令和5年度施政方針(令和5年3月阿部市長)

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ページ番号1010439  更新日 2023年3月16日

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(注)本文書は筆記録ではございませんので、当日、市長が述べた文言と若干の相違点があります。

 令和5年度の市政運営について、所信を申し述べ、主権者である市民の皆さん並びに市議会の皆さんのご理解とご協力を賜りたいと存じます。

 施政方針に先立ち、去る2月1日に逝去された名誉市民でもある臼井千秋元市長に、謹んで哀悼の意を表します。

 教育委員、町議会・市議会議員を経て、昭和54年5月から5期20年にわたり市長の職を務められた臼井元市長は、多摩ニュータウン開発という時代の大きなうねりの中で、郷土と市政の発展のためにひたむきな情熱を傾け、多摩市の発展と市民福祉の向上に大きく貢献されてきました。葬儀の席と同じく、昨日まで庁舎に設置した記帳所においても、臼井元市長との別れを惜しむ多くの市民の姿がありました。生前のご功績とともにそのお人柄が偲ばれます。

 一昨年、市制施行50周年を迎えた本市が、次の50年に向けて取り組むことができるのは、臼井元市長をはじめとする先人たちのたゆまぬ努力が積み重ねられてきたおかげです。そのことを胸に刻み、臼井元市長のご冥福をお祈りするとともに、臼井元市長が蒔かれた「一粒の種」を引き続き大事に育ててまいります。この思いを継承し、私自身、市長として、これからのまちづくりに誠心誠意、情熱をもって取り組んでまいります。

第1 はじめに

 私は、1年前の施政方針演説の冒頭、核超大国であるロシアによるウクライナへの軍事侵攻について抗議と遺憾の意を示し、一日も早い攻撃の停止と撤退を求める緊急の所感を述べました。しかしその後、事態はさらに悪化し、ロシアは一方的にウクライナ東部・南部4州を併合するなど国連憲章と国際法を踏みにじる蛮行を重ね、多くの戦死者・犠牲者、戦争難民を生み出しています。改めて、平和を希求する多摩市としてプーチン大統領に攻撃の停止と即時撤退を求めます。
 また、私は、昨年、3年ぶりに「子ども被爆地派遣事業」で小・中学生と広島を訪問し、核兵器廃絶と戦争のない世界、そしてウクライナに平和をと祈ってきました。この「子ども被爆地派遣事業」に参加した子どもたちが地域や学校などで平和の伝道者として活動を始めています。昨年は、市制施行50周年記念も兼ね、派遣経験者であるOBOGの皆さんに再度、被爆地に行っていただくプログラムを実施しました。若い世代が被爆地で新たな出会いや学びを重ね、「多摩市平和展」などで平和の尊さを発信し続ける意義を改めて認識したところです。多摩中央公園に根付いた「被爆2世アオギリ」とともに多摩市の平和への想いを未来に繋ぐ若い後継者を育てていかなければなりません。
 昨年12月、アイスランド共和国のグズニ・ヨハネソン大統領が多摩市を訪れました。ジェンダー平等、気候危機について意見交換を行い、「アイスランドは最初からジェンダー平等社会であったわけではない。男性が家事・育児を自然に行うようになるまで女性たちの長い闘いがあった」と話されました。
 日本でも、ヤングケアラー、8050問題などの解決が叫ばれ、本市でもヤングケアラーの実態調査などに動きだしています。私は、家庭・家族だけでケアの責任や負担を負うのは当たり前という固定観念に日本社会が長く支配されてきたことに要因があると考えています。こうした状況から抜け出さなければ、当事者の悩みや孤立感はさらに深まるばかりです。
 また、コロナ禍において、私たちの働き方、ライフスタイルも大きく変わりました。オンライン、テレワーク、キャッシュレスをはじめ本格的なデジタル社会に突入する中で、これまで築いてきた文化や芸術、地域社会など社会の在り様を新たな生活様式やビジネスモデルなど持続可能な未来にどのようにつなげていくか、まさに時代の転換点を迎えています。
 さらに、Well-beingという言葉をよく聞くようになりました。多摩市では「健幸まちづくり」として既に取り組んでいますが、私たち一人ひとりの心と体の健康は勿論のこと、全ての土台となる地球環境のことも考えていかなければなりません。これまでの新自由主義的な市場経済を重視した経済成長モデルから、多様な生命と暮らしを大切にした分かち合いの環境共生社会へと転換していく時期に来ています。
 このような環境共生社会を推進していくためにも、市議会の皆さんと一緒に「気候非常事態宣言」を行った自治体として、持続可能なグリーンインフラの取組をさらに推進するとともに、私たちが日々排出しているごみにも目を向け、その多くが廃棄物ではなく資源という意識を改めて確認したいと考えています。
 現在、第六次多摩市総合計画基本構想を審議会で論議していただいていますが、コロナ禍を通して、社会が大きな転換点を迎えていることを踏まえ、行政のDXを進めるとともに、環境に優しい共生社会、地域協創など地域コミュニティをベースに活発な対話が交わされる市民主体のシビックプライド溢れるまちづくりを進めていかなければなりません。
 さらに、これまで以上にしっかりと子どもや若者たちの声に耳を傾け、物価高騰、光熱費の上昇などから市民の暮らしと生命を守る、最も市民に身近な地方政府として、引き続き臨機応変かつ機敏に対応してまいります。

