。
時代も社会構造も大きく変化し、「人生100年時代」という言葉も良く耳にするようになりました。また、終身雇用とその後の年金生活を基礎とした、いわゆる「定年後」のあり方も大きく変容し、人口の流動性もますます高まっています。
こうした中での「市民協働」のあり方も、自ずと変化が必要です。
先にも述べたとおり、地域防災、コミュニティ、子育てなどさまざまな場面で、市民の皆さんが相互の支え手となり、地域を担っていますが、一方で、いわゆる担い手不足や負担感という課題も徐々に表れてきています。
地域でのつながりは、支え手側の人の健幸にもつながるといわれています。
現役世代を含めた幅広い世代が、地域の支え手となり、行政に参画してもらえるような協働のしくみを構築することで、市民・地域と行政が連携し、大学や企業などさまざまな地域資源を活用しながら、地域が抱える課題解決を図っていくしくみをつくっていきます。

第4 目指すまちの姿の実現に向けて

来年度予算は、第五次多摩市総合計画第2期基本計画の4年間の取組みを礎にして、第3期の新たな計画のスタートを切る年度にあたるものとして編成しました。
健幸都市の実現に向けて、健幸まちづくりをさらに推進する取組みをはじめ、基本構想に定めた「目指すまちの姿」の実現に向け、各分野の政策・施策に取り組んでまいります。
議会からいただいた「平成29年度決算審査施策評価」につきましては、議会の総意として受け止め、議論を深めながら市政運営に活かしてまいります。

1 子育て・子育ちをみんなで支え、子どもたちの明るい声がひびくまち

長年、取組みを進めて、なお減少していない待機児童への対策は、本市の最重要課題の1つです。多摩市で子育てをしたいという多くの方々の期待に応えるため、引き続き、重点的な対応を図ります。
来年度は、幼稚園1園の認定こども園移行により保育定員の増加を図るとともに、新たな取組みとして、企業が自ら設置する企業主導型保育施設に地域枠を設定し、保育料の一部を補助することで、保育定員の拡大を図ります。
学童クラブについては、子どもたちの安全確保の観点から、順次、小学校の敷地内への移転を進めるとともに、待機児の多いエリアの定員拡大として、4月から連光寺小学童クラブの運営開始と、貝取小への新設工事、南鶴牧小第2の増設工事に着手します。
保護者にとって関心の高い子どもの医療費について、義務教育就学児医療費助成制度の所得制限を撤廃し、中学生までの医療費を原則無料とすることで、子育て世代の負担軽減を図ります。
また、本年10月から幼児教育・保育の無償化が開始され、3歳から5歳までのすべての子どもの保育料が無償となります。その対応に必要なシステム改修、給付費や補助金などの予算を計上しました。一方、新たな制度を安心して利用いただくためには、子どもたちの教育環境・保育環境の安全確保と自治体にとっての確実な財源保障が不可欠です。昨年11月には、国に対して早急に明確な方針を示すことと、国民や自治体に対する周知の徹底を、全国市長会としての緊急アピールを行ったところです。
現在、「地域子育て支援拠点」をエリアごとに整備し、子育て広場や子育てマネージャーによる相談を実施しており、利用者はこの3年間で約60%増え、身近な子育て拠点として浸透し始めています。今回、大規模改修を行うパルテノン多摩の4階に、市外の利用を含めた全市的な地域子育て支援拠点の開設に向け、事業者の選定などの準備に入ります。
子どもの貧困やひきこもりなどの若者支援策については、現在、「子ども・若者に関する施策検討懇談会」において検討いただいているところですが、来年度は、その懇談会の意見をまとめ、今後の方針を決定していきます。ひきこもり支援に関しては相談会の回数を増やすとともに、講演会を開催して支援の充実を図る一方、子ども食堂・だれでも食堂の活動について支援をするために、実施に対する補助金を交付していきます。
さらに、2020年度からの子育て世代包括支援センター事業の開始に向けて、関係機関を含めた専門分野のワーキンググループを設置します。
教育の面では、第一に、「地域とともにある学校づくり」を進めるために、コミュニティスクール(学校運営協議会制度)への移行を進めます。どのような子どもたちを地域とともに育んでいくのかを、学校と保護者・地域が互いに知恵を出し合い、共有し、学校と地域が協働しながら、目指す子ども像を具現化することで、子どもたちの豊かな成長を支えるしくみに変えるために、すべての学校を順次、コミュニティスクールに移行させていきます。
引き続き、「日本一英語の話すことができる児童・生徒の育成」を目指し、グローバル化に対応した教育を進めるとともに、情報教育の推進とその環境整備として、全小中学校に配備したタブレット型端末の更新を、本年度に引き続き実施し、完了させます。
特別支援教育については、先進的に、計画的に進めてきましたが、特別支援教育推進計画の計画期間が2020年度までであることから、第二次の計画策定のための委員会を設置します。
学校における働き方改革の面では、学校において処理すべき事務量が膨大となっていることから、副校長等の校務負担の軽減、学校事務の見直しを図るために、共同事務室を開設していきます。来年度は、7校で1つのグループとした体制をつくり、瓜生小学校に共同事務室を整備します。
学校の施設整備の面では、小学校では、西落合小学校の大規模改修工事の2年目を実施するとともに、聖ヶ丘小学校の大規模改修工事に向けた基本・実施設計を実施します。中学校では、聖ヶ丘中学校の大規模改修工事の1年目を実施するとともに、和田中学校の大規模改修工事に向けた基本・実施設計の2年目を実施します。
「はじめに」でも触れましたが、昨年のような災害級の猛暑が今後もあると想定されることから、普通教室以外の教室や、体育館へのエアコン設置については、早急な対応が必要と判断し、国や東京都の補助制度を活用しながら、計画的に整備を進めていきます。
市内の小中学校のすべての特別教室等にエアコンを整備していく方向で進めます。また、学校の体育館については、空調設備を設置することが想定されていない構造であることをふまえて、設置による効果の検証、課題の洗い出しなど、今後の取組みの是非を検討することを念頭に、夏季休業期間中に部活動での使用頻度が高い中学校において、来年度、試行的に1校に設置することとします。小学校においては、スポットエアコンの配置などの対策に取り組みます。
さらに、これまでも懸案となっていた学校のトイレ便器の洋式化にも取り組みます。

