令和7年度施政方針(令和7年2月阿部市長)

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ページ番号1016642  更新日 2025年2月26日

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 (注)本文書は筆記録ではございませんので、当日、市長が述べた文言と若干の相違点があります。

 令和7年度(2025年度)に臨むにあたり、市政運営にかかる所信と基本方針を申し述べ、主権者である市民の皆さんと市議会の皆さんのご理解とご協力を賜りたいと存じます。

1 はじめに

 世界は、人々は、分断と対立、独裁、ヘイトと差別などにより、特に子ども、女性、障がい者など弱い立場の人々が依然として声を上げることさえ困難な状況が続いています。国際協調より排外的な自国中心主義で国際社会は揺れ動き、核兵器使用を匂わせる核超大国による独立国家への侵略や戦闘行為で多くの人々の命が奪われています。地球は、自然は、凶暴化する台風・線状降水帯など地球を覆う沸騰化、気候危機と異常気象で生物多様性の維持が厳しく、全世界で食糧危機の嵐が食卓を襲いつつあります。
 本年は戦後80年の年です。昨年、ノーベル平和賞を受賞した「日本被団協」田中煕巳代表委員は、受賞演説で「人類が核兵器で自滅することのないよう、核兵器も戦争もない世界の人間社会を求めて、共に頑張りましょう」と訴えました。平和首長会議の一員として、改めて日本国政府に締約国会議へのオブザーバー参加、そして核兵器禁止条約の早期批准をと強く求めていきます。
 また、全世界で166の国と地域、8,466の都市が加盟する平和首長会議は、「被爆80周年記念総会」を8月に長崎市で開催し、核兵器廃絶と戦争のない世界をとアピールします。さらに一昨年発足した多摩地域26市で構成する平和首長会議東京都多摩地域平和ネットワークは、高校生・大学生を各市から一人、「(仮称)多摩地域平和ユース」として広島に派遣するという企画を新たに立ち上げました。明年2月15日には本市の「パルテノン多摩」で、26市の市長とこの若者たちとで、「(仮称)平和サミット」を開催し、被爆の実相の継承と、核と戦争のない恒久平和の世界を創ろうとの声を多摩地域から響かせていく年になります。
 昨年の解散総選挙の結果、政権与党は少数与党となり、国会で予算や法律などの議決を得るには野党の同意が必要という、緊張感漂う国会運営となっています。選挙で示された国民の民意をどのように反映していくのか、少数政党の存在意義も高まっています。この国をどのように変え、未来を育てていくのか、国民の世論に誠意と決意をもって、白熱した論議を通じ、いかにまとめあげていくのか、戦後80年かけて醸成してきた民主主義の真価が問われています。
 本市も昨年、多摩市自治基本条例施行20年の節目を迎え、「協創」という考え方を条例に取り入れました。高齢化が進行する中で、これまでの参画、協働を多世代、多分野に広げていくことで、多摩市らしい地域共生社会、誰もがつながり合える地域社会を実現していくことを目指しています。そのためのしくみ・しかけの1つとして、庁内の若手職員から募る「協創サポーター」制度をスタートさせました。まずは、地域のお祭りやイベントで顔の見える関係をつくり、民主主義の根幹である地域コミュニティの再生に向け、地域の皆さんの活動を応援していきます。
 昨年12月には多摩センターの青木葉通りで東京都と連携し、自動運転バスの走行実験を行いました。今月には、永山地域で内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に協力し、移動モビリティ実証実験に取り組み、あわせて専門家も交え、実用化に向けたシンポジウムを開催しました。また、多摩川河川敷での公共空間の活用や地域の情報発信、コミュニティの場づくりに取り組んできた「せいせきカワマチ」は先日、国土交通大臣から「かわまち大賞」の表彰を受けました。
 私は、さらに本市を子育て世代や若い人々に選ばれるまちとし、また、地震や災害などに強いまちづくりを進めていくため、伯仲国会の荒波を受けつつも地域や現場の声に真摯に耳を傾け、市民の暮らし、命を守っていくため市役所の総力を挙げて懸命に舵取りをしてまいります。