第2 市政運営における基本的な考え方

1 物価高騰と出生数80万人割れのインパクト

 昨年は、長引くコロナ禍に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻に伴う原油や穀物などの価格高騰に、急速な円安の進行も相まって、市民生活は物価高騰に見舞われました。市としてもこれに対する対策に取り組んできましたが、今後の動向を注視していく必要があります。
 併せて注目しなければならないのが、岸田首相が「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトにして掲げる経済政策「新しい資本主義」の行方です。首相は年頭に、経済界に対してインフレ率を上回る賃上げを要請しました。好循環を生み出していくためには、大企業だけでなく、日本の産業の中心を占める中小企業で働く人や非正規で働く人たちにも波及していくことが重要と考えています。
 今後、物価高騰の波が落ち着いていくのか、市としてもその動向を注視し、臨機応変に対応していきます。
 また、昨年の出生数が、国の想定よりも早く80万人台を割り込む見込みとなったことで、岸田首相や小池都知事からも強い危機感で取り組んでいく方向が示されました。4月からはこども家庭庁も発足し、こども施策が省庁の縦割りを脱して進められることは歓迎しています。東京都の18歳以下への月5,000円の一律給付が注目されていますが、あくまでも一連の政策の一部としています。フランスや北欧諸国などでは、国を挙げて少子化に対応した例もあります。子どもは社会全体の宝でもあり、国、都道府県、市町村が役割分担しながら取組を進めていくことが重要です。子ども施策に対する恒久的な財源の確保や働き方改革など国にしかできないことに期待を寄せつつ、基礎的自治体である本市としても妊産婦に寄り添った支援の充実、子どもたちの放課後の過ごし方の充実に向けた検討、所得制限のない医療費助成制度の高校生世代までの拡充や三世代近居・同居促進助成制度の使い勝手の改善、公園への遊具の新設・更新など、市民に身近な分野での子育て・子育ち環境の充実につながるさまざまな施策を講じていきます。

2 市政運営の基本姿勢

 令和5年度は、第3期の基本計画を推進してきた第五次総合計画から、現在策定を進めている第六次総合計画へと切り替えを迎える年度です。また、総合計画だけでなく、都市計画マスタープラン、みどりと環境基本計画、産業振興マスタープランをはじめ10を超える計画や方針などの策定または改定作業が本格化し、市民の参画を得ながら各分野においても大きな方向性を見出していく、いわば次の50年に向けて新しい未来への基盤をつくる年度です。これから先の未来を見据えたとき、温暖化をはじめとする気候変動や地球環境の問題、少子化・高齢化の更なる進行による人口減少など、さまざまな問題にいかに取り組み、持続可能で活力のある社会を構築していくかが重要となります。不確実な時代に対応した変革を進めていきます。
 SDGsが目指す「誰一人取り残さない社会」の実現に向けて、「多摩市障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例」、パートナーシップ制度、「多摩市子ども・若者の権利を保障し支援と活躍を推進する条例」を整備してきました。当事者の皆さんにとって、そしてすべての人にとって、住みやすく暮らしやすい多摩市の実現を目指していきます。
 また、新型コロナウイルス感染症については、この3年間、毎年度10回を超える補正予算を編成し、ワクチン接種体制の整備のみならず、コロナ禍におけるさまざまな市民生活への支援策、経済対策や原油価格・物価高騰対策などにも取り組んできました。今年、3年ぶりに行動制限のない新年を迎え、基本的な感染対策を徹底しながらのニューノーマルが定着してきました。水際対策の緩和などにより変異株による再流行への懸念もありますが、保健医療提供体制の状況、子育て・教育、福祉・介護などの各現場の状況を注視し、市民の生命を守るためにしっかりと備えていきます。
 なお、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けを見直すことについては、私自身も必要なことと認識していますが、このことに伴うワクチン接種の公費負担をはじめとする具体的な影響に対しては、住民に最も近い最前線に立つ基礎的自治体の首長として、引き続き国や東京都に対して必要な声をあげていく所存です。