2 みんなが明るく、安心して、いきいきと暮らしているまち

健幸まちづくり推進事業としては、これまでも各世代に向けたさまざまな取組みを行ってきましたが、来年度は、年代に合わせたアプローチを強化します。
健幸の基礎づくり期である中学生に向けては、たばこによる健康への影響などについて知識習得を目的とするプログラムを各学校で開催し、仕事や家庭をけん引する年代である30~50代向けては、体に意識を向け、日常の中でできる運動を学ぶ健幸講座を開催するとともに、幅広い世代を対象に、地域の助け合いや社会参加の豊かさが個人の健幸にもたらす効果などを認識してもらうための講演会を開催します。
議会での議決を受けて、制定に向けて取り組んできました「多摩市受動喫煙防止条例」をこの3月議会で提案しています。今秋に施行される予定の条例の規定に基づき、特に屋外での受動喫煙を防止する取組みについてさまざまな啓発活動を行うとともに、喫煙者に対し禁煙治療費の一部を助成することで、禁煙に向けて踏み出す一歩を後押ししていきます。
「多摩市版地域医療連携構想」の策定に向けて、本年度はフォーラムの開催や医療需要に関するデータの分析と課題の抽出を行ってきましたが、来年度は、この結果をもとにして市民ニーズ調査を実施し、市民ワークショップを開催するとともに、市民委員や学識経験者、医師などによる策定協議会を設置し、構想の具体的な検討を進めます。
生活保護受給者や生活困窮者など、就労することに課題のある方を対象に、日常生活、社会生活、就労による自立に向けた支援プログラムを提供する「就労準備支援事業」を、ベルブ永山のビジネススクエア多摩の跡地を活用して開始します。同時に、ひきこもり相談や社会福祉協議会と連携した生活福祉資金の相談なども定期的に受けられるようにすることで、相談から支援につなげる窓口のワンストップ化を図ります。
高齢者福祉では、高齢者の総合相談窓口である地域包括支援センターを、順次、市民が相談しやすい場所への移転を進めています。これまで、中部、北部のセンターをそれぞれ永山団地名店街、関・一つむぎ館に移転しましたが、来年度は、桜ヶ丘延寿ホームに隣接している東部地域包括支援センターを、地域の中でより身近な立地にある諏訪複合教育施設内に移転します。
障がい者福祉では、医療的ケアが必要な障がい者(児)が、安心して在宅での生活ができるようなしくみの構築に向け、福祉・医療・教育の関係機関が入った協議会を設置し、支援体制について協議していきます。
障害者差別解消法、東京都の差別解消条例の施行を受けて、障がいのある当事者、市民、民間事業者などから広く意見を聴きながら、「(仮称)多摩市障がい者差別解消条例」の制定に向けて、市としての障がいのある方への合理的配慮に対する考え方の整理などを進めていきます。
また、高齢者や障がい者への福祉サービスを提供する事業所の活動場所を長期的に確保することを目的に、旧西永山中学校の跡地に都営住宅との合築で建設中の西永山福祉施設が秋にオープンする予定です。高齢者の小規模多機能型居宅介護、障害福祉サービス事業の施設が入居します。