 さて、令和7年度の予算編成は、税財源などの歳入の規模を超えた物価高騰や運輸・物流現場等での働き方改革等による物件費の上昇により、例年以上に厳しい状況の中での査定となりました。
 本市は、国からの普通交付税を受けない不交付団体として、また、負債の少ない自立した地方自治体ではありますが、最終的にかつてない24億4千万円もの財政調整基金を取り崩すという決断をしました。残念ながらお示しした当初予算では、取り組みたいと考えていた新たな事業等の一部については見送らざるを得ませんでした。
 地方自治体の予算については、4月から3月末までの1年間という会計年度を一区切りとして、会計年度が始まる前に当初予算の議決を経ることがルールです。しかしながら、コロナ禍以降の度重ねての補正予算、さらには当初予算審議と同じ会期中での当初同時補正等の対応からも、現実の社会の動きは激しいと言わざるを得ません。
 二元代表制である市議会の皆さんには、予算、決算のありようを含め、当初予算で全てを示すことを前提とした市政運営には限界があることをご理解いただき、年度後半に改めて市民の暮らし、未来への投資につながる事業について提案させていただく予定です。よろしくお願い申し上げます。

2 市政運営の基本的な考え方

(1) 変化の激しい中でも歩みを止めず、前に進んでいく年度に

 冒頭で申し上げた戦後80年間は、右肩上がりで人口が増え、経済成長を続けていく時代を前提として、社会の仕組みを構築し、経済成長の恩恵を享受してきた80年でもありました。しかし、昭和から平成、令和へと時代が進む中で社会・経済の縮小局面を迎えている現在において、社会保障制度や税制をはじめ、様々な仕組みが現在の社会に合わなくなってきていることを実感しています。
 社会保障関係経費の増加に加えて、近年の物価高騰や人件費の増加に対して税収の伸びが追い付かない状況が続く中、自治体の予算編成は年々厳しさを増しています。特にコロナ禍以降は、国や東京都が基礎自治体の行財政運営にも影響を及ぼす新たな取組を補正予算等で打ち出すことが増えており、市としてそれらに迅速に対応していくため、今では年4回の市議会定例会以上の号数の補正予算を編成することが常態化しています。加えて、国による制度改正への対応にあたり、法定受託事務でさえも一部負担を強いられている実態や、本来の趣旨から外れて「官製通販」と化しているふるさと納税制度による税の流出など、財政面からも自治事務としての独自の取組ができなくなってきています。
 こうした中、令和7年度当初予算については、物価高騰や人件費上昇が、適正な価格転嫁と賃金上昇等による可処分所得の増加や消費喚起、そして税収につながるか否かの見極めが非常に難しい状況であり、予算要求時点で約80億円の乖離が生じる中での予算編成作業となりました。そのため、年間総合予算という考え方は基本としつつも、歳出に歳入が大幅に追いつかない中でも未来に向けた投資等は継続し、課題の解決に向けて歩みを止めずに前に進めていく必要があるため、状況変化、財源確保など条件が整った段階で取組を順次スタートさせていくこととして編成しました。
 本年は、2025年問題と言われている団塊の世代の全員が後期高齢者となる年ともなります。また、2030年まで5年を切る中、市として、カーボンハーフの達成等をいかに実現していくのかが問われてくる年度でもあります。情勢変化が激しく先行き不透明な時代に突入した中においては、自治体も今まで以上にスピード感と柔軟性を持った取組が求められています。既存の計画や市で定めた条例や規則等についても、絶えず社会情勢等の状況変化に照らして見直しを行うなど、ピンチをチャンスに変えて、社会の変化を的確に捉え、これまでの社会常識や考え方にとらわれず、しなやかな対応をしていくなど、令和7年度は、変化の激しい時代でも歩みを止めず、前に進んでいく年度としていきます。
 そうすることで、「つながり 支え 認め合い いきいきと かがやけるまち 多摩」という将来都市像を目指し、人々が笑顔で暮らし続けることのできるまちづくりを進めてまいります。