3 これからの50年に向けて、市民とともに進める取組

(1) 健幸都市の実現を目指して

 本市では、国に先駆けて、市民の「健康」と「幸せ」を掲げ、第五次総合計画第3期基本計画においては「健幸まちづくりのさらなる推進」を「基盤となる考え方」に位置付け、全庁で取組を進めてきました。この数年は、コロナによる影響も大きく受けましたが、感染対策に配慮した健幸まちづくりの取組やその基盤となる施策は着実に進めてきています。行動制限がなくなり、社会経済活動が戻りつつある今こそ、まちぐるみで健幸まちづくりを強力に推し進めていく必要があると認識しています。
 介護予防の分野においては、昨年、「多摩市地域介護予防教室」が、厚生労働省主催の「私のまちの『通いの場』自慢コンテスト」で優秀賞を受賞しました。市民主体のまちぐるみの活動が評価されたことは、健幸まちづくり、そして、健康二次被害対策に取り組む市民を勇気づけるものであり、大変喜ばしい成果でした。引き続き、健康づくり推進員やスポーツ推進委員の皆さんとともに、健康維持を図るための取組も進めていきます。
 また、現役世代の健幸まちづくりとして取り組む健幸ワーク宣言については、市制施行50周年記念イベントとして、昨年7月に宣言式を実施し、商工会議所を筆頭とした市内の事業所、大学等の参画を得て、その意義を共有しました。今後さらに宣言企業が増えるよう、普及促進に取り組んでいきます。
 健幸まちづくりを開始した当初から取り組んでいる「多摩市版地域包括ケアシステム」においては、分野別、対象者別の相談支援体制では対応が困難な市民に対して、多様な機関が横断的に連携し、適切な支援に結び付けること等を目的に多摩市版地域包括ケアネットワーク連絡会を、昨年、設置し、本年からは、代表者会議・エリア別情報交換会・事例検討会の3つの会議体による相談支援体制を始動させます。
 また、本市では、妊娠期から産後にかけてのきめ細かなケア、地域密着の子育て支援体制など、子育て環境の充実に取り組んできました。「子育てしやすいまち・多摩」を名実ともに打ち立てるため、全庁をあげて、良好な子育て環境への取組、若者・子育て世代に魅力的なまちづくりに一層積極的に取り組んでまいります。

(2) 環境共生型都市を目指して

 市議会とともに宣言した、「多摩市気候非常事態宣言」に基づく取組も全庁一丸となって推進します。
 気候変動への取組はいよいよ待ったなしの状況であることから、都内初の脱炭素先行地域への選定を目指し、多摩センター駅周辺地区などを対象エリアとして国の募集にエントリーしました。応募に当たっては多くの企業・事業所ともコンタクトをとってきましたが、企業レベルでは、それぞれに脱炭素に取り組んでいる状況も把握できました。選定結果は今春に発表される見込みですが、市民、事業者も巻き込んだ取組を推進していきます。
 4月からはペットボトルの水平リサイクルを民間企業との協定に基づき進めるとともに、子どもたちに水の大切さを伝える出張環境教育などにも取り組みます。また、マイクロプラスチック問題は日常生活の中で使われているあらゆるプラスチックがその原因となり得ます。プラスチックごみの発生抑制やリサイクル、テニスコートの人工芝の流出抑制などにおける民間企業と連携した取組に加え、市内で既に取組の機運が盛り上がっている川ごみ清掃などの市民活動を支援し、環境配慮行動のムーブメントを創出してまいります。