3 みんなで楽しみながら地域づくりを進めるまち

これまで、地域のコミュニティ活動の拠点として整備してきたコミュニティセンターが、建築後30年を迎える時期となり、順次、大規模改修を実施していくことになります。来年度は、鶴牧・落合・南野コミュニティセンター改修の基本・実施設計に着手します。
文化、スポーツ、生涯学習の分野では、施設整備、施設の改修を集中的に進めていきます。
パルテノン多摩については、大規模改修に向けた基本・実施設計の2年目に入ります。リニューアル後の管理運営計画の策定とともに、これまでの文化方針の見直しを進めていきます。
多摩中央公園内での図書館本館再整備に向けて、基本・実施設計に着手します。新たな図書館は、「知の地域創造」に向けた中央図書館機能を担う施設とし、周辺の公園と一体化した、環境に配慮した建物にしていく予定です。
また、来年度は、武道館、陸上競技場、庭球場を含めた多摩東公園の大規模改修工事を行います。これに伴い、改修後の2020年度からは、民間の視点で、公園施設全体の魅力を向上させ、効率的で一体的な管理運営を図っていく予定です。
旧北貝取小学校跡地施設については、市民活動の場と文化財の収蔵、体験学習等の場としての改修に向けて、これまでの市民ワークショップ等での意見を踏まえた基本方針に基づき、基本・実施設計に着手する予定です。
さらに、開館20年を迎える関戸公民館の老朽化した設備の改修工事を行います。特に、音響設備や映像設備などを、利用者のニーズに応えられる最新式のものに入れ替えていきます。
地域を豊かにするための人づくりの実現を目指して、これまでの学習機会の充実や文化・スポーツ活動といった市民の社会活動の支援に加え、健幸まちづくりや市民の社会参加の支援を視野に入れた生涯学習推進計画の策定に向け準備を進めていきます。
さて、東京2020オリンピック・パラリンピックの開催がいよいよ1年半後に迫ってきました。自転車競技ロードレースでは、都内最長の11.8Kmにわたって選手が市内を疾走します。今年7月のテストイベント、来年の本番に向け、市内6大学や都内通過自治体8市等と連携しながら、自転車ロード競技を知っていただくための啓発や体験イベントの開催等を通して、オリンピック・パラリンピックの気運醸成に取り組んでいきます。
現在では、多様な性を認め合う社会へと変化しつつありますが、依然として偏見や差別も存在しており、これまで以上にその解消に向けた取り組みを市・市民・事業者等が連携しながら進めていく必要があります。来年度から次期「女と男がともに生きる行動計画」の改定作業として、女性の視点を大切にしたまちづくりや女性の活躍、DV等のあらゆる暴力の根絶、多様な生き方を尊重し相互理解が進む社会の醸成などを念頭に置きながら、市民意識調査等に取り組んでいきます。
また、毎年実施している子どもたちの被爆地派遣事業では、来年度は長崎に派遣するとともに、平和展などの事業も含め、戦争の悲惨さと平和の尊さを次世代に継承していくため、地域との連携や若い世代の参画に努めていきます。

4 働き、学び、遊び、みんなが活気と魅力を感じるまち

創業支援の分野では、ハード施策から民間と連携したソフト施策への転換を図ります。
これまでのビジネススクエア多摩を拠点とした支援から、民間企業が整備したビジネス支援施設、サテライトオフィスなどの拠点を利用する創業者などに対して支援をしていくという方式に大きく転換します。これに伴い、多摩信用金庫・多摩大学との三者連携という枠組みは残しながら、相談、創業塾、セミナーなどのソフト事業を、民間施設や他の公共施設などを利用しながら実施する方式に改めます。
観光分野では、これまで多摩センター地区や聖蹟桜ヶ丘地区の活性化事業やフィルムコミッション事業など多くの事業に取り組んできましたが、さらに誘客を進めていくために、さまざまな企業や団体に参画いただき、この3月末に「多摩市観光まちづくり交流協議会」が発足する運びとなりました。今後は、協議会とともに、本市の魅力向上や来街者の増加に向けた取組みを進めていきます。