(2) 持続可能な行財政運営

 限られた予算と人財で持続可能な市政運営を行い、最適な市民サービスを提供していくためには、引き続きBPRの実施やDXの推進、公民連携手法の活用などに積極的に取り組む必要があります。令和5年度からBPRの取組のひとつとして、業務委託による支援を受けて業務の見える化を実施してきました。令和7年度は、この2年間で得られたノウハウをもとに実践的な事務改善につなげていきます。令和7年度末が移行期限となる標準準拠システムへの移行についても、現行業務を標準化された業務へと運用の見直しを行い、他自治体の優れた事例を市の業務に取り入れるなど業務の効率化を実現していきます。また、令和6年度から試行導入している生成AIも、検証結果を踏まえてルールの策定を行い、情報保護等に十分留意しつつ、全庁への活用の拡大を図ります。なお、DXという点では、市職員のみならず、アプリの導入やパソコン活用支援により消防団や民生委員活動に際しての情報共有の円滑化や活動の効率化等を進めます。限りある税財源と人的資源をより有効に活用するため、包括的民間委託について、下水道施設の維持管理では第2期となる取組をスタートさせ、新たに道路と公園の維持管理業務についても、委託化の検討に着手します。このほか、東京観光財団の支援を受けて、多摩市観光まちづくり交流協議会で取り組んでいる「食」で魅力をつくる「食プロジェクト」を、商店会、ショッピングセンターなどと連携して「アイスランド風まちバル」として実施するほか、新小学一年生に配布しているランドセルカバーを新たに東京ヴェルディから無償提供を受けるなど、様々な形での公民連携も一層進めていきます。
 また、物価高騰に税収の伸びが追い付かない先行き不透明な状況下においても様々な行政課題に対応し着実に政策を進めていくには、令和8年度以降への備えが必要となっています。そのため、令和6年度に策定した「多摩市行財政マネジメント計画・DX推進計画」等も踏まえ、不断の見直しを通じて事業の必要性や手法の有効性を検証し、時代や社会状況、市民ニーズの変化をとらえた事業の「アップデート(最新化)」に取り組みます。
 同時に、これからの時代は、自治体間競争で限られた資源を奪い合うのではなく、自治体間連携での取組が重要となります。東京都や近隣自治体とともに共同研究を行うことで効率的な施策の実施につなげていくほか、GovTech東京等を通じ、物品やサービスを共同で調達することによるスケールメリットを活かした調達コストの低減などに取り組みます。また、少子化に向かう中、喫緊の課題となっている職員の採用について、近隣自治体と連携し、広域的に採用情報を発信するとともに、本市で働くことの魅力ややりがいをPRすることで、将来を担う人財の確保を図ります。4月から施行される東京都カスタマー・ハラスメント防止条例を踏まえ、カスタマー・ハラスメント対策にも取り組んでいきます。
 他市と比較して質・量ともに高い水準にある本市の公共施設を人口減少社会においても適切に維持・更新し、次世代に負担を先送りしない持続可能なまちを実現するためには、時代のニーズに合わせて施設が有する機能を再編・最適化することが求められています。今後は大型施設の建替えや改修が続くことから、「多摩市公共施設の見直し方針と行動プログラム」に基づいて行ってきた10年間の取組を踏まえて、令和7年度中に次期計画である「(仮称)アセットマネジメント計画」を策定します。そのうえで、これまで今後の整備のあり方について市民と対話しながら取り組んできた豊ヶ丘複合施設、東寺方複合施設については、それぞれ次のステップに向け、引き続き市民と一緒に検討を進めます。あわせて、市が保有する未利用地は市民共有の大切な財産であることから、今後とも暫定活用も含めて有効に活用するための検討を進めます。
 このほか、市役所本庁舎の建替えに向けては、障がい者団体、若者へのヒアリングや市民フォーラム、パブリックコメント等を通じて、市民の皆さんから様々なご意見をいただいたほか、市議会に設置された特別委員会とも意見交換をさせていただきながら、昨年11月に「多摩市役所本庁舎建替基本計画」を策定したところです。令和7年度においては、財政状況に鑑み、まずは防災指令拠点に相応しい基盤整備の計画づくりから始め、基本設計に繋げていきます。
 なお、これらの取組をはじめとする市政の動きについては、私の市長動画メッセージなど様々な媒体での情報発信の仕方についても工夫を行い、市民の皆さんにより伝わり、理解が得られるように努めていきます。