(3) 活力とにぎわいのある都市を目指して

 まちに活力をもたらすのは人です。
 高齢化の進行、定年延長や非正規雇用の増加などの労働環境の変化、地域を取り巻く課題の複雑化・多様化、そしてコロナ禍での生活様式の変化など、さまざまな要因が相まって、本市がこれまで進めてきた「参画」、「協働」によるまちづくりは転換を余儀なくされています。次代のまちづくりの担い手である若い世代の市民の意識には大きな変化が生じてきており、市民主体のまちづくりを将来にわたって持続していくためには、時代の変化に合わせた新たな「しくみ」や「しかけ」が必要であると考えています。
 リタイヤ世代などを中心に推進してきたこれまでの担い手づくり、地域づくりから、対象を子どもたちからシニア世代までの幅広い世代に広げ、多世代が関わることができる、共生型コミュニティをつくっていくことを目指し、現在進めているモデルエリアでの取組を深化させながら、エリアごとのプラットフォームのあり方や地域担当職員の配置など、「(仮称)地域協創」のしくみやしかけづくりに取り組んでいきます。
 また、令和5年度は、まちのにぎわいを創出し、継続させる取組として、これまで着実に進めてきたまちづくりの取組が花開いていく年となります。
 市内主要3駅周辺地区の活性化の推進のうち、多摩センター駅周辺地区では、昨年のパルテノン多摩のリニューアルオープン、本年7月の中央図書館の開館、そして現在は多摩中央公園の改修事業も進んでいます。聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区では、昨年、地域の自治会や団体、事業者を中心に発足した「聖蹟桜ケ丘かわまちづくり協議会」とともに、さらに社会実験に取り組み、持続可能なスキームの検討を進めていきます。現在整備中の芝生エリアは養生期間終了後に既存の一ノ宮公園のエリアとあわせた活用を図り、公民連携による水辺空間を活かしたまちづくりを展開していきます。永山駅周辺地区では、既存の永山駅周辺拠点勉強会のほか、東京都と市が新たに設置した諏訪・永山再生プロジェクト検討会議により、諏訪・永山まちづくり計画の推進を図ります。日本医科大学多摩永山病院の建替えについては、地域医療の観点とともに、にぎわいや活性化の観点からも期待する声が聞かれることから、しっかりと対応してまいります。

第3 持続可能な都市経営

1 人口減少を見据えた行財政運営

 国や東京都とともに少子化対策に取り組みながらも、一方で今後の人口減少を見据えた行財政運営が求められています。
 高齢化の更なる進行に伴い、社会保障関係経費が増加する傾向は変わらないことに加えて、今後、大型施設を中心に多くの公共施設等が更新時期を迎えます。こうしたことを念頭に、持続可能な行財政運営を目指し、(仮称)第十次行革計画を策定します。
 また、市税収入は回復基調にありますが、コロナ前の水準まで回復するかどうかは不透明な状況であり、今後の動向を見通しながら、丁寧かつ迅速・果敢な財政運営を進めていきます。
 本市のDXは、市民の利便性の向上を図る「くらしのDX」、デジタルで業務改革を図る「行政事務のDX」の両面で推進しています。くらしのDXとして行政手続きのオンライン化など非来庁型サービスをより進めていくため、統合型・公開型GISを導入し、市民に対するデジタルによる情報提供を拡充するとともに、システム運用の効率化を図ります。また、電子図書館の充実を図ります。行政事務のDXについては、行政サービスのさらなる向上と新庁舎の整備に向けた新たな行政サービスの構築、税収の減少などを見込んだ抜本的な業務の見直しと効率化などの課題解決に取り組むべく、(仮称)DX推進計画を策定します。
 「ひとにやさしいデジタル化」の視点では、引き続き高齢者向けのスマホ教室の開催などデジタルデバイド対策に取り組み、誰一人取り残さないデジタル化の視点を持ちながら取組を進めていきます。
 これらのことをハード・ソフト両面から進めていくため、新たに行政サービス・アセット担当部長、DX推進担当課長、新庁舎整備担当課長を設置し、推進体制を整備します。
 また、令和5年度から、職員の定年年齢を段階的に65歳に延長します。経験豊富な職員の知識・経験・技術を積極的に活用しながら、若い世代へベテラン職員のノウハウを確実に継承し、職員の人財育成を図るとともに、組織力を高め、多様な行政ニーズにきめ細かく対応していきます。
 シティセールスについては、市外に向けて、「多摩市の魅力的な情報」をさまざまな媒体を通じて発信してきた結果、各種民間ランキング調査では、ここ数年ランクアップしています。一層の情報発信力の強化を図るため、情報発信戦略及びシティセールス戦略に基づく取組を進め、職員一人ひとりが広報及びシティセールスパーソンであるというマインドを高めるとともに、わがまち意識の醸成や市外への情報発信などを推進します。また、新たな取組として、まちの姿が変わりつつある聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区にスポットをあて、魅力やポテンシャルの発信を、企業や市民を巻き込みながら進めていく取組にチャレンジし、今後はさまざまな場面で、多様な主体と一緒に「くらしに、いつもNEWを。」を体現する多摩市を発信し続けてまいります。

