【令和4年度】こころがホッとする居場所はありますか~ひきこもりの方への向き合い方~
講演会を開催しました
2022年10月1日、永山公民館ベルブホールにて『こころがホッとする居場所はありますか ひきこもりの方への向き合い方』を開催しました。
今回の講演では、公益社団法人青少年健康センターの茗荷谷クラブにて、ひきこもりの若者やそのご家族と約30年間関わられている井利由利先生を講師として招き、居場所の話を通じて、ひきこもり状態にある方への向き合い方についてお話しいただきました。
お話しいただいた内容を一部抜粋し、ご紹介いたします。詳しくは、下記の配布資料データをご覧ください。
ひきこもりについて思うこと
ひきこもりについて、「怠けているだけ」、「甘えてる」、「親が甘やかしている」などの偏見がありますが、これは全て間違いです。このような社会の偏見があることで、ひきこもりの当事者の方々は自己スティグマ(境泉洋氏の言葉 恥ずかしいと思う気持ちや甘えているだけなど申し訳ないと思うこと)の解消ができずにいます。まずはひきこもりへの偏見をなくすことが重要です。
若者を取り巻く社会
日本財団の第4回自殺意識調査によると、日本では4人に1人が自殺したいと考えており、そのうちの6.2%の方が自殺未遂経験者です。しかし、自殺を考えている7割の方が誰にも悩みを打ち明けられずにいます。
自殺念慮、自殺未遂ともに15~20代のリスクが高いと言われていますが、私たちは今の若者がどのような状況下にいるのかを意外と知りません。
これこそが日本の社会の問題だと考えます。
現代の若者は昔に比べ、社会に対して不満ではなく不安を持つ若者が増えており、それがひきこもりや自殺念慮につながっていると考えます。「この状態になったのは自分のせい。自分でどうにかしないといけない。」と『自己責任感』を強く持つ若者やそのご家族が多くいます。
通底する普通への囚われ
多くのひきこもり状態の方は、規範意識が高く、「こうあるべき」という思考(べき思考)が強い傾向にあります。
そして、自分の感情(特にネガティブな感情)を出すと周りの人に迷惑をかけてしまうと考え、自分の感情を出さないで我慢してしまう傾向にあります。
ある相談者の方は「自分の言いたいことを言っているつもりだったけど、それは自分の気持ちではなかったかもしれない。自分の気持ちが分からなくて、「こうあるべき」と思うことをただ言っていただけかもしれない。」と言っていました。
この思考の背景には、マニュアル的な社会化の影響が大きいと考えます。
昔は、「こうやってみようか、ああやってみようか」と試行錯誤しながら青春時代を過ごしてきましたが、今はそれがありません。マニュアルに沿って生きていくことを求められ、自分ではない人になれと言われ続けることの苦しさと、自分を出すことに対する罪悪感や不安感が彼らの無気力を生んでいます。
ひきこもりの家族の方へ
彼らに生きる意欲を持ってもらうためには、「ひきこもれる保障」と「社会参加できる保証」の両面を支援し、本人が主体的に選択できるように支援していくことが大切です。
「ひきこもれる保障」という面では、家が本人にとって安心していられる基地になっているかが重要です。その基地が不安定になっていると外に出ることは難しいです。だからこそ、ご家族のエンパワメント(潜在的にもっている力)を引き出すことが大事なのです。
まずは、家族の関係性が悪循環に陥って、共依存になっていないかを今一度見直してみるのもいいかもしれません。
自分たちだけでは家族の関係性の悪循環には中々気づけませんので、第三者のカウンセリングを受けることで関係性を意識化していくと良いでしょう。
その際に、この状況になったのは誰かのせいと考えるのではなく、「どうしたらこの状況から抜け出せるのか。この状況から抜け出すために家族で何ができるか」を第三者と一緒に考えてみましょう。
対話の勧め
対話がない家庭にとって、日常会話は難しいかもしれませんが、「よく眠れた?」「今日何食べたい?」と挨拶に一言付け加えることから始めると良いでしょう。
本人の世界に対する怖さ、不安を想像し、今は生きるための生存手段としてのひきこもりであることを前提に理解することが大切です。
子どもの不調に気づいたら、説教するのではなく、心配していることを伝え、聞きやすい事から話を聞きましょう。
また、本人の話を聴く際には「受け入れる」から「受け止める」に姿勢を変えてみてください。わかったふりはよくありません。わからないことはわからないままで良いので、自分の中のわからなさを認め、「○○について分からないんだけど、どういうことかな?」と聞いていくことが対話の出発点となります。
そうはいっても、上手くいかないことは多くあるかもしれません。一進一退を繰り返しながら、徐々に進めていきましょう。
居場所などへつなげる
居場所や支援機関に本人をつなげるにはタイミングが重要です。
骨折した人が静養したほうが良いように、本人の心の状態が不安定な場合には引くことも肝心です。ただし、遅すぎてもひきこもり状態の長期化につながります。
茗荷谷クラブでは、ご家族から話を聞き、今本人がどのような状態にいるかを把握した上で、背中を押した方がいいのか、引くべきなのかタイミングをご家族と一緒に考えるようにしています。
茗荷谷クラブの居場所について
茗荷谷クラブの利用者には発達障がいや精神障がいの方、そうでない方がおり、多様性を大事にしています。
居場所では本人の意思を尊重します。社会参加するために必要な自分が「~したい」という気持ちを育むために、フリータイム、プログラムタイムのある居場所と、ボランティア、農業、料理、スポーツなど、さまざまなことができるグループをつくり、本人がやりたいニーズを育てていくようにしています。
居場所とは、物理的・心理的に安心・安全の場です。何かを強制することはなく、目的や成果は求めません。
またスタッフは担当制ではなく、相談できる人を本人が選べるようにしています。
ボールを投げたら必ず受け取り投げ返してくれる場であり、自分が自分のままでいられる場です。
結果的に、就労に向かう方が多いですが、あくまで副産物としての就労であり、就労を目的としているわけではありません。
社会復帰の形はさまざまですが、まずはひきこもりの本人とそのご家族が安心していられる地域があってこそだと考えます。ひきこもりの本人とそのご家族が安心していられる地域があることが、初めて彼らが地域の中で生きていく第一歩であり、非常に大切なことだと思います。
また、居場所は青春の再体験です。わからない疑問にまっすぐに向き合ってくれる場です。彼らには青春を味わっていただきたいなと思います。
講師
公益社団法人青少年健康センター副会長、臨床心理士、公認心理士
井利 由利(いり ゆり)氏
プロフィール
公益財団法人青少年健康センター【茗荷谷クラブ】にて、ひきこもりの若者やそのご家族と30年間かかわる。
その間、思春期精神科クリニック、大学学生相談室カウンセラー、東京都スクールカウンセラーを務め、東海大学大学院非常勤講師、世田谷区若者総合支援センター「メルクマークせたがや」施設長など数々の主要ポストを歴任。
開催日時
2022年10月1日(土曜日)14時~16時(開場 13時30分)
会場
永山公民館 ベルブホール
東京都多摩市永山1-5 ベルブ永山5階
対象者
ひきこもり等生きづらさに悩む方・その家族・関心がある方などどなたでも
※手話通訳・要約筆記あり
定員・参加費
- 140名(事前予約制)
- 参加費無料
講演会チラシ
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このページに関するお問い合わせ
子ども・若者政策課 子ども・若者政策担当
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