3 重点テーマへの取組

 第六次多摩市総合計画で掲げた3つの「分野横断的に取り組むべき重点テーマ」の取組についてです。

(1) 環境との共生

 昨年11月、アゼルバイジャンでのCOP29開催に合わせて、多摩第一小学校の体育館で、地球温暖化に関する国連広報センターによる特別授業が行われ、テレビや新聞でも大きく取り上げられました。参加者は、日頃から授業等を通じて再生可能エネルギーの活用に真剣に取り組んでいる子どもたちが中心でしたが、同センターの根本所長による講演や家庭や学校で取り組める気候変動対策について考えるワークショップなど、とても充実した時間になったそうです。「ひとりでは変えられないことも、みんなで取り組めば変えられる」という参加した子どもたちの言葉に、私たち大人が奮起しなければと、身の引き締まる思いです。まさに「意識と行動の変革につながるムーブメント」が重要です。子どもたちに負けないように、そして一緒に取り組む市民を増やしていくために、3年目となる気候市民会議をこれまでの蓄積も踏まえて取り組みます。
 また、市としても、市営関戸第一住宅の大規模改修にあわせた照明設備のLED化や窓ガラスの断熱ガラスへの変更、国や都の補助金を活用した公用車の電気自動車への入れ替えなどに率先して取り組みます。このほか、昨年、都内で初めて「脱炭素重点対策加速化事業」に選定された自治体として、計画に掲げた事業を推進するため、創エネルギー・省エネルギー機器等導入補助金のメニュー拡充や、集合住宅共用部へのLED照明器具導入補助金の創設など、市域全体の省エネ推進、再エネ導入の最大化に向け、市民や事業者の背中を押す取組を進めていきます。
 一方で、総合計画策定から1年余りの間にも、地球沸騰化ともいわれる気候変動は想像を超えて進んでいます。そうした中で、市民や議会からも声をいただいてきた総合体育館への空調設置については、まず第1スポーツホールへの空調設置を行います。なお、小学校体育館への空調設置については、条件等が整い次第、着手できるよう引き続き検討を進めていきます。

(2) 健幸まちづくりの推進

 健幸まちづくりを進めていくうえで基礎となるのは、市民の健幸的な生活の獲得を支援していくことです。昨年、議会に議決いただいた「多摩市みんなの笑顔が広がる歯と口の健康を推進する条例」が4月に施行を迎えますが、条例前文で掲げているとおり、歯と口には、食べる、飲み込む、話すなど、私たちが健やかで幸せに生きていくためにとても大切な役割があります。妊婦の健やかな妊娠生活を支援するため、妊婦歯科健診を集団方式から個別方式に改め、受診の利便性を高めるとともに、26市では初めての試みとして、そのパートナーも対象とすることで、妊婦とパートナーがかかりつけ歯科医をもつきっかけとし、出産後の子どもの歯と口の健康、口腔機能獲得などにもつなげていきます。また、30歳から70歳まで10歳ごとに実施してきた歯周病検診については、20歳の方も対象に追加します。成人期最初の歯科検診であり、その後の生活習慣病予防の観点からも重要な検診ともなることから、歯面清掃を追加することで受診率向上も図るなど、条例の施行を機会に、歯と口の健康を推進します。
 1月に施行した「多摩市手話言語条例」については、11月に東京都で開催されるデフリンピックを契機とした聴覚障がい者への理解促進も追い風とし、手話の理解促進や普及を進めます。
 さらに、昨年2つのアプリを活用して試行実施を行った「健幸ポイント」の取組についても、健康寿命の延伸を目指し、日々の健幸的な行動の継続につながるよう、高齢者や健康無関心層に向けたアプリを活用した取組を促します。また、移動の不安を抱えない「住み慣れた街でずっと暮らしたい」をかなえるために、引き続き「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」に協力し、移動の不安を解消するためのモビリティのさらなる実証実験に取り組みます。
 なお、来年度の東京都予算において、救急患者を受け入れる病院をはじめとする民間病院への緊急財政支援が盛り込まれることになりました。コロナ禍以後、私自身も令和3年度から毎年、都知事に直接、救急医療への運営支援の必要性を訴えてきたところであり、実現に向けて働きかけを行なっていただいた都議会各会派の皆さんと知事の決断に感謝申し上げます。また、南多摩保健医療圏の重要課題である日本医科大学多摩永山病院の移転・建替えについては、昨年末に医療圏構成5市で都知事に対し、建替えが実現するよう、財政支援に関する要望書を提出しました。引き続き市議会の後押しもいただきながら、東京都をはじめ、南多摩保健医療圏構成市とも連携し、対応を進めていきます。