2 市役所本庁舎の建替えに向けた基本計画の策定

 令和11年度の本庁舎の建替えを目指し、2月に「多摩市役所本庁舎建替基本構想」を策定しました。この基本構想では、現庁舎の課題や本市の将来展望、市民ニーズの変化、まちづくりの方向性を踏まえ、本市が目指す将来の市民サービスの姿と、それを支える市役所全体の姿、そして、それを実現する本庁舎像を明らかにするとともに、基本機能や建設規模の考え方などを整理し、長年の懸案課題であった位置については、現在地とする決断をしました。
 令和5年度は、この基本構想で掲げたビジョンの実現を目指し、本庁舎の建替えを具体化する基本計画の検討に着手します。基本計画の策定にあたっては、若手職員の参加機会をつくるとともに、市民の声や防災、DX、環境などの専門家の助言も得ながら、施設計画などを検討し、規模や事業費の精査にも取り組んでいきます。
 なお、本庁舎の建替えまでには一定の期間を要する中で、現在の本庁舎の狭隘化により顕在化している来庁者の通行や、窓口でのプライバシーの確保などの課題解決を図るため、庁舎内のレイアウト変更等による狭隘化対策を引き続き実施します。

第4 分野別の取組

1 子ども・学校教育分野

 「多摩市子ども・若者の権利を保障し支援と活躍を推進する条例」の施行から間もなく1年が経とうとしています。国においても「こども基本法」が来月から施行されますが、国に先んじて取組を進めてきた自治体として、条例の基本理念の普及に努めます。特に、主役である子どもたちに内容を理解してもらうため、条例の副読本を電子版で作成するとともに、子ども・若者が気軽にWEB上で意見表明できる環境を整えます。また、昨年末に任意での記名方式を採用して実施したヤングケアラー実態調査も踏まえ、子ども家庭支援センターにおけるヤングケアラーへの支援体制を整備します。
 令和5年度からは、高校生等医療費助成制度もスタートします。制度設計した東京都では所得制限を設ける制度としましたが、本市では子ども医療費助成制度と同様、所得制限を設けることなく実施します。なお、本制度については、令和8年度以降の東京都による負担の在り方が課題となっており、私も市長会を通じて率先して負担を求めていきたいと思います。
 生活保護受給世帯の子どもたちに対しては、塾費用の補助について、これまでの償還払いに加えてスタディクーポンでの支払方法を追加するとともに、コーディネートのしくみを導入してよりきめ細やかな学習支援を行います。
 保育園における使用済み紙オムツの持ち帰り問題については、各園が保護者に持ち帰りを求めなくても済むよう、各保育園が取り組みやすい環境を整えます。
 「放課後子ども教室」は、子どもたちの放課後の過ごし方の充実を図るための検証を行います。まずは、小学校2校で委託事業による試行を行います。
 妊産婦に対しては、産後の育児不安やメンタル不調、愛着、家庭に関する課題など、抱えている背景についても多様化しており、産後ケアの支援ニーズが高まっていることを踏まえ、これまで行ってきた通所型産後ケア事業を拡充し、アウトリーチ型産後ケアを実施します。さらに出産・子育て応援交付金事業を行い、このような支援体制に必要な方がつながれるよう伴走型相談支援体制を確立し、出産・子育て応援ギフトを支給する経済的支援とともに一体的に実施します。
 建設後58年が経過する多摩第三小学校は、校舎建替基本計画の策定に向けて、市と学校関係者、児童保護者、地域との協議及び情報交換を経て合意形成を図ります。併せてこれまで計画的に進めてきた学校改修を進め、子どもたちの学びの環境整備に取り組みます。
 昨年度全校試行実施した、小学校水泳指導の外部委託事業については、本年度より全校本実施とし、引き続き授業内容の改善や課題などの解決に取り組んでいきます。また、学校現場における教員の働き方改革に資するように、副校長補佐職の配置などに取り組むとともに、スクールソーシャルワーカーを増員し、学校への派遣型から巡回型へと体制を変更します。
 加えて冒頭申し上げた物価高騰を受け、学校給食においても、食材料の高騰により今後、給食費全体の改定は行わざるを得ない状況にあります。令和5年度については、改定額の適用を教職員など大人の給食費のみとし、児童・生徒については値上げ分を公費で負担することとします。