5 いつまでもみんなが住み続けられる安全で快適なまち

大阪府北部地震を受け、安心・安全な街づくりの推進のため、ブロック塀等の安全点検・改善支援を実施するとともに、幼稚園や保育所のブロック塀等の改善事業に対しても補助を実施します。
また、来年度は、震災時の防災機関の連携と、自助・共助に基づく地域防災力の向上のため、28年ぶりとなる、東京都・多摩市合同総合防災訓練を実施します。
さらに、深刻化する特殊詐欺被害を未然に防ぐため、引き続き、警告メッセージと録音機能を備えた「自動通話録音機」の無償貸し出しを多摩中央警察署と協力しながら実施します。
多摩ニュータウン再生に向けた取組みについては、さらに前進させていきます。来年度は、諏訪・永山まちづくり計画で示した将来都市像の実現のため、永山駅周辺の具体的な再構築手法の検討を行うとともに、多摩センター駅周辺の賑わいのあるまちづくりに向けて、都市再生整備計画の内容を一部変更したうえで、駅周辺の再整備を進めていきます。
また、聖蹟桜ヶ丘北地区の区画整理事業もいよいよ完成に近づきつつあります。今後は、市民の皆さんや商店会、事業者等と協力して、活気と賑わいのあるまちづくりに取り組んでいきます。
市内4駅周辺では、さまざまな人にとって分かりやすく、利用しやすい公共サインを目指し、「公共サイン整備実施計画」に基づいて、周辺エリアの案内サインや公共施設への誘導サインなどを整備します。
住宅政策では、若年世帯の転入及び定住を促進するために、親元への同居や近居・隣居する、市外から転入してくる子育て世代に対して、住宅の取得にかかる費用等を補助する事業を開始します。
これまでも計画的に進めてきた道路・橋梁等の更新を更に進めるとともに、多摩センター周辺の遊歩道の改修についても市民の皆さんのご意見を聴きながら検討していきます。
交通不便地域の解消に向けて、交通再編実施計画の策定を進めるとともに、路面に自転車のピクトグラムの表示をするなど、安全で快適な交通環境を更に充実していきます。
下水道事業では、下水道施設の計画的かつ効率的な管理を目的とした「多摩市下水道施設長寿命化計画」に基づき、管路施設や水路の改良・改修工事を進めるとともに、経営基盤の強化等を図ることを目的とした、中長期的な経営の基本計画である経営戦略を策定します。

6 人・自然・地球 みんなで環境を大切にするまち

環境の分野では、2つの公園の大規模改修に取り組みます。多摩東公園は、公園内の武道館、陸上競技場、庭球場と合わせて、老朽化対策、バリアフリー対策を基本とした工事を行います。多摩中央公園は、公園内のパルテノン多摩の大規模改修や、公園内に整備予定の図書館本館を含め、多摩センター地区一帯の賑わい創出に寄与する改修を目指し、民間事業者のアイデアを募りながら基本設計にかかります。
みどりのルネッサンスの取り組みでは、来年度は、アクションプランの7つのリーディングプロジェクトの最終年度として、推進状況を踏まえ、次期の多摩市みどりと環境基本計画の策定を見据えつつ、引き続き「関わるみどり」や「愛される存在としての再生」に向けて、継続して取り組んでいきます。
ごみ減量・資源化の推進では、長期修繕計画に沿った形で、資源化センターの設備等の改修を進めていきます。

第5 むすびに

地球環境の温暖化の進行は、地球的規模の気候変動をもたらし、高温化や強大な台風の出現など、自然災害へのリスクは拡大しつつあります。
いつ起こるかわからない自然災害を想定しての、防災・減災に向けた対策、災害級と呼ばれるような暑さ対策などについては、本市としても早急に対応していかなければなりません。
地震で倒壊する可能性の高いブロック塀の改修にかかる補助制度の導入、学校施設を中心とした空調設備の整備などについては、本年度の補正予算、来年度の当初予算に反映させていただきました。
自然災害への対応については最優先で取り組んでいくとともに、自然災害の一因となっている気候変動対策や地球温暖化対策についても、きちんと向き合っていかなければならないと考え、来年度は、このような分野の問題について、市として、市民としてどのような取組みができるのかについて、ワークショップ等の開催を予定しています。

社会構造や人の意識など、時代の潮流が大きく変わってきているこの時代。
2021年には、多摩市は大きな節目となる市制施行50周年を迎えます。あわせて、この数年の中で、パルテノン多摩のリニューアル、図書館本館の竣工、市内3駅を中心にまちが大きく変わっていく転換期を迎えることになります。10年後に建築後60年を迎える市庁舎の建替えについても、今後を見据えた検討が必要になってきます。
町から市となり、ニュータウンの初期入居がはじまってからの、これまでの50年をふりかえるとともに、これからの50年に向かって、次の世代へ引き継いでいく役割を私たちは負っています。
いわば、成長期から変貌を遂げ、成熟期に入ったこのまちですが、来年度からスタートする第3期の基本計画では、健幸都市の実現に向けた、健幸まちづくりをさらに推進、前進させていくことを掲げていきます。
人口減少、少子化、高齢化。日本全体、自治体を取り巻く大きな課題がある中で、これに立ち向かっていくためには、行政の力だけでは到底及びません。多摩市が持つ財産のなかには、豊かな市民、地域の力があります。市民の力、地域の力を結集し、特に若い世代の力を地域に向けていただくことで、健康で幸せな多摩市を地域からつくっていきたいと考えています。
そして、SDGsの旗を高く掲げ、平和立国・日本の地方自治体として、一人ひとりの人間としての尊厳を大事に、分断と対立でなく、平和と熟議を大切にする社会を目指してまいります。

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