(3) 活力・にぎわいの創出

 活力・にぎわいの創出に向けては、若い世代が希望をもって結婚・出産・子育てができる環境づくりが重要です。令和7年度は「多摩市子ども・若者・子育てプラン~第1期多摩市子ども計画/第3期子ども・子育て支援事業計画~」スタートの年度となることから、本市における「こどもまんなか社会」の実現に向け、市の強みはさらに伸長し、多様化・複雑化する子どもたちを取り巻く課題解決にも積極的に取り組んでいきます。昨年8月に幼稚園、保育園、子育て関連事業者、団体等と連携して初開催し、1万人以上の参加のあった「たまこどもフェス」に、令和7年度も取り組むとともに、他市に先駆けて取り組んできた国の「こども誰でも通園制度」と都の「多様な他者との関わりの機会の創出事業」を組み合わせた「多摩市こども誰でも通園事業」についても、国や都の制度改正を踏まえつつ、市内全域をカバーできるよう、実施園を大幅に拡充します。また、こども家庭センターを新たに聖蹟桜ケ丘の健康センター内に開設し、妊娠期から継続して子ども及び家庭の相談支援を行っていきます。
 多世代共生型のコミュニティ実現に向けた環境整備、しくみ・しかけづくりに取り組むうえでは、地域人材の発掘、育成は急務です。これまでのエリアミーティングなど地域の取組では、地域に関心はあったものの地域活動に参加できていなかった市民の発意で、多種多様なアイデアが市民から出されるものの、実行するための経済的支援がないことが課題となっています。このため、新たな地域人材の掘り起こしを通し、既存の団体の活性化や多世代・多分野による市民主体の地域づくりを一層推進するため、地域協創市民活動事業補助金を創設します。選定された事業については、補助金による支援だけでなく、職員による伴走支援もあわせて行う予定です。
 また、年度内に決定を予定している次期都市計画マスタープランでは、段階的に拠点性を高めていく区域として南多摩尾根幹線軸を、地域特性に応じた様々な都市機能が集積し、人々の交流や活動の中心となる都市拠点として、聖蹟桜ケ丘駅周辺、多摩センター駅周辺、そして永山駅周辺の3駅周辺を位置づけました。
 このうち聖蹟桜ヶ丘駅周辺は、聖蹟桜ケ丘駅が関戸駅として開業してから100周年、さらにアニメーションやキャラクターの活用を通じて、聖蹟桜ヶ丘の盛り上げに一役買っていただいている日本アニメーション株式会社も50周年とアニバーサリーイヤーとなっています。北地区における区画整理後の開発も遂に完了を迎えることを踏まえ、かわまちづくりによる河川空間を中心とした賑わいづくりとも一体となって、聖蹟桜ヶ丘地区の活性化に引き続き取り組みます。
 多摩センター駅周辺では、本市ではじめてのパークPFI事業である多摩中央公園が改修整備を終え、4月にグランドオープンします。これまでも市民の憩いの空間でしたが、大型遊具のあるインクルーシブな広場や遊びの森、大芝生広場、ケヤキハウスなど、これまで以上に誰もが楽しめる公園となります。パルテノン多摩、中央図書館やグリーンライブセンターなどの公共施設だけでなく、公共と民間が一体となって地区のにぎわい創出に取り組みます。
 永山駅周辺では、諏訪・永山地区で市として「多摩ニュータウン リ・デザイン 諏訪・永山まちづくり計画」のもと、リーディングプロジェクトを進めているところですが、UR諏訪団地では先行区の建替えが7月竣工の予定で、新規募集により若者世代の定住を促すことで、まちの活力・賑わいにつながることが期待されます。市も積極的に地域のコミュニティ形成に取り組んでいきます。また、東京都においても、1月末に「多摩のまちづくり戦略(案)」を公表し、同地区のまちづくりを先行プロジェクトとして位置づけ、まちづくりを先導し地元自治体の取組を後押しするとしています。引き続き、永山駅周辺再構築や南多摩尾根幹線沿道の土地利用転換について、東京都や関係者と一緒に検討を深めていき、医療機能や生活サービス施設がコンパクトに集積している都市構造を踏まえ、拠点としての魅力の維持・向上を図ります。
 このほか、市内の活力・にぎわいの創出に向けては、今議会に企業立地促進条例の改正を提案します。宿泊業界の立地動向を踏まえた要件の見直しを行うことで、宿泊機能の確保を目指します。