2 健康・福祉・保健・医療分野

 令和5年度からは、今後6年間における多摩市の地域福祉の方向性を定め、地域福祉のより一層の充実を図ることを目的とした次期地域福祉計画がスタートします。多摩市が目指す健幸都市の実現に向けて、庁内横断的に施策を進めていきます。また、令和5年度は、第9期高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画や、障がい者基本計画、第7期障害福祉計画・第3期障がい児福祉計画の策定なども進めます。国や東京都の動向を注視し、関係機関の意見を聞きながら議論を深めていきます。
 令和5年度からは、新たな条例の検討にも取り組みます。ひとつは、コロナ禍における自粛下での歯科口腔環境の悪化、成人期・高齢期における歯科疾患予防のニーズ増加等を踏まえ、歯科口腔保健の推進に関する施策を総合的に推進し、市民保健の向上に寄与することを目的として、令和6年度中の制定を目指し、(仮称)多摩市歯科口腔保健推進条例の策定に着手します。もうひとつは、手話が一つの言語であるという認識の下、手話に対する理解の促進を図り、手話を必要とする人もそうでない人も、安心して生活することのできる共生社会の実現に寄与することを目的として、(仮称)多摩市手話言語条例の制定に向けた検討を開始します。
 困難を抱える人たちに対して寄り添う取組も進めます。ひきこもりの方に対しては、新たに、ひきこもり当事者の方が自宅以外で日中を安心して過ごすことができ、他者との関係構築などの経験を積むことができる居場所事業を「しごと・くらしサポートステーション」で行います。居場所の利用を契機に、個々の特性に応じた支援を行うなど充実を図ります。また、がん治療に伴い外見が変化したことにより、外出の機会が減少し、他人との関わりを避けるなどして、社会生活が困難となる方も少なくありません。このことから、がん治療に伴う心理的負担を軽減するとともに社会参加を促進し、療養生活の質の向上を支援することを目的に、ウィッグ及び補整具の購入または借受けに要する費用の助成を開始します。
 コロナ禍で全国の自殺者数が減らないなか、社会不安の増大に伴う心のケアを今まで以上に行っていくためにも、令和5年度に自殺対策推進計画「いのちとこころのサポートプラン」の改定作業に着手し、総合的な自殺対策の更なる推進・強化を図ります。
 このほか、令和2年7月に施行した「多摩市障がい者への差別をなくし共に安心して暮らすことのできるまちづくり条例」に基づき、差別解消、共生社会の実現に向けた取組を進めます。特に子どもの頃からの障害理解を深めるための「子ども向けハンドブック」の活用や事業者による合理的配慮の提供を促進するための市独自の助成等を実施します。
 受動喫煙防止の取組を推進するため、市内4駅周辺の受動喫煙防止重点区域や小中学校周辺の道路及び公園を巡回して周知啓発を行います。
 令和元年度に策定した「多摩市版地域医療連携構想」を推進するため、関係者で協議するとともに、医療リテラシーの啓発を図るための講演会を実施し、かかりつけ医療機関を持つことの大切さなどを啓発します。また、日本医科大学多摩永山病院の建替えについても、地域医療政策の観点をしっかり踏まえた取組を進めていくため、市として旧多摩ニュータウン事業本部の解体工事を進め、引き続き、移転・建替えの実現に向けて学校法人と協議してまいります。

3 コミュニティ、社会教育・生涯学習分野

 本年7月に、「知の地域創造」の拠点として、また駅前拠点館や地域館も含めて、全市的な図書館サービスのさらなる向上の中核として、中央図書館を開館します。市民、各種の団体と連携した開館記念イベントを行い、多くの市民に利用される施設として、安定的な運営をしていきます。また、中央図書館の開館を機に、ミニバス東西線のルート変更を行い、パルテノン多摩や中央図書館へのアクセス性も高めます。
 多摩市に暮らす外国人を地域社会の一員として受入れ、誰もが安心して生活することのできる多文化共生社会の実現に向け、「多文化共生推進基本方針」の策定に向けた準備をすすめます。
 昨年4月に施行した、多摩市みんなの文化芸術条例に基づき、「(仮称)多摩市文化芸術振興計画」の策定に着手します。計画をより実効性のあるものとするため、計画着手前に多摩市の文化芸術の10年後を見据えた将来ビジョンを策定します。
 本年12月には、多摩地域で東京2020大会レガシーとなる自転車ロードレースが開催される予定であり、こうしたスポーツイベントを支えるスポーツボランティアのしくみづくりに着手していきます。
 次世代への平和の承継を目的に平成25年から開始した「子ども被爆地派遣事業」は、昨年、市制施行50周年記念事業として歴代の派遣員を広島へ派遣しました。現役派遣員のサポートとともに、若者世代の視点で平和の尊さを伝えていくことを目的に、令和5年度も歴代派遣員を長崎へ派遣します。