4 政策別の主な取組

 総合計画の基本構想に定めた「分野別の目指すまちの姿」の実現に向けては、基本計画のもと各分野の政策の実現に取り組んでいきます。
 「子どもの成長をみんなで支え、ともに生きるまちの実現」に向けては、子どもが通い慣れた小学校で、放課後も安全に活動できる放課後子ども教室の週5日実施校を拡大し、学童クラブの待機児童が多く生じている2校で新たに開始します。児童館の将来構想の実現に向けて取組を進めることと合わせて、子どもが自ら遊びや学びの機会を持つことや学年を越えた交流、学びから創造力や自主性などが育まれる環境を整えます。また、入級希望が増え続ける特別支援学級へのニーズに対応するため、令和8年度に中学校1校に自閉症・情緒障害特別支援学級を開設できるよう、必要な施設整備を行います。そのほか、学校給食センター建替え等の学校関連施設の整備や不登校総合対策、中学校部活動の地域連携・地域移行等を引き続き進めます。
 「支え合いのなかで、いつまでも安心して暮らせるまちの実現」に向けては、恒常的な人材不足と職員の高齢化ヘの対応が課題となっている障害福祉サービスの提供に係る人材の確保とサービスの質向上を目的に、職員の資格等取得に係る費用助成を開始します。あわせて担い手不足への取組として、民生委員活動への大学生によるサポートの実施など、新たな取組にもチャレンジしていきます。また、認知症の方の社会参加を推進していくため、理解促進やオレンジパートナーの育成、居場所の開拓等を実施します。
 「地域で学び合い、活動し、交流しているまちの実現」に向けては、年度内に策定する「多摩市多文化共生推進基本方針」のもとで、初級レベルの日本語学習を必要とする方に向けた日本語教室や、市民に向けたやさしい日本語ワークショップ等のコミュニケーション支援のほか、相互理解や交流の充実による意識醸成と地域づくりに取り組みます。また、本年は友好都市である富士見町の町制施行70周年記念の年であり、5月の記念式典に合わせて本市として祝意を示す取組を行います。このほか、「(仮称)第二次多摩市読書活動振興計画」を策定し、中央図書館を中核とした市内図書館のネットワークにより、市民の「読む」「知る」「学ぶ」をさらに支援していきます。
 「みんながいきいきと働き、集い、活気と魅力あふれるまちの実現」に向けては、市内企業在職者向けのDX及び業務効率化に関する講座と参加者による交流会の開講を通じて、DXに関する知識のみならず、市内企業同士の横の繋がりを持つ人材を育成し、市内企業の課題の1つである生産性向上や人材の定着化を支援します。
 「みんなが安心して快適に住み続けられるまちの実現」に向けては、自助・共助力の向上と自主防災組織の再活性化を促すうえでの課題のひとつである、防災倉庫の老朽化や拠点増設に対応するとともに、自治会等が設置する防犯カメラへの費用の支援を行います。また、下水道の治水対策方針の策定を進めます。
 「地球にやさしく、水とみどりとくらしが調和したまちの実現」に向けては、令和6年度に開始した市民参加型の生きもの調査において、これまで市域では確認できなかった種の観察記録等、成果が上がっていることを踏まえ、この調査結果を電子版リーフレットなどにまとめ、わかりやすく市民に伝えていくことで、生物多様性の保全に向けた意識啓発を進めていきます。また、みどりの拠点から環境の拠点へと、新たな体制でリニューアル・オープンを迎えるグリーンライブセンター、来年度は実施設計に進む連光寺六丁目農業公園についても、それぞれ施設整備にとどまらず、人と人とをつなぐ環境の拠点として、あるいは貴重な湿地の環境保全を大前提に多様な主体が関わる魅力的な農業公園とすべく、取組を進めます。

5 むすびに

 私たちの食生活、車への給油など、日々の暮らしで物価高騰を感じる場面が多くなってきました。気候変動による農業や漁業、畜産業への影響やエネルギーコストの上昇、人手不足などの不安定要素は各業界に共通しています。また、1月に政府の地震調査委員会は、従来は「70%から80%」としていた南海トラフ巨大地震の今後30年以内の発生確率を「80%程度」に引き上げました。首都直下型震災もいつ発生してもおかしくないという状況にあります。感度をあげ警戒を強めていかなければなりません。あらゆる場面でリスクマネジメントに基づく経営姿勢が求められています。
 あわせて将来を見据えていくことも必要であり、冒頭、自動運転バスや移動モビリティの話をしました。安心して利用できる公共交通を維持・発展させていくためにも、国や東京都には、さらなる技術開発・研究への投資を積極的に行ってもらいたいと要望していきます。また、私は、昨年来、聖蹟桜ヶ丘と羽田空港とを多摩川の河川上空で結ぶ「空飛ぶ車」構想について東京都はじめ関係各所で提案してきました。東京都の都市整備部門の担当責任者からは、「空飛ぶ車」の実運用は「もはや夢物語ではない」との話をいただいています。本市としても時代を見据え、果敢にチャレンジし、新しい時代を先頭に立って切り開いていく決意です。
 令和7年度からスタートする「多摩市産業振興マスタープラン」では、このような時代状況を見据えながら、これからも本市がビジネスの場、働く場として「選ばれるまち」であり続けるため、「主体的な行動と協創により理想をかなえるまち」を目標として掲げました。物価高騰、人手不足などの課題に市としてあらゆる手法を行使して対応し、創業や起業等を後押ししていきます。
 1月に多摩中学校で開催された「多摩市子どもみらい会議」では、参加した各校の子どもたちから、数多くの提案が発表され、「誰一人取り残さない」SDGsの目標達成年である2030年を目指し、「多摩市民一人一人がまちづくりに参加しているという意識をもって行動に移そう。」というメッセージがまとめられました。自分たちに何ができるだろうかと真剣に議論する未来を担う子どもたちに頼もしさを感じました。子どもたちの提案の中には、市として早急に取り組む必要があるものも含まれていたことから、関係各課でできることに着手していきます。
 また、本市が友好関係を深めているアイスランドでは、昨年、二人目の女性大統領となるハトラ・トーマスドッティル大統領が就任されました。市民の皆さんが心豊かな生活を送れるような環境づくりを進めていくため、来日された折には、実業家でもある大統領から、男女平等15年連続第一位のアイスランドの歴史を学び、本市が進めているジェンダー政策や「健幸まちづくり」を深化させ、多摩商工会議所と連携し進めている健康経営など各種施策をさらに前進させていきます。
 そして、多摩村、多摩町、多摩ニュータウンの草創期から市民の皆さんの発意により創造されてきた文化・芸術活動についても、令和7年度からスタートする「多摩市文化芸術振興計画」に基づき、街なかやコミュニティの中で音楽や舞踊そしてアート、アニメなどが奏でられるまちづくりを市民、サンリオピューロランド、日本アニメーション、パルテノン多摩をはじめ多くの関係者と進めていきます。
 最後に、昨年16年ぶりにJ1リーグに復帰した東京ヴェルディは、6位という好成績でフィニッシュし、今月から2025年シーズンの火蓋が切られました。市民サポーターの皆さんと共に「美味しいビールを飲もう!」と引き続き声を張り上げ応援していきます。市政運営には前途多難な課題がいくつもありますが、東京ヴェルディのアグレッシブな闘いに学び、共に活路を見出し頑張っていく決意です。
 「つながり 支え 認め合い いきいきと かがやけるまち 多摩」の実現に向け、市民そして市議会の皆さんのご理解とご協力を得て取り組んでいくことを宣言し、施政方針演説といたします。

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