4 産業振興・観光分野

 技術の革新、消費行動や働き方の変化など、社会情勢は目まぐるしく変化し続けている状況を踏まえ、今後も多摩市が経済活動の場として「選ばれるまち」であり続けるために、長期的な視点による産業振興の方向性を示し、計画的に産業振興施策を進めていくことを目的に「(仮称)多摩市産業振興マスタープラン」の策定に着手します。また、平成31年3月に策定した多摩市都市農業振興プランについて、関係者の参画も得ながら中間見直しを行います。
 市内中小企業のデジタル人材育成支援及びDX推進を目的に、デジタル人材育成支援事業を実施します。また、コロナ禍で取り組んだ市独自事業に加え国や東京都の施策を紹介する事業者向けダイレクトメールが好評だったことを踏まえ、引き続き実施していきます。
 このほか、ふるさと納税については所管を移し、産業振興策として取組を強化していきます。
 多摩センター駅周辺地区では、中央図書館の開館やハローキティストリート・しまじろう広場制定10周年記念を軸としたハローキティにあえる街事業を展開するとともに、多摩センターの将来ビジョンの策定に向けて、令和4年度に市民などから集めた「まちのつかいかたの声」をもとに、社会実験的に取り組んでいくことにより、まちの「使い方の創出」、「人材の発掘」につなげていきます。
 聖蹟桜ヶ丘駅周辺地区では、かわまちづくりの一環として、今年度に引き続き社会実験を行い、居心地の良い水辺空間づくりを進めるとともに、せいせきみらいフェスティバルの実施を支援します。

5 防災・都市づくり分野

 近年、気候変動による影響で、短時間での降水量の増加による河川氾濫や土砂災害などが、全国、そして全世界で相次いでいます。「線状降水帯」というこれまでに経験のない波状的局所豪雨も各地で発生しているとともに、昨年末においては、日本海側に災害級の降雪が発生しました。また、昨年、市内では火災による死者も発生しました。水利の確保が困難な場所でも消火活動が行えるよう、消防団の装備の充実を図るため、ジェットシューターを導入します。市として、市民の安全・安心を守るため、引き続き、防火・防災に取り組みます。
 防災対策として通学路などの道路沿いに面したブロック塀の倒壊等による事故を防ぐため、市内の危険なブロック塀等の撤去費用の一部を補助します。加えて、聖蹟桜ヶ丘駅周辺においては、災害時における電柱の倒壊を防ぐため、多摩市無電柱化推進計画により位置付けられた路線において無電柱化事業を実施します。
 また、近年の降雨の局地化・集中化・激甚化や、都市化の進展等に伴い、令和元年台風19号をはじめとした浸水被害が全国で多発していることを踏まえ、多摩市下水道総合治水対策方針の策定に向けて、浸水対策としてのハード対策・ソフト対策について検討を進めます。
 都市づくりでは、その根幹となる都市計画マスタープランの改定に引き続き取り組みます。また、多摩センターの将来ビジョンの策定を踏まえた(仮称)多摩センター地区まちづくり方針や多摩センター駅周辺地区都市再生整備計画などの策定に着手します。
 ニュータウン再生の取組については、南多摩尾根幹線沿道土地利用方針に基づく諏訪・永山沿道エリアの将来像を検討するためのプラットフォームを立ち上げ、検討の深度化を図ります。また、これまでに策定した地区別まちづくり計画のリーディングプロジェクトのスキーム検討などを行います。
 多摩都市モノレールの町田方面への延伸に向けては、令和4年度に引き続き、町田市と協力して、多摩都市モノレール町田方面延伸沿線まちづくり構想を策定するための検討会を実施するとともに、沿線周辺における商業事業者等と市による将来的な協議会の設置の準備を進めており、協議会準備会を設置し、検討を進めていきます。
 三世代近居・同居促進助成制度については、より多くの子育て世帯に定住先として選んでもらうようにするために、2月末までの転入という要件を無くし、切れ目のない助成制度に改定します。

6 環境分野

 昨年12月に開催した「TAMAサスティナブル・アワード2022」では、地球温暖化対策部門をはじめとする4つの部門で、特に優れた取組を行っている市民団体や、多摩市発の取組を全国に発信している企業を表彰しました。
 市民や企業の皆さんと一丸となって気候問題に取り組む機運を醸成し、2030年カーボンハーフ、2050年カーボンゼロへと持続可能な社会に再構築するため、令和5年度もTAMAサスティナブル・アワードを継続実施するとともに、脱炭素社会づくりに向けた具体の「取組」や「行動」を市民とともに考えるしくみを作り、社会変容を推進していくための場として「気候市民会議」を立ち上げます。また、公共分野における対策として、総合体育館においてESCO事業による照明のLED化に取り組むほか、東京都、早稲田大学との共同事業である燃料電池ごみ収集車の試験運用を実施し、ごみ収集におけるカーボンニュートラルにもチャレンジします。
 また、令和4年度に開始した省エネ家電買換促進制度については、市民の物価高騰等による負担軽減を図るとともに省エネ家電製品の普及促進により、市内で排出される二酸化炭素の削減を進めるため、継続実施します。
 マイクロプラスチック対策も市民や事業者等と連携しながら進めているところであり、これらの取組のうち市民や中央大学と連携して行っている調査について動画を制作し、市民への啓発の取組を強化していきます。
 多摩中央公園のPark-PFI手法による改修事業については、ここで実施設計内容の市民説明会も終了し、グリーンライブセンターと合わせて改修工事に着手します。令和4年度に取得した大栗橋公園拡張用地については、今年度の市民説明会や社会実験を踏まえて整備工事を行います。
 連光寺六丁目農業公園事業については、これまで行ってきた試験事業を踏まえて農地の維持管理、作物の栽培に加えて、公募市民を対象とした農体験事業の運営などを行います。
 このほか、聖蹟桜ヶ丘駅周辺で多くの苦情が寄せられているムクドリ対策にも取り組みます。
 令和5年度から新たな一般廃棄物処理基本計画に基づく取組を進めるとともに、ペットボトルの水平リサイクルをはじめとした資源循環の重要性を市民と共有するため、「ごみ対策課」を「資源循環推進課」に改称し、環境負荷の少ない循環型のまちを推進します。
 また、令和4年にごみ収集作業中に2回発生した収集車両の火災を踏まえ、本年4月から小型充電式電池等の行政収集を開始し、火災対応のみならず資源循環も進めていきます。

第5 むすびに

 昨年末、コロナ禍ということもありますが、国の予測より8年も早く少子化が進んでいることが明らかになりました。もう1年以上前に遡りますが、厚生労働省出身の山崎史郎さんが小説「人口戦略法案」を著し、センセーショナルな話題として取り上げられました。本市でも同時期から子ども青少年部を中心に対策の検討に取り組んできたところですが、東京都では年度当初から矢継ぎ早に子ども支援策を講じています。国、都道府県などの広域行政としっかりと役割を分担しながら多摩市としても引き続き取り組んでいきます。
 また、国では、新型コロナウイルス感染症の分類を2類相当から5類に移行することを正式決定しました。私は、従前から、自前の保健所を持たない自治体として、市長会そのほかの場で東京都や国に対し声をあげてきましたが、引き続き、正確な情報と科学的エビデンスに基づく対応を求めるとともにワクチン接種、コロナに関する医療費等については、地方交付税の交付団体・不交付団体を問わず当面の間、国において責任を持って対応すべきと強く申し上げていく所存です。マスクの着用等、特に子どもたちが免疫力の低下など将来に影響を及ぼさないよう、早期に普通の生活に戻していく必要があります。
 2月6日にトルコ・シリアを襲った大地震では、多くの方が犠牲になりました。被害の全容はまだわかりませんが、トルコでは84年前に起きた地震での死者数を上回る大変な被害となっているとのことです。亡くなられた方にお悔やみ申し上げるとともに、今も余震が続くなかでの避難生活を強いられている皆さんに、お見舞い申し上げます。市としても募金活動を通じて、市民の皆さんに被災地支援を呼びかけていきます。
 本年9月1日、関東大震災から100年を迎えます。大震災がいつ東京を襲ってもおかしくありません。令和3年度には、国土強靭化地域計画を策定していますが、地域防災計画などは、常にブラッシュアップしていかなければなりません。総合防災訓練や消防団、自主防災組織などの防災活動については、コロナ禍での感染対策や地域による安否確認、ペット同伴の避難など、より実践的な訓練や方法にチャレンジしていきます。
 「天災は忘れた頃にやってくる」と言われた物理学者の寺田寅彦の名言に「モノをこわがらなさ過ぎたり、怖がりすぎたりするのはやさしいが、正当に怖がることはなかなか難しい」との言葉があります。コロナ禍の3年間、感染症や災害に向き合う際の戒めとしてこの言葉を胸に刻み込んできました。引き続き、この想いを忘れず市民主権の市政運営にあたってまいります。

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